「また今月も電気代が上がっている…」
「節電は呼びかけているが、これ以上何を減らせばよいのか分からない」
「設備を最新にするような大きな予算はない」
昨今の電気料金の高騰を受け、このような悩みを抱える中小企業の経営者様や担当者様からのご相談が増加しています。
実は、長年同じ場所で業務を行っている工場やオフィスには、運用方法や設備の設定などに「気付きにくい電力の無駄」が潜んでいることが少なくありません。
この記事では、公的機関の省エネガイドラインや実際の現場での事例に基づき、実務に直結するコスト削減策をご紹介します。すぐ実践できる「お金をかけない運用改善」から「設備更新を伴う対策」まで整理していますので、明日から現場で確認すべきポイントが明確になります。
なぜ会社の電気代は高くなる?知っておきたい料金の仕組み
法人の電気料金を効果的に削減するには、まず「何が原因で高くなっているのか」を大まかに把握することが重要です。
法人向けの電気料金(高圧契約など)は、一般的に以下のような要素で構成されています。
- 基本料金: 契約電力に基づいて決定されます。例えば、高圧で契約電力が500kW未満の「実量制」の契約の場合、過去1年間の「最大需要電力(デマンド値)」が基本料金の計算に用いられます。つまりこの場合、1年間で「最も電気を多く使ったわずか30分間」のピーク使用量が、その後1年間の基本料金を高くしてしまう仕組みです(※契約体系によって料金体系は異なります)。
- 電力量料金: 実際に使用した電力量に応じてかかる料金です。
- 燃料費調整額・再エネ賦課金: 燃料価格の変動や、再生可能エネルギー普及のための費用が上乗せされます。
この仕組みから分かる通り、電気代を下げるには「全体の電気使用量を減らす(電力量料金の削減)」ことと、「特定の時間に電気の使用が集中しないようにする(デマンド値・基本料金の削減)」こと、2つの視点が必要です。
会社の電気代はどこで使われている?
省エネの基本原則は「まず使用量が大きい設備から確認すること」です。資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」でも、事業者向けの省エネ手法として設備の利用状況把握が推奨されています。
【オフィスの主な電力消費】
資源エネルギー庁のデータによれば、一般的なオフィスビルでは夏季・冬季ともに「空調」と「照明」だけで全体の電力消費の約6〜7割を占めるとされています。まずはこの2大要素の使い方を見直すことが最も効果的です。

【工場の主な電力消費】
工場の場合、製造ラインの「生産設備(モーター、ポンプなど)」が大部分を占めます。実際の省エネ診断で改善余地が多く見つかるのは、「コンプレッサー(圧縮機)」「ポンプ」「ファン・ブロワ」といった動力・付帯設備です。

出典:EIC(一般社団法人エネルギー情報センター)_工場の電気相場をもとに作成
【明日からできる】投資ゼロ・低コストの省エネ対策
予算をかけずに、明日から現場で確認・実行できる対策です。政府(経済産業省など)が推奨する「夏季・冬季の省エネルギーの取組」においても、日常的な運用改善が重要視されています。
1. 空調の温度設定とフィルター清掃(オフィス・工場)
- 何を確認する?:設定温度が過剰でないか、室外機の周りに障害物はないか、フィルターが目詰まりしていないか確認します。
- 具体的に何をする?:室内の温度や湿度、利用状況などに応じて、健康面にも配慮しながら、無理のない範囲で空調の設定を見直します。また、月に1〜2回のフィルター清掃を行うだけで、空調効率の低下を防ぎます。
- 効果が出やすい企業:空調の稼働時間が長いすべての企業。
▼参考(夏季の省エネ対策)

2. コンプレッサーの適正圧力化とエア漏れ対策(工場)
- 何を確認する?:工場内の配管から「シュー」というエア漏れの音がしていないか、コンプレッサーの吐出圧力が高すぎないか確認します。
- 具体的に何をする?:エア漏れ箇所を特定し修繕します。また、生産に支障のない範囲で設定圧力を0.1MPa下げるだけで、コンプレッサーの消費電力を約8%削減する効果が期待できます。
- 効果が出やすい企業:圧縮空気を利用する機械加工や食品製造などの工場。
3. 照明の「こまめな消灯」と「照度の見直し」(オフィス・工場)
- 何を確認する?:昼休みや不在のエリアで照明器具が点きっぱなしになっていないか確認します。
- 具体的に何をする?:エリアごとの消灯ルールを徹底します。また、作業環境基準(JIS照度基準)を満たす範囲で、過度に明るい通路等の照明を間引くことも有効です。
- 効果が出やすい企業:倉庫や広いオフィスを持つ企業。
▼参考(冬季の省エネ対策)

4. デマンド(最大需要電力)の管理・ピークカット
- 何を確認する?:特定の時間帯(特に空調の負荷が高い夏の午後など)に、複数の大型機械を同時に起動していないか確認します。
- 具体的に何をする?:基本料金を押し上げる「デマンド値(ピーク)」を下げるため、機械の起動時間をずらす(ピークシフト)運用ルールを定めます。
設備投資をすると効果が大きくなりやすい省エネ対策
古い設備を使い続けるより、機器の買い替えを行うことで効果的な省エネ・節約につながるケースがあります。エネルギー消費を実質ゼロに近づけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の概念も広まっており、国や東京都が提供する各種支援制度・補助金を活用して導入を進めることが推奨されます。
5.高効率空調(エアコン)への更新
- 概要:10年以上前の古い空調を省エネ性能の高い最新機器へ更新します。
- 注意点:導入費用を抑えるため、最新の補助金情報(省エネルギー投資促進支援事業など)を事前に確認すると良いでしょう。
6.全館LED照明への切り替え
- 概要:従来の蛍光灯や水銀灯をLED照明に交換します。消費電力が下がるだけでなく、寿命が長いため交換の手間も削減できます。
- 注意点:一部だけ交換するより、一斉に切り替えたほうが投資回収効果が見えやすくなります。
7.インバータ制御・高効率モーターの導入(工場)
- 概要:国のトップランナー制度の基準を満たすような高効率モーターへ更新します。または、常にフル稼働しているポンプやファンに「インバータ」を後付けして回転数を制御します。
- 注意点:専門業者による現状の負荷状況の綿密な調査が必要です。
省エネ対策7選を一覧比較
| 対策 | 対象 | 初期費用 | 実施難易度 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1.空調の温度・フィルター | オフィス/工場 | ゼロ | 低 | 設定温度、フィルターの汚れ |
| 2.コンプレッサーのエア漏れ・圧力 | 工場 | ゼロ〜小 | 低〜中 | エア漏れ音、設定圧力値 |
| 3.照明の消灯・間引き | オフィス/工場 | ゼロ | 低 | 不在エリアの点灯状況 |
| 4.デマンド(ピーク)管理 | オフィス/工場 | ゼロ〜中 | 中 | 設備の同時起動を避けるルール化 |
| 5.高効率空調への更新 | オフィス/工場 | 大 | 中 | 各種補助金制度の要件確認 |
| 6.LED照明への切り替え | オフィス/工場 | 中〜大 | 低 | 蛍光灯・水銀灯が多く残っていないか |
| 7.インバータ・高効率モーター化 | 工場 | 中〜大 | 高 | 常に一定速度で動き続けているポンプ等 |
「自社の工場やオフィスには、どんな無駄が潜んでいるか?」
まずは上記の表を参考に、明日現場を歩いて確認してみてください。ただ、自社の場合どれを優先すべきか、どこに無駄があるのか分からない場合は、第三者に一度現場を確認してもらう方法もあります。
実際の現場では「意外な無駄」が見つかることも
省エネの取組において、
企業側が「もう削減できるところはない」と思っていても、以下のような「気付きにくい無駄」が発見されるケースが多々あります。
【現場確認で見つかった事例1:工場の空調・排気バランスの乱れ】
- 発見された問題: 夏場、エアコンをフル稼働させても効きが悪い工場で、換気扇の排気量が強すぎたため、エアコンで冷やした空気をそのまま屋外へ捨ててしまっていた。
- 対策と効果:
換気扇の稼働を必要最小限に調整した結果、設備投資ゼロで空調効率が劇的に改善しました。
【現場確認で見つかった事例2:コンプレッサーの配管設定】
- 発見された問題: 最も高い圧力を必要とする「1台の機械」のために、工場全体のコンプレッサーの圧力を高く設定しており、電力を浪費していた。
- 対策と効果:その1台の機械の前にだけ「増圧弁」を設置し、工場全体の基本設定圧力を下げたことで、少額の投資で大きな削減効果を生みました。
※これらは典型的な一例ですが、現場の慣れによって「そういうものだ」と思い込んでいる部分にこそ、削減の余地が隠れています。
どこから始める?省エネ対策の優先順位
さまざまな対策がありますが、いきなり高額な設備投資をするのはおすすめしません。以下のステップを参考に進めてみましょう。
- 現状把握: 自社の電気料金の仕組みと、毎月の使用量(明細)を確認する。
- 投資ゼロ・低コスト対策の実行: 空調の設定見直しやフィルター清掃など、明日からできることをやる。
- 効果の検証: 数ヶ月様子を見て、電気代がどう変化したか確認する。
- 設備改善の検討: 古い設備の更新を、公的な支援制度や補助金なども視野に入れて検討する。
- 第三者への相談: 行き詰まったら、外部の相談窓口などに相談してみる。
自社だけでは気付きにくい「電気の無駄」もある
電気代削減(省エネ)の難しいところは、「普段その職場で働いている人ほど、設備の使い方や環境を『当たり前』と感じてしまう」ことです。
「機械の音がうるさいから、エア漏れの音に気づかない」
「昔からこの設定温度だから、誰も疑問に持たない」
こういった無意識の無駄は、多数の現場事例を知る「第三者」だからこそ気づけるものです。外部の視点を取り入れることで、どこから手をつければ費用対効果が高いのか、自社に最適な優先順位を客観的なデータに基づいて整理しやすくなります。
「自社の工場やオフィスに、まだ削減できる電力の無駄があるか確認してみませんか?」
記事でご紹介した対策を参考に、まずは自社でできる運用改善から始めてみてください。
しかし、
「専門的な機械が多くて、どこを触ればいいか分からない」
「設備を更新すべきか、運用でカバーできるか客観的に判断したい」
といった場合は、支援窓口を活用するのも一つの有効な手立てです。
東京都では、企業の省エネ・脱炭素化(HTT:電力をへらす・つくる・ためる)をサポートするため、「HTT実践推進ナビゲーター」などの支援事業を行っています。具体的には、企業を訪問し電力使用状況や設備の確認を通じて、自社で取り組める省エネ施策を考えるサポートや、無料の省エネ診断の紹介などを行っています。
自社だけでは見落としてしまうコスト削減のヒントを見つけるために、一度外部 の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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