国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部
SDGs担当 今田 大輔(いまだ だいすけ)氏
2023/08/29
企業における脱炭素の概念理解に始まり、どんな活動がCO2を排出し、どの部署がそれに関わり、どのようにこの問題を社内で共有すべきかなど、より実践的な考え方や取り組み方を語っていただきました。・・・
地方自治体の地球温暖化対策についての実行計画策定や、企業のコンサルティングを手掛けているのが、SDGsおよびカーボンニュートラルの推進アドバイザーとして活躍する今田大輔さんです。本セミナーでは、企業における脱炭素の概念理解に始まり、どんな活動がCO2を排出し、どの部署がそれに関わり、どのようにこの問題を社内で共有すべきかなど、より実践的な考え方や取り組み方について語っていただきました。
持続可能な開発目標……いわゆるSDGsは、皆様もご承知の通り2015年9月の国連サミットで採択されました。私はごく個人的な興味から、この当時からSDGsについて調べ、具体的にどのような取組ができるのかを考え続けてきました。その礎があって、現在は地方自治体における様々なしくみづくりや、農業・水産業分野での再生エネルギー導入をお手伝いするなど、普及実践に繋げていく活動を行っています。
SDGsはCSR(企業の社会的責任)や社会貢献活動の視点だけでスタートさせると大抵はうまくいきません。脱炭素経営についても同様のことが言えますが、企業のイメージアップのためではなく、今、真剣に取り組まないと将来生き残れないという覚悟が前提にあると考えています。今回のセミナーでもお伝えしましたように、温室効果ガスの排出量は全世界で年間約2,073億トンにのぼり、自然界で吸収される量が年間約2,033億トンといわれています。本来はこの収支が差し引きゼロになるのですが、毎年約40億トンもの温室効果ガスが蓄積されていることになります。
逆に申し上げると、カーボンニュートラルが実現するまでは着実に温室効果ガスは増え続けるということです。今まで溜まっていたものが、すぐに消えてなくなるわけではないということですね。私たちが自然界の循環に頼らずに危機意識を持ち、早期に排出量を削減する行動に移さないといけません。それを解決するためには「現状はどうなっているのか」に加え、企業活動の「どこで」「どれだけ」排出されているのかを可視化し、把握することが急務であるとお伝えしています。
調達・製造・在庫管理・配送・販売・消費など、すべての工程から温室効果ガスは排出されます。事業者自らによる直接排出(Scope1)、他社から供給されたエネルギー使用による間接排出(Scope2)をチェックし、事業活動に関連する自社以外の排出(Scope3)にも目を向けなければなりません。また、自社の「どんな活動」において排出しているのかを考える必要があります。
これには、環境省と経済産業省が取りまとめた「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン ※1」を片手に、分類される各カテゴリーを吟味しながら自社の事業にあてはめてゆくという地道な作業を要します。私たちのようなコンサルタントは、その専門知識や方法論をアドバイスできても事業の実態まではわかりません。やはり、自社のことを最もよくわかっていらっしゃるのが経営者の皆様です。時間がかかるとは思いますが、大企業とのお取引や脱炭素化の要請のあるなしに関わらず、中小企業の皆様には積極的に取り組んでいただきたいと考えています。
※1 サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省 経済産業省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver2.4.pdf
例えばエネルギー使用については、その事業に関連してどんな燃料を使用しているかを詳らかにしていくことになります。とりわけ「電気」は各電力会社によって排出係数が異なるため、算出に注意が必要です。しかも、同じ電力会社でも年度によって排出係数が変わっている場合があります。製造・生産を伴わないオフィス系の企業様の場合は、ほぼすべてのエネルギー使用は電気ですよね。インターネットで公開されている「電気事業者別排出係数一覧」などを参考に確認していただければと思います。
次に、アクションすべき対象を把握することも重要です。自社の事業をScopeの各カテゴリーにあてはめていくと「どこに」の部分が見えてきます。企業内のどの部署が関わっているのかを明確にしつつ、「どれだけ」排出されているのか算出し積み上げていきます。その際、「その業務に関わっているから」という理由で担当部署に算定をまる投げしてしまうと、いわゆる“たらいまわし”の状況が発生し、社内で揉めてしまうケースも少なくないんです。共有しておきたいのは「活動量×排出原単位」という基本式です。計算式はカテゴリー毎にあり、同じカテゴリーでも複数の計算式があるため、その選択いかんで担当部署が変わるかもしれません。例えば、事業で出る廃棄物の処理は、埋め立てるのか、焼却するのか、リサイクルするのかによってそれぞれ排出原単位が変化し、生産部門なのか、環境部門なのか、あるいは経理部門なのか、詳細なデータを把握している部署もまた変わります。プロジェクトにはさまざまなスタッフの協力が不可欠です。参加メンバーを組成する際は、できるだけ理解に積極的な人材を集め、経営者ご本人など全体を見渡せるリーダーが指揮されることをおすすめします。
なぜ、脱炭素経営なのか? これを社内でどう伝え、社員の皆様に自分のこととして認識してもらえるかは極めて重要です。最初に申し上げたように、CSRの視点だけに固執して話を進めようとするとうまくいきません。売上をあげている社員から反発を招いてしまうことがあるからです。決して企業の社会的責任や社会貢献活動を否定するものではありませんが、利益との両立を示さないと全社的な同意は得られないでしょう。社員の皆様のモチベーションが低く、「上司に言われたからやる」という消極的姿勢では物事が立ち行きません。
私は、「社会的インパクト・マネジメント ※2」や「ESG ※3」を専門領域として企業経営者の皆様にアドバイスをさせていただいていますが、これまでの価値観は崩れ、時代は今まさに大きな変革期を迎えています。アメリカの高名な経営学者であるマイケル・ポーターが、CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)という考え方を提唱しています。これは営利企業として社会課題を解決し、経済的価値と社会的価値を両立させようという考え方です。カーボンニュートラルの文脈では「デカップリング」と呼ばれ、企業の成長と温室効果ガス削減を同時に目指すこととして注目を集めています。経営戦略や事業方針の策定において、目先の利益追及だけではない軸、つまり回り回って利益に繋がる軸というものが増えてきました。温室効果ガスを減らすという軸もこれに含まれます。電気料金を例にすると、今までは安さ重視で電力会社を選択していましたが、安さ以外にも「温室効果ガスの排出量」というポイントが判断の要素になりつつあります。
脱炭素経営に取り組むメリットは、優位性の構築(競争力強化で売上・受注を拡大)、エネルギーコストの低減、知名度・認知度の向上(他社との差別化、顧客からの支持)、社員のモチベーションアップや人材獲得力の強化(働くスタッフの共感や信頼が得られ、この会社で働きたいと思う人材の獲得が期待できる)、資金調達面で有利になる(金融機関などの融資条件の優遇)といったことが挙げられます。こうした目に見えにくい「非財務価値」がやがて大きな意味を持ち、巡り巡って「財務的価値」になりうる可能性を共有できれば、全社的な協力体制が生まれ、社員が一丸となって前を向くことができるのではないでしょうか。
※2 社会的インパクト・マネジメント…社会的インパクトは、事業のアウトプットが社会にもたらす短長期の変化、便益、成果のこと。直接的・間接的な影響として受益者やその周辺に変化を与えることから「アウトカム」とも呼ばれています。これらを企業の意思決定や業務改善に活用するのが社会的インパクト・マネジメントで、欧米を中心に世界中で注目を浴びています。
※3 ESG…環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った経営用語。企業が長期的な成長を遂げるためには環境課題、社会課題、企業統治課題の3つの観点からを解決することが望ましいという考え方です。SDGsのゴールやターゲットと重なる部分もあるため、企業がESGに配慮した経営をすることで、SDGsの達成にも貢献できます。
これまで多くの企業様へ脱炭素経営の重要性をお話させていただく機会がありましたが、その経験から申し上げると、残念ながら「脱炭素はボトムアップでは広がらない」と感じています。やはり経営に携わる意思決定層の皆様が「正しい知識」で判断し、「トップダウン」で物事を進める方が成果を上げやすいようです。とはいえ、「正しい知識」は一朝一夕で得られません。中小企業の場合は、本来業務と兼務しながら取組を進めざるを得ない方々が多く、かといって大企業のようにこの分野に精通した専門家を雇うのも容易ではないでしょう。
そんな中で、HTT実践推進ナビゲーター事業は頼りになる存在だと思います。専門性の高い知識を有したナビゲーターが最適な支援策を案内してくれるというのですから、これほど素晴らしいしくみはありません。また、多種多様な支援事業がワンストップでわかるのもいいですね。多くの地方自治体は、国の施策に基づいたサポートを中心に行っていると聞きます。東京都は独自に設計されている制度もあり、手厚く幅広い補助を受けられる環境が整備されています。東京都の中小企業の皆様は私の目から見ても、本当に羨ましいと感じます。
おそらく、脱炭素やサステナビリティに対する理解は、今後当たり前のものとなっていきます。英会話を学んだり、仕事に必要な資格を取得したりするのと同じように、社会人が携えておくべきリテラシーの一つに位置付けられてゆくでしょう。
中小企業経営者の皆様にお願いしたいのは、ご自身が「正しい知識」で判断する姿勢をお持ちになると同時に、社員の方々にも基礎的なリテラシーとしてこの領域を学ぶチャンスを与えていただきたいということです。特定の担当者さんのみに任せてしまうのではなく、社員皆さんでこの問題に取り組んではいかがでしょうか。今、ご自分たちに何ができるのかを考え、HTTの実践を通して理解を深めていただけたらと願っています。HTT実践推進ナビゲーターの活用そのものが、学びの機会になればよいですね。
まずは自社の排出量を明確にすることから
共通価値の創造で、全社一丸となって取り組むことが重要です【セミナーレポート】
国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部
SDGs担当 今田 大輔(いまだ だいすけ)氏
2023/08/29
企業における脱炭素の概念理解に始まり、どんな活動がCO2を排出し、どの部署がそれに関わり、どのようにこの問題を社内で共有すべきかなど、より実践的な考え方や取り組み方を語っていただきました。・・・
地方自治体の地球温暖化対策についての実行計画策定や、企業のコンサルティングを手掛けているのが、SDGsおよびカーボンニュートラルの推進アドバイザーとして活躍する今田大輔さんです。本セミナーでは、企業における脱炭素の概念理解に始まり、どんな活動がCO2を排出し、どの部署がそれに関わり、どのようにこの問題を社内で共有すべきかなど、より実践的な考え方や取り組み方について語っていただきました。
持続可能な開発目標……いわゆるSDGsは、皆様もご承知の通り2015年9月の国連サミットで採択されました。私はごく個人的な興味から、この当時からSDGsについて調べ、具体的にどのような取組ができるのかを考え続けてきました。その礎があって、現在は地方自治体における様々なしくみづくりや、農業・水産業分野での再生エネルギー導入をお手伝いするなど、普及実践に繋げていく活動を行っています。
SDGsはCSR(企業の社会的責任)や社会貢献活動の視点だけでスタートさせると大抵はうまくいきません。脱炭素経営についても同様のことが言えますが、企業のイメージアップのためではなく、今、真剣に取り組まないと将来生き残れないという覚悟が前提にあると考えています。今回のセミナーでもお伝えしましたように、温室効果ガスの排出量は全世界で年間約2,073億トンにのぼり、自然界で吸収される量が年間約2,033億トンといわれています。本来はこの収支が差し引きゼロになるのですが、毎年約40億トンもの温室効果ガスが蓄積されていることになります。
逆に申し上げると、カーボンニュートラルが実現するまでは着実に温室効果ガスは増え続けるということです。今まで溜まっていたものが、すぐに消えてなくなるわけではないということですね。私たちが自然界の循環に頼らずに危機意識を持ち、早期に排出量を削減する行動に移さないといけません。それを解決するためには「現状はどうなっているのか」に加え、企業活動の「どこで」「どれだけ」排出されているのかを可視化し、把握することが急務であるとお伝えしています。
調達・製造・在庫管理・配送・販売・消費など、すべての工程から温室効果ガスは排出されます。事業者自らによる直接排出(Scope1)、他社から供給されたエネルギー使用による間接排出(Scope2)をチェックし、事業活動に関連する自社以外の排出(Scope3)にも目を向けなければなりません。また、自社の「どんな活動」において排出しているのかを考える必要があります。
これには、環境省と経済産業省が取りまとめた「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン ※1」を片手に、分類される各カテゴリーを吟味しながら自社の事業にあてはめてゆくという地道な作業を要します。私たちのようなコンサルタントは、その専門知識や方法論をアドバイスできても事業の実態まではわかりません。やはり、自社のことを最もよくわかっていらっしゃるのが経営者の皆様です。時間がかかるとは思いますが、大企業とのお取引や脱炭素化の要請のあるなしに関わらず、中小企業の皆様には積極的に取り組んでいただきたいと考えています。
※1 サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省 経済産業省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver2.4.pdf
例えばエネルギー使用については、その事業に関連してどんな燃料を使用しているかを詳らかにしていくことになります。とりわけ「電気」は各電力会社によって排出係数が異なるため、算出に注意が必要です。しかも、同じ電力会社でも年度によって排出係数が変わっている場合があります。製造・生産を伴わないオフィス系の企業様の場合は、ほぼすべてのエネルギー使用は電気ですよね。インターネットで公開されている「電気事業者別排出係数一覧」などを参考に確認していただければと思います。
次に、アクションすべき対象を把握することも重要です。自社の事業をScopeの各カテゴリーにあてはめていくと「どこに」の部分が見えてきます。企業内のどの部署が関わっているのかを明確にしつつ、「どれだけ」排出されているのか算出し積み上げていきます。その際、「その業務に関わっているから」という理由で担当部署に算定をまる投げしてしまうと、いわゆる“たらいまわし”の状況が発生し、社内で揉めてしまうケースも少なくないんです。共有しておきたいのは「活動量×排出原単位」という基本式です。計算式はカテゴリー毎にあり、同じカテゴリーでも複数の計算式があるため、その選択いかんで担当部署が変わるかもしれません。例えば、事業で出る廃棄物の処理は、埋め立てるのか、焼却するのか、リサイクルするのかによってそれぞれ排出原単位が変化し、生産部門なのか、環境部門なのか、あるいは経理部門なのか、詳細なデータを把握している部署もまた変わります。プロジェクトにはさまざまなスタッフの協力が不可欠です。参加メンバーを組成する際は、できるだけ理解に積極的な人材を集め、経営者ご本人など全体を見渡せるリーダーが指揮されることをおすすめします。
なぜ、脱炭素経営なのか? これを社内でどう伝え、社員の皆様に自分のこととして認識してもらえるかは極めて重要です。最初に申し上げたように、CSRの視点だけに固執して話を進めようとするとうまくいきません。売上をあげている社員から反発を招いてしまうことがあるからです。決して企業の社会的責任や社会貢献活動を否定するものではありませんが、利益との両立を示さないと全社的な同意は得られないでしょう。社員の皆様のモチベーションが低く、「上司に言われたからやる」という消極的姿勢では物事が立ち行きません。
私は、「社会的インパクト・マネジメント ※2」や「ESG ※3」を専門領域として企業経営者の皆様にアドバイスをさせていただいていますが、これまでの価値観は崩れ、時代は今まさに大きな変革期を迎えています。アメリカの高名な経営学者であるマイケル・ポーターが、CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)という考え方を提唱しています。これは営利企業として社会課題を解決し、経済的価値と社会的価値を両立させようという考え方です。カーボンニュートラルの文脈では「デカップリング」と呼ばれ、企業の成長と温室効果ガス削減を同時に目指すこととして注目を集めています。経営戦略や事業方針の策定において、目先の利益追及だけではない軸、つまり回り回って利益に繋がる軸というものが増えてきました。温室効果ガスを減らすという軸もこれに含まれます。電気料金を例にすると、今までは安さ重視で電力会社を選択していましたが、安さ以外にも「温室効果ガスの排出量」というポイントが判断の要素になりつつあります。
脱炭素経営に取り組むメリットは、優位性の構築(競争力強化で売上・受注を拡大)、エネルギーコストの低減、知名度・認知度の向上(他社との差別化、顧客からの支持)、社員のモチベーションアップや人材獲得力の強化(働くスタッフの共感や信頼が得られ、この会社で働きたいと思う人材の獲得が期待できる)、資金調達面で有利になる(金融機関などの融資条件の優遇)といったことが挙げられます。こうした目に見えにくい「非財務価値」がやがて大きな意味を持ち、巡り巡って「財務的価値」になりうる可能性を共有できれば、全社的な協力体制が生まれ、社員が一丸となって前を向くことができるのではないでしょうか。
※2 社会的インパクト・マネジメント…社会的インパクトは、事業のアウトプットが社会にもたらす短長期の変化、便益、成果のこと。直接的・間接的な影響として受益者やその周辺に変化を与えることから「アウトカム」とも呼ばれています。これらを企業の意思決定や業務改善に活用するのが社会的インパクト・マネジメントで、欧米を中心に世界中で注目を浴びています。
※3 ESG…環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った経営用語。企業が長期的な成長を遂げるためには環境課題、社会課題、企業統治課題の3つの観点からを解決することが望ましいという考え方です。SDGsのゴールやターゲットと重なる部分もあるため、企業がESGに配慮した経営をすることで、SDGsの達成にも貢献できます。
これまで多くの企業様へ脱炭素経営の重要性をお話させていただく機会がありましたが、その経験から申し上げると、残念ながら「脱炭素はボトムアップでは広がらない」と感じています。やはり経営に携わる意思決定層の皆様が「正しい知識」で判断し、「トップダウン」で物事を進める方が成果を上げやすいようです。とはいえ、「正しい知識」は一朝一夕で得られません。中小企業の場合は、本来業務と兼務しながら取組を進めざるを得ない方々が多く、かといって大企業のようにこの分野に精通した専門家を雇うのも容易ではないでしょう。
そんな中で、HTT実践推進ナビゲーター事業は頼りになる存在だと思います。専門性の高い知識を有したナビゲーターが最適な支援策を案内してくれるというのですから、これほど素晴らしいしくみはありません。また、多種多様な支援事業がワンストップでわかるのもいいですね。多くの地方自治体は、国の施策に基づいたサポートを中心に行っていると聞きます。東京都は独自に設計されている制度もあり、手厚く幅広い補助を受けられる環境が整備されています。東京都の中小企業の皆様は私の目から見ても、本当に羨ましいと感じます。
おそらく、脱炭素やサステナビリティに対する理解は、今後当たり前のものとなっていきます。英会話を学んだり、仕事に必要な資格を取得したりするのと同じように、社会人が携えておくべきリテラシーの一つに位置付けられてゆくでしょう。
中小企業経営者の皆様にお願いしたいのは、ご自身が「正しい知識」で判断する姿勢をお持ちになると同時に、社員の方々にも基礎的なリテラシーとしてこの領域を学ぶチャンスを与えていただきたいということです。特定の担当者さんのみに任せてしまうのではなく、社員皆さんでこの問題に取り組んではいかがでしょうか。今、ご自分たちに何ができるのかを考え、HTTの実践を通して理解を深めていただけたらと願っています。HTT実践推進ナビゲーターの活用そのものが、学びの機会になればよいですね。
ピコットエナジー株式会社 代表取締役
ゼロエミッション経営推進相談員
田村 健人(たむら たけと)氏
2023/7/20
これまで、中小企業診断士として多くの企業コンサルティングを手掛けてきた田村健人さんは、エネルギー管理士、東京都排出量取引制度技術管理者の立場からも常に的確な助言をされてきた経営改善支援の・・・
これまで、中小企業診断士として多くの企業コンサルティングを手掛けてきた田村健人さんは、エネルギー管理士、東京都排出量取引制度技術管理者の立場からも常に的確な助言をされてきた経営改善支援のスペシャリストです。先日行われたセミナーにおいても、エネルギーコストアップの原因と対策、省エネの基本的な考え方など、脱炭素経営への取組に欠かせないさまざまなポイントを講義していただきました。
ご存じの通り、2015年にパリ協定が採択されて以来、脱炭素に向けた動きは世界的に加速し続けています。日本でも2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」に続き、2030年度における温室効果ガス削減目標を46%に設定(2013年度比)することを表明したほか、今年2月には「GX(グリーントランスフォーメーション)※1 実現に向けた基本方針」が閣議決定され、4月からは改正省エネ法が施行されました。とりわけGX戦略は、戦後日本における産業・エネルギー政策を大転換させるエポックメイキングな出来事といえるでしょう。気候変動問題に対して、日本が国家を挙げて取り組むという強い決意表明が発信されたわけです。
当然ながら中小企業の皆様も、この大きな時代のうねりから目を逸らさずにはいられません。温室効果ガス排出量の「見える化」、カーボンニュートラルに向けた「設備投資の促進」が拡大し、地域の金融機関や中小企業団体などの支援機関も「プッシュ型」の積極的な働きかけを行っていくことになるでしょう。また、グリーンな製品が尊ばれ、官民ともにグリーン製品の選定や調達が推奨されるようになると、そこに新たな市場が創出されていきます。
さらには、すでに欧米で一般化されている炭素税が、やがて日本でも導入されることになるかもしれません。日本の地球温暖化対策のための税(いわゆる温対税)はCO2排出量1tあたり289円ですが、イギリスでは2,870円/t-CO2、フランスでは5,930円/t-CO2、スウェーデンにいたっては15,470円/t-CO2です(2018年為替レート)。もちろん温対税の拡充についての議論はこれからの話ですが、日本でも他国と同等規模の税制度が2028年から本格導入されるという見方もあります。
※1 GXは「Green Transformation」の略称。温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心の経済社会システムへと変革し、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指す取組です。
第1次オイルショックを契機として1979年に制定された省エネ法は、エネルギー使用の合理化が最大の目的でした。今年から施行された改正省エネ法は、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を目指すとともに、合理化の対象範囲を非化石エネルギーにも広げています(太陽光発電も報告対象)。この法律における省エネとは、経済産業省が推進する「経済の健全な発展に不可欠なエネルギーの効率的活用」という考え方に基づいています。
一方、環境省が主導するCO2排出量削減は、温室効果ガスの排出をとにかく減らしていこうというのが本旨。極論を申し上げると、経済活動を縮小してしまえばゼロエミッションの達成に近づくのですが、それだけでは平和な日常を持続させるための環境負荷低減には繋がりません。両者は一見すると全く異なる方針を採っているようにも思えますが、目標とする到達点は同じです。脱炭素社会の実現と企業の成長にバランスよく取り組んでいかなければなりません。エネルギー管理の専門家として、私が心がけているのは付加価値の創造です。付加価値を生み出すことにエネルギーを集中して使う大切さを説きながら、ご相談に来られるそれぞれの企業様にフィットした取組をご提案しています。
照明をLED電球に替える、社用車にEVを導入する、空調を最新の省エネ型に置き換えるなど、とかく設備投資に目が行きがちですが、実はエネルギーコストが上がってしまう原因は他にもあり、相応の対策を図ることでエネルギー使用の合理化が実現できます。電力会社との契約の見直しもその一つでしょう。規模が大きい企業は高圧電力、小規模な企業は一般家庭と同じ低圧電力で契約されていることと思います。
電力使用料金の多寡は、概ね支払金額(円)÷電力使用量(kWh)で30〜37円/kWhが目安とされています。これを上回る状況なら、契約そのものを見直す余地がありそうです。普段は誰もいない倉庫であれば、不要な空調屋外機を電源から外して契約外とすることで、基本料金の大幅な低減が可能です。また、工場内にある空調や製造機器の起動を一斉に行うと消費電力が一気に跳ね上がりますが、時間をずらして順番に起動すればピーク値を低くできます。電力使用量を平準化することでコストを抑えられるケースもあります。最新型の省エネ設備を導入したのに電気代が思うように下がらない場合は、給排気に伴う熱漏れや、換気扇から冷気や熱が逃げている可能性を疑ってもいいでしょう。空調の設定温度を上げ下げして「我慢の省エネ」を続けるだけではなく、建物の断熱性を高めたり、窓の気密性を向上させた方がよい場合もあるんです。
やはり、ご相談企業との信頼関係の構築が鍵だと思っています。これもダメ、あれもダメと、こちらが否定から入ってしまうと、どうしても反発される方々がいらっしゃいます。企業様が長年培われてきたこと、大切にしてきたことに理解を示し、共感し、皆様が受容できるラインを探っています。
特に伝統ある老舗中小企業の場合は、エネルギーが高コストになりがちです。省エネに対する関心や意識があっても、昔ながらのやり方を曲げたくないという会社さんは多いんです。とある食品加工会社さんのケースを例に挙げると、加熱調理の工程に消費電力のムダが見られました。その工程は安易に省けるものではなかったのですが、機器の使い方を変えたり部品を追加したりして、生産効率をアップさせることができました。結果的には年間で約1,000万円のエネルギーコスト削減が実現できたのです。
最近はTVやラジオなどで「HTT」の話題を耳にする機会が増えてきました。世の中に浸透しつつあると思います。しかしながら、具体的に何から手を付ければいいのか、まだまだ腑に落ちていない企業様が多いのではないでしょうか。
東京都の支援は、他の自治体に比べて格段に手厚いことで知られています。申し込みのハードルが低く、補助率に優れています。しかも企業の成長を促しながらゼロエミッションに資する、幅広い選択肢が設けられているので、おそらく経営者の皆様が抱えている多様な問題をほぼ解決できるといっても過言ではありません。都内に事業所や工場を構えている企業は本当に恵まれていると感じます。ただ、一つだけ申し上げておきたいのは、助成金をもらうことが目的になってはいけないということです。自社が将来どのように成長・発展してゆくか、社会に対して何を還元してゆくのか。それらを叶えていくための手段であると捉えるべきでしょう。
省エネ設備への更新を促す助成金には、導入機器の機種指定や運用期間に一定の制約があります。例えば助成金を利用して設備を導入した後に、エネルギー使用の合理化が進んだことで攻めの経営に転じようとしても、助成金の制約によりすぐに機器の刷新ができない場合があります。つまり、成長のチャンスを逸してしまうということです。企業様のお考えによっては、助成金の活用をおすすめしないこともあるんです。
助成金を上手く活用して脱炭素経営を進めていくためには、まず自社の現状を把握するところから。経済産業省の「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」の計算シートや、日本商工会議所の「CO2チェックシート」、環境省のCO2排出係数公表サイトの情報に沿って、自社のエネルギーコストおよびCO2排出状況を数値化し、今後どうしたいか、ご自身の会社にとって何をすることがベストかを、明確にしてゆくことが肝要だと思います。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
持続的な経済活動と環境負荷低減のバランス
付加価値を生み出すエネルギー活用へ
【セミナーレポート】
ピコットエナジー株式会社 代表取締役
ゼロエミッション経営推進相談員
田村 健人(たむら たけと)氏
2023/7/20
これまで、中小企業診断士として多くの企業コンサルティングを手掛けてきた田村健人さんは、エネルギー管理士、東京都排出量取引制度技術管理者の立場からも常に的確な助言をされてきた経営改善支援の・・・
これまで、中小企業診断士として多くの企業コンサルティングを手掛けてきた田村健人さんは、エネルギー管理士、東京都排出量取引制度技術管理者の立場からも常に的確な助言をされてきた経営改善支援のスペシャリストです。先日行われたセミナーにおいても、エネルギーコストアップの原因と対策、省エネの基本的な考え方など、脱炭素経営への取組に欠かせないさまざまなポイントを講義していただきました。
ご存じの通り、2015年にパリ協定が採択されて以来、脱炭素に向けた動きは世界的に加速し続けています。日本でも2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」に続き、2030年度における温室効果ガス削減目標を46%に設定(2013年度比)することを表明したほか、今年2月には「GX(グリーントランスフォーメーション)※1 実現に向けた基本方針」が閣議決定され、4月からは改正省エネ法が施行されました。とりわけGX戦略は、戦後日本における産業・エネルギー政策を大転換させるエポックメイキングな出来事といえるでしょう。気候変動問題に対して、日本が国家を挙げて取り組むという強い決意表明が発信されたわけです。
当然ながら中小企業の皆様も、この大きな時代のうねりから目を逸らさずにはいられません。温室効果ガス排出量の「見える化」、カーボンニュートラルに向けた「設備投資の促進」が拡大し、地域の金融機関や中小企業団体などの支援機関も「プッシュ型」の積極的な働きかけを行っていくことになるでしょう。また、グリーンな製品が尊ばれ、官民ともにグリーン製品の選定や調達が推奨されるようになると、そこに新たな市場が創出されていきます。
さらには、すでに欧米で一般化されている炭素税が、やがて日本でも導入されることになるかもしれません。日本の地球温暖化対策のための税(いわゆる温対税)はCO2排出量1tあたり289円ですが、イギリスでは2,870円/t-CO2、フランスでは5,930円/t-CO2、スウェーデンにいたっては15,470円/t-CO2です(2018年為替レート)。もちろん温対税の拡充についての議論はこれからの話ですが、日本でも他国と同等規模の税制度が2028年から本格導入されるという見方もあります。
※1 GXは「Green Transformation」の略称。温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心の経済社会システムへと変革し、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指す取組です。
第1次オイルショックを契機として1979年に制定された省エネ法は、エネルギー使用の合理化が最大の目的でした。今年から施行された改正省エネ法は、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を目指すとともに、合理化の対象範囲を非化石エネルギーにも広げています(太陽光発電も報告対象)。この法律における省エネとは、経済産業省が推進する「経済の健全な発展に不可欠なエネルギーの効率的活用」という考え方に基づいています。
一方、環境省が主導するCO2排出量削減は、温室効果ガスの排出をとにかく減らしていこうというのが本旨。極論を申し上げると、経済活動を縮小してしまえばゼロエミッションの達成に近づくのですが、それだけでは平和な日常を持続させるための環境負荷低減には繋がりません。両者は一見すると全く異なる方針を採っているようにも思えますが、目標とする到達点は同じです。脱炭素社会の実現と企業の成長にバランスよく取り組んでいかなければなりません。エネルギー管理の専門家として、私が心がけているのは付加価値の創造です。付加価値を生み出すことにエネルギーを集中して使う大切さを説きながら、ご相談に来られるそれぞれの企業様にフィットした取組をご提案しています。
照明をLED電球に替える、社用車にEVを導入する、空調を最新の省エネ型に置き換えるなど、とかく設備投資に目が行きがちですが、実はエネルギーコストが上がってしまう原因は他にもあり、相応の対策を図ることでエネルギー使用の合理化が実現できます。電力会社との契約の見直しもその一つでしょう。規模が大きい企業は高圧電力、小規模な企業は一般家庭と同じ低圧電力で契約されていることと思います。
電力使用料金の多寡は、概ね支払金額(円)÷電力使用量(kWh)で30〜37円/kWhが目安とされています。これを上回る状況なら、契約そのものを見直す余地がありそうです。普段は誰もいない倉庫であれば、不要な空調屋外機を電源から外して契約外とすることで、基本料金の大幅な低減が可能です。また、工場内にある空調や製造機器の起動を一斉に行うと消費電力が一気に跳ね上がりますが、時間をずらして順番に起動すればピーク値を低くできます。電力使用量を平準化することでコストを抑えられるケースもあります。最新型の省エネ設備を導入したのに電気代が思うように下がらない場合は、給排気に伴う熱漏れや、換気扇から冷気や熱が逃げている可能性を疑ってもいいでしょう。空調の設定温度を上げ下げして「我慢の省エネ」を続けるだけではなく、建物の断熱性を高めたり、窓の気密性を向上させた方がよい場合もあるんです。
やはり、ご相談企業との信頼関係の構築が鍵だと思っています。これもダメ、あれもダメと、こちらが否定から入ってしまうと、どうしても反発される方々がいらっしゃいます。企業様が長年培われてきたこと、大切にしてきたことに理解を示し、共感し、皆様が受容できるラインを探っています。
特に伝統ある老舗中小企業の場合は、エネルギーが高コストになりがちです。省エネに対する関心や意識があっても、昔ながらのやり方を曲げたくないという会社さんは多いんです。とある食品加工会社さんのケースを例に挙げると、加熱調理の工程に消費電力のムダが見られました。その工程は安易に省けるものではなかったのですが、機器の使い方を変えたり部品を追加したりして、生産効率をアップさせることができました。結果的には年間で約1,000万円のエネルギーコスト削減が実現できたのです。
最近はTVやラジオなどで「HTT」の話題を耳にする機会が増えてきました。世の中に浸透しつつあると思います。しかしながら、具体的に何から手を付ければいいのか、まだまだ腑に落ちていない企業様が多いのではないでしょうか。
東京都の支援は、他の自治体に比べて格段に手厚いことで知られています。申し込みのハードルが低く、補助率に優れています。しかも企業の成長を促しながらゼロエミッションに資する、幅広い選択肢が設けられているので、おそらく経営者の皆様が抱えている多様な問題をほぼ解決できるといっても過言ではありません。都内に事業所や工場を構えている企業は本当に恵まれていると感じます。ただ、一つだけ申し上げておきたいのは、助成金をもらうことが目的になってはいけないということです。自社が将来どのように成長・発展してゆくか、社会に対して何を還元してゆくのか。それらを叶えていくための手段であると捉えるべきでしょう。
省エネ設備への更新を促す助成金には、導入機器の機種指定や運用期間に一定の制約があります。例えば助成金を利用して設備を導入した後に、エネルギー使用の合理化が進んだことで攻めの経営に転じようとしても、助成金の制約によりすぐに機器の刷新ができない場合があります。つまり、成長のチャンスを逸してしまうということです。企業様のお考えによっては、助成金の活用をおすすめしないこともあるんです。
助成金を上手く活用して脱炭素経営を進めていくためには、まず自社の現状を把握するところから。経済産業省の「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」の計算シートや、日本商工会議所の「CO2チェックシート」、環境省のCO2排出係数公表サイトの情報に沿って、自社のエネルギーコストおよびCO2排出状況を数値化し、今後どうしたいか、ご自身の会社にとって何をすることがベストかを、明確にしてゆくことが肝要だと思います。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
株式会社山本技術経営研究所 代表取締役
山本 肇 (やまもと はじめ)氏
2023/6/29
「カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンにおける動向と具体的な取り組み方」と題した本セミナーでは、事業活動に関わるあらゆる排出量を合計したサプライチェーン排出量の重要性について・・・
「カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンにおける動向と具体的な取り組み方」と題した本セミナーでは、事業活動に関わるあらゆる排出量を合計したサプライチェーン排出量の重要性について解いていただきました。とはいえ、Scope3にあたる上流、下流の間接排出の把握や、排出量の算定方法に難しさを感じやすく、何から手を付ければいいのか頭を悩ます担当者の方も少なくないはず。そこで、サプライチェーン排出量の捉え方や実際に算定する際のポイント、取組の事例などを伺いながら、講師の山本肇さんにアドバイスをいただきました。
サプライチェーン排出量とは、自社における排出だけでなく、事業活動に関わるあらゆる排出を合計した排出量を指します。まずは自社の工場などで燃料を燃焼した時の排出をScope1といい、電気を使った時の間接排出をScope2といいます。次に事業活動全体に視野を広げて、上流では原材料調達やその輸送・配送において、下流では製品の使用から廃棄にいたる段階の他社の排出をScope3と捉えます。カーボンニュートラルを実現するには、Scope1、2、3すべてを考える必要があるということです。
Scope3は他社の事業活動による排出であるため、コントロールに難しさを感じるかもしれませんが、たとえ自社においてカーボンニュートラルを実現できたとしても、原材料調達で多くのCO2が排出されているようでは、トータルの評価には繋がりにくくなります。逆に省エネ効果の高い製品を作って世に送り出せば、製品使用時の排出量を減らすことで間接的にカーボンニュートラルに貢献することも可能なのです。サプライチェーン排出量の全体像を把握すれば、優先的に削減すべき対象を特定できるようになります。
サプライチェーン排出量には関連する他社の排出量も含まれるため、各社で算定が行われた場合、「重複するのでは?」と懸念される声も聞かれます。結論をいえば重複はします。しかし、日本全体の総排出量を求めることが目的ではないので問題はないのです。サプライチェーン排出量というのは、事業活動の上流、下流も含めた全体で世の中にどのような影響を与えているのかを認識することで、各企業に脱炭素経営の指標としていただくことが目的なのです。
まずは自社の脱炭素化に取り組むことが大切ですので、Scope1、2における排出量の算定から始めましょう。Scope1は自社における直接排出ですから、重油、ガソリン、ガスなど、燃料ごとに使用量を調べて計算式にあてはめて算出します。Scope2は他社から供給された電気や熱の使用に伴う間接排出ですので、供給元の電気事業者ごとの排出係数をもとに算出します。次の段階として、事業活動の上流、下流にあたるScope3について目を向けるとよいと思います。
Scope1、2は省エネルギー対策になりますから、脱炭素を進めるとともに、自社のエネルギーコストを下げることにも繋がります。特にScope2においては、東京都がHTT(電力をH「へらす」T「つくる」T「ためる」)の取組を加速させており、さまざまな支援策が用意されているため、取り組みやすい領域といえるでしょう。
また、組織単位で排出量を算定するサプライチェーン排出量とは別に、カーボンフットプリント※1で製品単位の排出量をだしておけば、他社から問合せがきた時に確度の高い情報を提供できるようになります。このように各社で取組が進み、Scope1、2における確度の高い排出量と製品の排出量を公表できるようになれば、Scope3における他社の情報が得やすくなり、サプライチェーン排出量が算定しやすくなると考えられます。
※1 気候変動への影響に関連するライフサイクルアセスメントに基づき、当該製品システム(製品単位)における温室効果ガスの排出量から除去・吸収量を除いた値をCO2排出量相当に換算したもの。
排出量は、「活動量」×「排出原単位」という基本式によって求めることができます。ここでいう活動量とは、燃料や電気の使用量、貨物の輸送量、あるいは取引金額などが該当します。排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことで、たとえば電気なら1kWh使用あたりの排出量、貨物の輸送なら1トンキロあたりの排出量をいいます。基本式に入れる活動量と排出原単位の特定には、環境省のガイドラインやデータベース※2を活用することができます。
Scope1、2に関しては自社の燃料使用量や電気量ですので難しくないと思いますが、Scope3に関しても基本的には既存のデータベース※2を使用して算出することが可能です。Scope3の場合は、「購入した製品・サービス」「輸送・配送」「出張」など15のカテゴリがありますので、カテゴリごとに分類してから算出します。
実際にデータベースを見てみると、あてはまる項目がなくて悩まれる方も多いのですが、最初から正確な数値を求めるのは難しいですから、まずはわかる範囲で取り組んでみましょう。たとえば調達した原材料がステンレスであった場合、データベースには鉄、銅材など大まかな分類しかないため、鉄の排出原単位で算定することになります。このように精度の高い数値を計算する必要はありませんが、どのデータベースをもとに計算したのかは明示するようにしてください。まずは、大まかに自社のサプライチェーン排出量の全体像を把握することを心がけましょう。
※2 環境省のデータベース
・サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出源単位について(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/unit_outline_V3-2.pdf
・温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度/算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/calc
パワエレとは、パワーエレクトロニクスの略で電力を変換するための技術を指し、省エネ問題を考えるうえのキーテクノロジーとしても注目されています。電力変換の身近な例でいいますと、交流を直流に変換するACアダプタがありますが、ひと昔前に比べると、スマートフォンやパソコンの電源アダプタがずいぶんと小型化して高効率化されたことはご存じの通りだと思います。同じように、電源設備も日進月歩で進歩していますし、古い設備は最新型に比べるとどうしても電力効率が悪くなることもあり、耐用年数を迎えたら設備交換を検討するのがよいと思います。
設備交換に際しては、現状の電気効率はどの程度なのか、それを新しい設備にするとどれくらい効率がよくなるのか、現状を知ることから始めます。省エネ対策とはいえ、あくまで設備投資だということを忘れないでください。
投資額は何年で回収できるのか、電気効率だけで考えると時間がかかりそうな場合も、電気代が高騰している現在の状況を鑑みると案外早くペイできる可能性もあります。また、助成金を使えば初期投資を軽減することもできます。省エネの取組を加速する東京都では多くの助成金や支援策が用意されていますので、老朽化した機器の設備更新にはよいチャンスだと思います。
実際、設備投資をきっかけに脱炭素経営を始める方は多いのですが、ある企業の場合、設備投資で自社の燃料費が軽減できることから、「Scope1の取組になるのでは?」と考えて相談に来られました。その設備を使うことで製品の製造をスピードアップすることが可能で、生産量を3倍に増やせるということでしたが、お話を伺うなかで、作られる製品がリサイクル材であることがわかりました。つまり、製品の使用によっても排出量を減らせることがわかったのです。
まず、生産スピードが3倍になるということは、燃料費が1/3に下がるということですから、Scope1の取組にあたります。同時に、その設備で作られる製品がリサイクル材であるということは、製品の使用時においても脱炭素に貢献できるので、Scope3の取組にもあたるわけです。当初は燃料費の軽減を目的に設備投資を検討されていましたが、リサイクル製品を作ることでより広く社会に貢献できることがわかり、とても喜んでくださいました。助成金の申請にあたっては、Scope1にあたる直接排出削減の計算とともに、Scope3の製品使用時における計算ものせることができたため、助成金対象としてスムーズに採択されたそうです。
脱炭素経営というのは、企業によってそれぞれ違った取組のかたちがあるのだと思います。そのかたちを見極める意味で、サプライチェーン排出量は最初に取り組むべき事柄といえるでしょう。必要性は感じているけど具体的にどうしたらよいかわからない、という場合、まずは公共の窓口に相談するのが一番の近道です。東京都では中小企業をバックアップする体制を整えており、こちらのHTT実践推進ナビゲーター事業もその一つです。また、私が関わる東京都中小企業振興公社とも連携しており、月に一度専門家を派遣するハンズオン支援を行っていて、サプライチェーン排出量の算定についても理解できるまで寄り添いながら支援を行っています。
また、脱炭素経営というのは環境問題における取組である以前に、自社の事業規模を拡大することが目的であると認識していただきたいのです。極端な話ですが、事業を縮小すればCO2の削減に繋がりますがそれでは意味がありません。事業を拡大するために、脱炭素経営で何に取り組むべきなのか、そういう視点が重要です。脱炭素経営によって企業価値を高め、社会から選ばれる企業になること、それが最大の目的です。公的支援が整った今がビジネスチャンスです。まずは第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
サプライチェーン排出量の算定、中小企業はどう取り組む?【セミナーレポート】
株式会社山本技術経営研究所 代表取締役
山本 肇 (やまもと はじめ)氏
2023/6/29
「カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンにおける動向と具体的な取り組み方」と題した本セミナーでは、事業活動に関わるあらゆる排出量を合計したサプライチェーン排出量の重要性について・・・
「カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンにおける動向と具体的な取り組み方」と題した本セミナーでは、事業活動に関わるあらゆる排出量を合計したサプライチェーン排出量の重要性について解いていただきました。とはいえ、Scope3にあたる上流、下流の間接排出の把握や、排出量の算定方法に難しさを感じやすく、何から手を付ければいいのか頭を悩ます担当者の方も少なくないはず。そこで、サプライチェーン排出量の捉え方や実際に算定する際のポイント、取組の事例などを伺いながら、講師の山本肇さんにアドバイスをいただきました。
サプライチェーン排出量とは、自社における排出だけでなく、事業活動に関わるあらゆる排出を合計した排出量を指します。まずは自社の工場などで燃料を燃焼した時の排出をScope1といい、電気を使った時の間接排出をScope2といいます。次に事業活動全体に視野を広げて、上流では原材料調達やその輸送・配送において、下流では製品の使用から廃棄にいたる段階の他社の排出をScope3と捉えます。カーボンニュートラルを実現するには、Scope1、2、3すべてを考える必要があるということです。
Scope3は他社の事業活動による排出であるため、コントロールに難しさを感じるかもしれませんが、たとえ自社においてカーボンニュートラルを実現できたとしても、原材料調達で多くのCO2が排出されているようでは、トータルの評価には繋がりにくくなります。逆に省エネ効果の高い製品を作って世に送り出せば、製品使用時の排出量を減らすことで間接的にカーボンニュートラルに貢献することも可能なのです。サプライチェーン排出量の全体像を把握すれば、優先的に削減すべき対象を特定できるようになります。
サプライチェーン排出量には関連する他社の排出量も含まれるため、各社で算定が行われた場合、「重複するのでは?」と懸念される声も聞かれます。結論をいえば重複はします。しかし、日本全体の総排出量を求めることが目的ではないので問題はないのです。サプライチェーン排出量というのは、事業活動の上流、下流も含めた全体で世の中にどのような影響を与えているのかを認識することで、各企業に脱炭素経営の指標としていただくことが目的なのです。
まずは自社の脱炭素化に取り組むことが大切ですので、Scope1、2における排出量の算定から始めましょう。Scope1は自社における直接排出ですから、重油、ガソリン、ガスなど、燃料ごとに使用量を調べて計算式にあてはめて算出します。Scope2は他社から供給された電気や熱の使用に伴う間接排出ですので、供給元の電気事業者ごとの排出係数をもとに算出します。次の段階として、事業活動の上流、下流にあたるScope3について目を向けるとよいと思います。
Scope1、2は省エネルギー対策になりますから、脱炭素を進めるとともに、自社のエネルギーコストを下げることにも繋がります。特にScope2においては、東京都がHTT(電力をH「へらす」T「つくる」T「ためる」)の取組を加速させており、さまざまな支援策が用意されているため、取り組みやすい領域といえるでしょう。
また、組織単位で排出量を算定するサプライチェーン排出量とは別に、カーボンフットプリント※1で製品単位の排出量をだしておけば、他社から問合せがきた時に確度の高い情報を提供できるようになります。このように各社で取組が進み、Scope1、2における確度の高い排出量と製品の排出量を公表できるようになれば、Scope3における他社の情報が得やすくなり、サプライチェーン排出量が算定しやすくなると考えられます。
※1 気候変動への影響に関連するライフサイクルアセスメントに基づき、当該製品システム(製品単位)における温室効果ガスの排出量から除去・吸収量を除いた値をCO2排出量相当に換算したもの。
排出量は、「活動量」×「排出原単位」という基本式によって求めることができます。ここでいう活動量とは、燃料や電気の使用量、貨物の輸送量、あるいは取引金額などが該当します。排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことで、たとえば電気なら1kWh使用あたりの排出量、貨物の輸送なら1トンキロあたりの排出量をいいます。基本式に入れる活動量と排出原単位の特定には、環境省のガイドラインやデータベース※2を活用することができます。
Scope1、2に関しては自社の燃料使用量や電気量ですので難しくないと思いますが、Scope3に関しても基本的には既存のデータベース※2を使用して算出することが可能です。Scope3の場合は、「購入した製品・サービス」「輸送・配送」「出張」など15のカテゴリがありますので、カテゴリごとに分類してから算出します。
実際にデータベースを見てみると、あてはまる項目がなくて悩まれる方も多いのですが、最初から正確な数値を求めるのは難しいですから、まずはわかる範囲で取り組んでみましょう。たとえば調達した原材料がステンレスであった場合、データベースには鉄、銅材など大まかな分類しかないため、鉄の排出原単位で算定することになります。このように精度の高い数値を計算する必要はありませんが、どのデータベースをもとに計算したのかは明示するようにしてください。まずは、大まかに自社のサプライチェーン排出量の全体像を把握することを心がけましょう。
※2 環境省のデータベース
・サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出源単位について(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/unit_outline_V3-2.pdf
・温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度/算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/calc
パワエレとは、パワーエレクトロニクスの略で電力を変換するための技術を指し、省エネ問題を考えるうえのキーテクノロジーとしても注目されています。電力変換の身近な例でいいますと、交流を直流に変換するACアダプタがありますが、ひと昔前に比べると、スマートフォンやパソコンの電源アダプタがずいぶんと小型化して高効率化されたことはご存じの通りだと思います。同じように、電源設備も日進月歩で進歩していますし、古い設備は最新型に比べるとどうしても電力効率が悪くなることもあり、耐用年数を迎えたら設備交換を検討するのがよいと思います。
設備交換に際しては、現状の電気効率はどの程度なのか、それを新しい設備にするとどれくらい効率がよくなるのか、現状を知ることから始めます。省エネ対策とはいえ、あくまで設備投資だということを忘れないでください。
投資額は何年で回収できるのか、電気効率だけで考えると時間がかかりそうな場合も、電気代が高騰している現在の状況を鑑みると案外早くペイできる可能性もあります。また、助成金を使えば初期投資を軽減することもできます。省エネの取組を加速する東京都では多くの助成金や支援策が用意されていますので、老朽化した機器の設備更新にはよいチャンスだと思います。
実際、設備投資をきっかけに脱炭素経営を始める方は多いのですが、ある企業の場合、設備投資で自社の燃料費が軽減できることから、「Scope1の取組になるのでは?」と考えて相談に来られました。その設備を使うことで製品の製造をスピードアップすることが可能で、生産量を3倍に増やせるということでしたが、お話を伺うなかで、作られる製品がリサイクル材であることがわかりました。つまり、製品の使用によっても排出量を減らせることがわかったのです。
まず、生産スピードが3倍になるということは、燃料費が1/3に下がるということですから、Scope1の取組にあたります。同時に、その設備で作られる製品がリサイクル材であるということは、製品の使用時においても脱炭素に貢献できるので、Scope3の取組にもあたるわけです。当初は燃料費の軽減を目的に設備投資を検討されていましたが、リサイクル製品を作ることでより広く社会に貢献できることがわかり、とても喜んでくださいました。助成金の申請にあたっては、Scope1にあたる直接排出削減の計算とともに、Scope3の製品使用時における計算ものせることができたため、助成金対象としてスムーズに採択されたそうです。
脱炭素経営というのは、企業によってそれぞれ違った取組のかたちがあるのだと思います。そのかたちを見極める意味で、サプライチェーン排出量は最初に取り組むべき事柄といえるでしょう。必要性は感じているけど具体的にどうしたらよいかわからない、という場合、まずは公共の窓口に相談するのが一番の近道です。東京都では中小企業をバックアップする体制を整えており、こちらのHTT実践推進ナビゲーター事業もその一つです。また、私が関わる東京都中小企業振興公社とも連携しており、月に一度専門家を派遣するハンズオン支援を行っていて、サプライチェーン排出量の算定についても理解できるまで寄り添いながら支援を行っています。
また、脱炭素経営というのは環境問題における取組である以前に、自社の事業規模を拡大することが目的であると認識していただきたいのです。極端な話ですが、事業を縮小すればCO2の削減に繋がりますがそれでは意味がありません。事業を拡大するために、脱炭素経営で何に取り組むべきなのか、そういう視点が重要です。脱炭素経営によって企業価値を高め、社会から選ばれる企業になること、それが最大の目的です。公的支援が整った今がビジネスチャンスです。まずは第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
ストラテジー&オペレーショングループ
シニアマネジャー/上席主任研究員
大森 充(おおもり みつる)氏
2023/5/23
なぜ今、取り組まなければならないのか? 中小企業の役割とは? ESGやSDGsの観点から、企業の経営計画やDX戦略、事業開発の現場に・・・
なぜ今、取り組まなければならないのか? 中小企業の役割とは? ESGやSDGsの観点から、企業の経営計画やDX戦略、事業開発の現場に数多く携わってきた大森充さんを講師に迎え、脱炭素化推進の意義を伺いました。
これまで企業は、顧客に価値を提供し、雇用機会をつくり、納税をすれば、社会に貢献しているとみなされてきました。自由な資本主義を追求する過程で、従業員に負荷をかけたり、サプライヤーに無理を強いたり、外部環境に多少の悪影響を及ぼしても許されてきたのです。 しかし、サステナビリティ(持続可能性)の主語は、企業ではなく、あくまでも「地球」です。そもそも健全な地球環境が維持できなければ、私たちの社会や経済は成り立ちません。そこで生まれたのが2015年に国連加盟国197ヵ国が合意・採択したSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)です。
SDGsが掲げる17のゴール・169のターゲットにおいて、とりわけ大きな課題が気候変動対応です。地球の劣化は皆さんが想像される以上に深刻です。なんの手立ても講じずに進むと、2050年には海洋に漂うプラスチックゴミと、海に生きる魚の量とが同じになるという試算があります。また、すでに1970年から現在まで脊椎動物の個体群は平均68%減少しました。温暖化による気候変動でハリケーンや台風の甚大化が進み、気象災害の被害額も全世界で年間平均1,200億ドル(2008〜17年)にのぼっています。経済を盛り立てた結果、意図せずして人ですら生きづらい環境を作り上げてしまったのです。ちなみに、前述した2015年に国連で採択された文書の名称は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、世界を変革する(Transforming our world)という文言で表現されています。チェンジ(変える)ではなく、より強いニュアンスを持つトランスフォーミング(変革・転換)が使われているほど、世界は切迫した状況に陥っています。
2020年10月、当時の菅政権が2050年までにCO2排出量をプラスマイナスゼロの状態にするカーボンニュートラル実現を宣言しました。このシナリオは、このまま何もしなければ世界の平均気温が4℃上昇してしまうところを、さまざまな対策によって1.5℃に抑えようとするものです。世界123ヶ国と1地域が賛同している中、日本は後発の宣言となりましたが、その一方でTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿うかたちでプライム市場上場企業に脱炭素化計画の開示が求められるなど、ボランタリー(自発的な任意)から義務化への流れが構築されつつあります。また日本政府の働きかけもあり、このTCFDに賛同する機関数は、イギリスやアメリカをしのぎ世界第1位となりました。
もし地球環境のさまざまなリスクが顕在化すると、これから生まれてくる世代にとってはそれがごく当たり前のことになり、今後思うような改善が見込めないかもしれません。私たちが気候変動を緩和できる最後の世代です。そうした状況や、よりよい社会を未来へつなぐ責任を鑑み、本気で問題解決に取り組もうと考える企業が増えてきたと言えますね。
CO2排出量の抑制は大企業だけの問題ではありません。サプライチェーン全体での解決が絶対に必要となってきます。
例えば、製造業におけるサプライチェーン全体のCO2排出量を可視化した場合、資材の調達、製造・加工、流通や販売は大企業がある程度コントロールできます。しかし、原材料の製造をはじめ、実際の製造や加工作業などの下請け業務を担うのは中小企業です。特に商品が消費者の手に渡り、廃棄に至る過程での排出量ボリュームが大きいため、この部分を大幅に削減できなければカーボンニュートラルは実現できません。東京都に所在する企業のうち約99%を中小企業が占めているように、産業やサービスの中心は中小企業の皆さんです。目標達成には中小企業の力が必須となります。
今後、大企業はサプライチェーン全体で気候変動解決を目指すサプライヤーエンゲージメントの仕組みを作り上げていくでしょう。その際、CSR(企業の社会的責任)を目的に、サプライヤーにはさまざまな基準や条件が課せられ、それをクリアした中小企業がパートナーとして選ばれるようになります。
実際、米国の大手電機メーカーでは、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル ※1)への入居がサプライヤー選定の要件となっています。また、大手自動車メーカーは各部品を製造するサプライヤーにCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)に回答することを要件としています。サプライチェーンの構成企業として、積極的に取り組んでいる姿勢を示し、責任の一端を担うことができなければ、最悪の場合は排除させられてしまう可能性もあるのです。
仮に取引量の多い顧客からCSR調達の要請を受けたら、一つ一つしっかりと対応していくことが肝要です。決して他人事ではなく、自分が抱える問題として捉え、「この部分はできている」「この部分はできていないが、将来的にこうしたい、こうすればできる」という真摯な回答が重要です。わからないことがあれば調べ、専門知識を少しでも吸収し、自社が置かれている立場や能力を見極めるだけでも、それが後々メリットになっていきます。
※1 ZEB…Net Zero Energy Buildingの略称。快適な環境を実現しながら、その建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指したビルのこと。省エネによってエネルギー消費量を減らし、創エネによってあらたなエネルギーを作ることで、エネルギー消費量を正味ゼロにすることができる。
最近私がコンサルティングをお手伝いした大阪のプラスチックプレート製造企業では、もともと環境問題に対する意識が高く、100%リサイクル材料でものづくりを行なっていることを武器にしていました。その後、CSR調達をきっかけに、自分たちにどのような貢献ができるのか、あらためて自社に対する理解を深め、PRに転化したことで、廃プラ削減への取り組みが評価されました。コロナ禍による需要もあって、感染症対策用アクリル板の売上がアップし、大幅な受注増につながっています。
また、横浜にある某施工会社は「B-Corp」という国際的な認証制度を取得されました。社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対して与えられるこの制度は、例えばアウトドア用品のパタゴニア社が認証を受けたことでも知られています。取得すれば世界的に評価される分、その条件は厳しく、とてもハードルが高いものです。しかし、B-Corpのような国際認証を取得することは社会的信用や国際競争力を高める手段となります。SDGsに関心のある企業への営業チャンスが広がり、中小企業によるSDGsのロールモデルとしても注目を浴びています。
先ほどもお話ししたように、環境・エネルギー対策はまさに総力戦。大企業の努力だけでは成し得ません。十分な効果を得るためには中小企業の皆さんの意識改革が鍵となります。そういった裾野の活動を活性化させる上で、HTTが果たす役割は大きいでしょう。
まずは、社内の照明を白熱電球からLEDに変えるなど、手軽にできる「減らす」から始めてもいいですね。そして、自社の状況を見極め、一つ一つの課題をクリアし、社会的使命を果たすためのパーパス(目的)を設定することが大切です。また、省エネ対策をテコにして、社内環境のイノベーションに役立てたり、環境にやさしい事業を新たに創出したり、ブランディングにつなげるのもよいと思います。文字通り、自社で消費するエネルギーを「つくる」ことも必要ですが、自社の事業を再定義してあらたなビジネスチャンスを「つくる」ことにもチャレンジしていただきたいですね。
さらに、中小企業を取り巻く問題として、しばしば労働人口の減少が取りざたされていますが、若者の価値観は「どの企業に勤めるか?」から「どんな仕事に就くか?」に変化しています。とりわけZ世代は環境問題に関心を持ち、企業が携えるべきパーパスに敏感です。彼らはエコフレンドリーで、やりがいを感じられる企業に魅力を覚える傾向にあるのです。脱炭素化への積極参加は、若く優秀な人材を獲得しやすくなることにも繋がっていくと思います。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
もはや脱炭素経営に「待ったなし」
積極的参画でピンチをチャンスに
【セミナーレポート】
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
ストラテジー&オペレーショングループ
シニアマネジャー/上席主任研究員
大森 充(おおもり みつる)氏
2023/5/23
なぜ今、取り組まなければならないのか? 中小企業の役割とは? ESGやSDGsの観点から、企業の経営計画やDX戦略、事業開発の現場に・・・
なぜ今、取り組まなければならないのか? 中小企業の役割とは? ESGやSDGsの観点から、企業の経営計画やDX戦略、事業開発の現場に数多く携わってきた大森充さんを講師に迎え、脱炭素化推進の意義を伺いました。
これまで企業は、顧客に価値を提供し、雇用機会をつくり、納税をすれば、社会に貢献しているとみなされてきました。自由な資本主義を追求する過程で、従業員に負荷をかけたり、サプライヤーに無理を強いたり、外部環境に多少の悪影響を及ぼしても許されてきたのです。 しかし、サステナビリティ(持続可能性)の主語は、企業ではなく、あくまでも「地球」です。そもそも健全な地球環境が維持できなければ、私たちの社会や経済は成り立ちません。そこで生まれたのが2015年に国連加盟国197ヵ国が合意・採択したSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)です。
SDGsが掲げる17のゴール・169のターゲットにおいて、とりわけ大きな課題が気候変動対応です。地球の劣化は皆さんが想像される以上に深刻です。なんの手立ても講じずに進むと、2050年には海洋に漂うプラスチックゴミと、海に生きる魚の量とが同じになるという試算があります。また、すでに1970年から現在まで脊椎動物の個体群は平均68%減少しました。温暖化による気候変動でハリケーンや台風の甚大化が進み、気象災害の被害額も全世界で年間平均1,200億ドル(2008〜17年)にのぼっています。経済を盛り立てた結果、意図せずして人ですら生きづらい環境を作り上げてしまったのです。ちなみに、前述した2015年に国連で採択された文書の名称は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、世界を変革する(Transforming our world)という文言で表現されています。チェンジ(変える)ではなく、より強いニュアンスを持つトランスフォーミング(変革・転換)が使われているほど、世界は切迫した状況に陥っています。
2020年10月、当時の菅政権が2050年までにCO2排出量をプラスマイナスゼロの状態にするカーボンニュートラル実現を宣言しました。このシナリオは、このまま何もしなければ世界の平均気温が4℃上昇してしまうところを、さまざまな対策によって1.5℃に抑えようとするものです。世界123ヶ国と1地域が賛同している中、日本は後発の宣言となりましたが、その一方でTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿うかたちでプライム市場上場企業に脱炭素化計画の開示が求められるなど、ボランタリー(自発的な任意)から義務化への流れが構築されつつあります。また日本政府の働きかけもあり、このTCFDに賛同する機関数は、イギリスやアメリカをしのぎ世界第1位となりました。
もし地球環境のさまざまなリスクが顕在化すると、これから生まれてくる世代にとってはそれがごく当たり前のことになり、今後思うような改善が見込めないかもしれません。私たちが気候変動を緩和できる最後の世代です。そうした状況や、よりよい社会を未来へつなぐ責任を鑑み、本気で問題解決に取り組もうと考える企業が増えてきたと言えますね。
CO2排出量の抑制は大企業だけの問題ではありません。サプライチェーン全体での解決が絶対に必要となってきます。
例えば、製造業におけるサプライチェーン全体のCO2排出量を可視化した場合、資材の調達、製造・加工、流通や販売は大企業がある程度コントロールできます。しかし、原材料の製造をはじめ、実際の製造や加工作業などの下請け業務を担うのは中小企業です。特に商品が消費者の手に渡り、廃棄に至る過程での排出量ボリュームが大きいため、この部分を大幅に削減できなければカーボンニュートラルは実現できません。東京都に所在する企業のうち約99%を中小企業が占めているように、産業やサービスの中心は中小企業の皆さんです。目標達成には中小企業の力が必須となります。
今後、大企業はサプライチェーン全体で気候変動解決を目指すサプライヤーエンゲージメントの仕組みを作り上げていくでしょう。その際、CSR(企業の社会的責任)を目的に、サプライヤーにはさまざまな基準や条件が課せられ、それをクリアした中小企業がパートナーとして選ばれるようになります。
実際、米国の大手電機メーカーでは、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル ※1)への入居がサプライヤー選定の要件となっています。また、大手自動車メーカーは各部品を製造するサプライヤーにCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)に回答することを要件としています。サプライチェーンの構成企業として、積極的に取り組んでいる姿勢を示し、責任の一端を担うことができなければ、最悪の場合は排除させられてしまう可能性もあるのです。
仮に取引量の多い顧客からCSR調達の要請を受けたら、一つ一つしっかりと対応していくことが肝要です。決して他人事ではなく、自分が抱える問題として捉え、「この部分はできている」「この部分はできていないが、将来的にこうしたい、こうすればできる」という真摯な回答が重要です。わからないことがあれば調べ、専門知識を少しでも吸収し、自社が置かれている立場や能力を見極めるだけでも、それが後々メリットになっていきます。
※1 ZEB…Net Zero Energy Buildingの略称。快適な環境を実現しながら、その建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指したビルのこと。省エネによってエネルギー消費量を減らし、創エネによってあらたなエネルギーを作ることで、エネルギー消費量を正味ゼロにすることができる。
最近私がコンサルティングをお手伝いした大阪のプラスチックプレート製造企業では、もともと環境問題に対する意識が高く、100%リサイクル材料でものづくりを行なっていることを武器にしていました。その後、CSR調達をきっかけに、自分たちにどのような貢献ができるのか、あらためて自社に対する理解を深め、PRに転化したことで、廃プラ削減への取り組みが評価されました。コロナ禍による需要もあって、感染症対策用アクリル板の売上がアップし、大幅な受注増につながっています。
また、横浜にある某施工会社は「B-Corp」という国際的な認証制度を取得されました。社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対して与えられるこの制度は、例えばアウトドア用品のパタゴニア社が認証を受けたことでも知られています。取得すれば世界的に評価される分、その条件は厳しく、とてもハードルが高いものです。しかし、B-Corpのような国際認証を取得することは社会的信用や国際競争力を高める手段となります。SDGsに関心のある企業への営業チャンスが広がり、中小企業によるSDGsのロールモデルとしても注目を浴びています。
先ほどもお話ししたように、環境・エネルギー対策はまさに総力戦。大企業の努力だけでは成し得ません。十分な効果を得るためには中小企業の皆さんの意識改革が鍵となります。そういった裾野の活動を活性化させる上で、HTTが果たす役割は大きいでしょう。
まずは、社内の照明を白熱電球からLEDに変えるなど、手軽にできる「減らす」から始めてもいいですね。そして、自社の状況を見極め、一つ一つの課題をクリアし、社会的使命を果たすためのパーパス(目的)を設定することが大切です。また、省エネ対策をテコにして、社内環境のイノベーションに役立てたり、環境にやさしい事業を新たに創出したり、ブランディングにつなげるのもよいと思います。文字通り、自社で消費するエネルギーを「つくる」ことも必要ですが、自社の事業を再定義してあらたなビジネスチャンスを「つくる」ことにもチャレンジしていただきたいですね。
さらに、中小企業を取り巻く問題として、しばしば労働人口の減少が取りざたされていますが、若者の価値観は「どの企業に勤めるか?」から「どんな仕事に就くか?」に変化しています。とりわけZ世代は環境問題に関心を持ち、企業が携えるべきパーパスに敏感です。彼らはエコフレンドリーで、やりがいを感じられる企業に魅力を覚える傾向にあるのです。脱炭素化への積極参加は、若く優秀な人材を獲得しやすくなることにも繋がっていくと思います。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
株式会社ハバリーズ 代表取締役社長
矢野 玲美(やの れみ)氏
2023/4/20
事業継承をきっかけに、徹底した環境ブランディングによって新たな付加価値の創出を実現された、株式会社ハバリーズ代表取締役・矢野玲美さん。紙パック包装のナチュラルウォーター「ハバリーズ」で・・・
事業継承をきっかけに、徹底した環境ブランディングによって新たな付加価値の創出を実現された、株式会社ハバリーズ代表取締役・矢野玲美さん。紙パック包装のナチュラルウォーター「ハバリーズ」で一躍時の人となった矢野さんが、4月20日のHTTセミナーで語られたお話には、今、私たちが取り組むべき脱炭素化経営と、事業効率化やコスト削減を越えた業績拡大の大いなるヒントが散りばめられていました。
京都で生まれた私は、幼い頃から母の仕事を間近に見ていました。母は大分県出身、宇佐市の羽馬礼(はばれい)という地域を中心に複数の水源を所有し、ミネラルウォーターの製造・販売を手掛けてきました。事業の内容は、ホテルやドラッグストアなどが主なクライアントとなり、その相手先のブランド名でペットボトルの水を製造するOEMがメイン。営業は代理店、販売は取引先に委ねるという完全な製造業が主体で、常に1円以下の価格競争が付いてまわり、お客様からお値引きのご相談があると応じるほかなく、あまり公平性があるとはいえない事業スタイルではと感じていました。
水は人にとってなくてはならないものですが、その価値はとても曖昧です。
羽馬礼の湧水がどんなに優れた天然水であっても、おいしい水は他の地域でも産出されています。あとは価格勝負。しかも日本は欧米とは異なり「水はタダ」という感覚がいまだに根強い。おぼろげながら、やがては私がこの家業を受け継ぐんだろうなと考えてはいましたが、正直、水ビジネスにはネガティブなイメージしか持っていなかったんです。
大学卒業後、私は技術系商社に入社しました。海外を飛びまわる中で、ある日「紙パックで包装された水」を見つけたんです。その当時、紙パックは日本では見かけないマテリアルでした。社会全体が脱プラスティック、カーボンニュートラルを叫んでいる今、環境問題を語り合う国際会議の場で、なぜかテーブルの上にペットボトルの水が並んでいることに違和感を覚えてもいました。
時代が変わり、省エネ、再エネ、脱炭素化に取り組んでいることが企業活動の評価につながり、今やそれが株価にも結びついています。この状況を逆手に取って水ビジネスを始めようと宣言したら、周囲の方々からは「この業界は厳しい」「事業継承の魅力に乏しい」「せっかく商社に勤めているのにもったいない」など、反対意見が多々寄せられました。でも、大分県が誇る大切な水源を守り、それを未来へ残してゆくために、業界を変え、健全な事業化を進めていく。この信念を強みにして、第二創業を推し進めようと決意したのです。
2020年6月、コロナ禍の真っ只中にハバリーズを立ち上げました。平時でさえ難しいのに「よりによって、なんでこの時期に?」という声があったのも事実です。しかし、私の中には、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて「サステイナブルな紙パックのナチュラルウォーターを世に出したい」という強い思いがありました。
商品開発にあたってはいくつかのポイントがあります。まず、経済合理性に適うかどうか。少々高くても手の出せる価格帯でないとその商品は売れません。また、商品に込めた理念やストーリーも重要です。水源が羽馬礼地区にあることからパッケージには羽の生えた馬、つまりペガサスをデザインしました。これはペガサスのように優雅でありながら、社会に輝きをもたらす存在でありたいという願いが込められています。ちなみにセミナーでもご質問を受けましたが、デザインや制作物に関する世界観については当事者である私たち自身が中心となって、細部に至るまで考えています。
サイクル循環が100%可能であることにもこだわりました。包装本体がFSC認証(※1)取得済の紙であるだけでなく、キャップもBONSUCRO認証(※2)を取得したサトウキビ由来の植物性ポリエチレンを使用しています。ただただ「自然に優しい」を謳っても独りよがりなメッセージにしかなりませんから、国際機関が定める認証を取得しています。
世界が取り組むべきSDGs(持続可能な開発目標)にフィットした認証取得は、例えば融資をお願いする金融機関から求められることも多いんです。
同時に紙のパッケージは、ペットボトルやアルミ缶に比べて気候変動への負荷が最も低いとされていて、ゴミの減資率が78%以上に。廃棄面でもコスト削減が期待できます。さらに、法人向けに開発したリサイクル回収ボックスのスキームも、有名ホテルグループをはじめ多くの企業様から支持をいただいています。まず、ハバリーズの水とともに再生紙で作られたトイレットペーパーを購入していただき、その梱包用のダンボールに飲み終えた水の紙パックをまとめ、指定の工場に送料無料で送り返していただくというしくみです。これによって、紙から紙へのリサイクルが見える化できるようになりました。
こうした一つ一つの付加価値が積み重なり、メディア戦略が功を奏したことも大きいですね。多くの雑誌やTVなどのメディアがハバリーズの水に注目してくださり、環境問題に敏感な世界のハイブランド各社からお問い合わせをいただくことにつながりました。経済性、デザイン性、環境性、これにメッセージ性をプラスした商品開発が多くの取引先企業様を巻き込んで、社会へインパクトを与える大きな渦になっていったんだと思います。
※1 「FSC認証」…持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した、「適切な森林管理」を認証する国際的な制度です。認証を受けた森林からの生産品による製品にはFSCロゴマークがつけられます。
※2 「BONSUCRO認証」…持続可能なサトウキビを促進するために2008年に設立された組織が定める認証制度。温室効果ガスを定量的に測る数少ない認証の一つです。
国内の事業継承問題に目を向けると、後継者不在企業は実に61.5%以上にのぼり、社長の平均年齢は60.3歳(2021年 帝国データバンク調べ)というデータが発表されています。祖母から母に受け継がれた水の製造事業は、現在も大分を拠点に継続していますが、ハバリーズの本社は京都に置いています。私は既存の家業をそのままの形で引き継ぐよりも、新たなブランドを構築して新会社を設立するゼロスタートの道を選びました。新規起業の方が行政や銀行のサポートを期待でき、アドバンテージがあると考えたからです。
京都市では、スタートアップ企業を奨励するコンテストが行われていたり、他の企業とのマッチングを促す催しが開かれていたりします。私たちもチャンスがあれば積極的に参加し、メディア関係者をご紹介してもらうなど、さまざまな分野の方々とのパイプづくりに努めてきました。もともと私たちは、少数精鋭の経営で意思決定もスピーディです。水の製造に関する知見やノウハウがありましたし、今の時代にあったスリムでファブレスな企業経営に努めました。今ある経営資源を最大限に活用し、足りないところは外部の方々と協働して目の前の課題に取り組む。そういった面で行政の皆さんの助言やサポートを生かすことができたと思います。
また、東京都が推進されている「HTT」も素晴らしい試みだと思います。エネルギーコストを削減し、脱炭素経営を目指すことで行政の手厚い支援が受けられるのですから、これを活用しない手はありません。それが、私たちも直面した事業継承の問題をクリアするきっかけになったり、皆さんの企業価値、製品価値を高めるブランディングにもつながっていけばなおいいですね。
最初の一歩は「補助金や助成金がもらえるから」「コストを減らし利益を追求したい」というモチベーションでも、私はいいと思います。HTTに参画することで、あらためて環境問題に関心を持ち、設備投資や助成を受ける過程で、さまざまなナレッジや情報を吸収することができます。その蓄積がやがて自社の企業価値を高める武器になるでしょう。「地球環境の保全に資する企業となる」といった大きな目標を掲げることも大切ですが、自分たちの事業活動を維持し、成長してゆくことが肝要です。それそのものがサステナビリティといえます。
私にとっての「水」は、たまたまそこにあったもの。水源を持ち、水の製造事業を行っていたというファミリールーツがあっただけで、皆さんにとっても、それぞれに「何か」があるはず。事業継承や環境ブランディングをきっかけにして、一社でも多くの企業様がSDGsに取り組んでいただけるような世の中になることを願っています。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
付加価値創造とともに、持続可能な社会を目指して
【セミナーレポート】
株式会社ハバリーズ 代表取締役社長
矢野 玲美(やの れみ)氏
2023/4/20
事業継承をきっかけに、徹底した環境ブランディングによって新たな付加価値の創出を実現された、株式会社ハバリーズ代表取締役・矢野玲美さん。紙パック包装のナチュラルウォーター「ハバリーズ」で・・・
事業継承をきっかけに、徹底した環境ブランディングによって新たな付加価値の創出を実現された、株式会社ハバリーズ代表取締役・矢野玲美さん。紙パック包装のナチュラルウォーター「ハバリーズ」で一躍時の人となった矢野さんが、4月20日のHTTセミナーで語られたお話には、今、私たちが取り組むべき脱炭素化経営と、事業効率化やコスト削減を越えた業績拡大の大いなるヒントが散りばめられていました。
京都で生まれた私は、幼い頃から母の仕事を間近に見ていました。母は大分県出身、宇佐市の羽馬礼(はばれい)という地域を中心に複数の水源を所有し、ミネラルウォーターの製造・販売を手掛けてきました。事業の内容は、ホテルやドラッグストアなどが主なクライアントとなり、その相手先のブランド名でペットボトルの水を製造するOEMがメイン。営業は代理店、販売は取引先に委ねるという完全な製造業が主体で、常に1円以下の価格競争が付いてまわり、お客様からお値引きのご相談があると応じるほかなく、あまり公平性があるとはいえない事業スタイルではと感じていました。
水は人にとってなくてはならないものですが、その価値はとても曖昧です。
羽馬礼の湧水がどんなに優れた天然水であっても、おいしい水は他の地域でも産出されています。あとは価格勝負。しかも日本は欧米とは異なり「水はタダ」という感覚がいまだに根強い。おぼろげながら、やがては私がこの家業を受け継ぐんだろうなと考えてはいましたが、正直、水ビジネスにはネガティブなイメージしか持っていなかったんです。
大学卒業後、私は技術系商社に入社しました。海外を飛びまわる中で、ある日「紙パックで包装された水」を見つけたんです。その当時、紙パックは日本では見かけないマテリアルでした。社会全体が脱プラスティック、カーボンニュートラルを叫んでいる今、環境問題を語り合う国際会議の場で、なぜかテーブルの上にペットボトルの水が並んでいることに違和感を覚えてもいました。
時代が変わり、省エネ、再エネ、脱炭素化に取り組んでいることが企業活動の評価につながり、今やそれが株価にも結びついています。この状況を逆手に取って水ビジネスを始めようと宣言したら、周囲の方々からは「この業界は厳しい」「事業継承の魅力に乏しい」「せっかく商社に勤めているのにもったいない」など、反対意見が多々寄せられました。でも、大分県が誇る大切な水源を守り、それを未来へ残してゆくために、業界を変え、健全な事業化を進めていく。この信念を強みにして、第二創業を推し進めようと決意したのです。
2020年6月、コロナ禍の真っ只中にハバリーズを立ち上げました。平時でさえ難しいのに「よりによって、なんでこの時期に?」という声があったのも事実です。しかし、私の中には、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて「サステイナブルな紙パックのナチュラルウォーターを世に出したい」という強い思いがありました。
商品開発にあたってはいくつかのポイントがあります。まず、経済合理性に適うかどうか。少々高くても手の出せる価格帯でないとその商品は売れません。また、商品に込めた理念やストーリーも重要です。水源が羽馬礼地区にあることからパッケージには羽の生えた馬、つまりペガサスをデザインしました。これはペガサスのように優雅でありながら、社会に輝きをもたらす存在でありたいという願いが込められています。ちなみにセミナーでもご質問を受けましたが、デザインや制作物に関する世界観については当事者である私たち自身が中心となって、細部に至るまで考えています。
サイクル循環が100%可能であることにもこだわりました。包装本体がFSC認証(※1)取得済の紙であるだけでなく、キャップもBONSUCRO認証(※2)を取得したサトウキビ由来の植物性ポリエチレンを使用しています。ただただ「自然に優しい」を謳っても独りよがりなメッセージにしかなりませんから、国際機関が定める認証を取得しています。
世界が取り組むべきSDGs(持続可能な開発目標)にフィットした認証取得は、例えば融資をお願いする金融機関から求められることも多いんです。
同時に紙のパッケージは、ペットボトルやアルミ缶に比べて気候変動への負荷が最も低いとされていて、ゴミの減資率が78%以上に。廃棄面でもコスト削減が期待できます。さらに、法人向けに開発したリサイクル回収ボックスのスキームも、有名ホテルグループをはじめ多くの企業様から支持をいただいています。まず、ハバリーズの水とともに再生紙で作られたトイレットペーパーを購入していただき、その梱包用のダンボールに飲み終えた水の紙パックをまとめ、指定の工場に送料無料で送り返していただくというしくみです。これによって、紙から紙へのリサイクルが見える化できるようになりました。
こうした一つ一つの付加価値が積み重なり、メディア戦略が功を奏したことも大きいですね。多くの雑誌やTVなどのメディアがハバリーズの水に注目してくださり、環境問題に敏感な世界のハイブランド各社からお問い合わせをいただくことにつながりました。経済性、デザイン性、環境性、これにメッセージ性をプラスした商品開発が多くの取引先企業様を巻き込んで、社会へインパクトを与える大きな渦になっていったんだと思います。
※1 「FSC認証」…持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した、「適切な森林管理」を認証する国際的な制度です。認証を受けた森林からの生産品による製品にはFSCロゴマークがつけられます。
※2 「BONSUCRO認証」…持続可能なサトウキビを促進するために2008年に設立された組織が定める認証制度。温室効果ガスを定量的に測る数少ない認証の一つです。
国内の事業継承問題に目を向けると、後継者不在企業は実に61.5%以上にのぼり、社長の平均年齢は60.3歳(2021年 帝国データバンク調べ)というデータが発表されています。祖母から母に受け継がれた水の製造事業は、現在も大分を拠点に継続していますが、ハバリーズの本社は京都に置いています。私は既存の家業をそのままの形で引き継ぐよりも、新たなブランドを構築して新会社を設立するゼロスタートの道を選びました。新規起業の方が行政や銀行のサポートを期待でき、アドバンテージがあると考えたからです。
京都市では、スタートアップ企業を奨励するコンテストが行われていたり、他の企業とのマッチングを促す催しが開かれていたりします。私たちもチャンスがあれば積極的に参加し、メディア関係者をご紹介してもらうなど、さまざまな分野の方々とのパイプづくりに努めてきました。もともと私たちは、少数精鋭の経営で意思決定もスピーディです。水の製造に関する知見やノウハウがありましたし、今の時代にあったスリムでファブレスな企業経営に努めました。今ある経営資源を最大限に活用し、足りないところは外部の方々と協働して目の前の課題に取り組む。そういった面で行政の皆さんの助言やサポートを生かすことができたと思います。
また、東京都が推進されている「HTT」も素晴らしい試みだと思います。エネルギーコストを削減し、脱炭素経営を目指すことで行政の手厚い支援が受けられるのですから、これを活用しない手はありません。それが、私たちも直面した事業継承の問題をクリアするきっかけになったり、皆さんの企業価値、製品価値を高めるブランディングにもつながっていけばなおいいですね。
最初の一歩は「補助金や助成金がもらえるから」「コストを減らし利益を追求したい」というモチベーションでも、私はいいと思います。HTTに参画することで、あらためて環境問題に関心を持ち、設備投資や助成を受ける過程で、さまざまなナレッジや情報を吸収することができます。その蓄積がやがて自社の企業価値を高める武器になるでしょう。「地球環境の保全に資する企業となる」といった大きな目標を掲げることも大切ですが、自分たちの事業活動を維持し、成長してゆくことが肝要です。それそのものがサステナビリティといえます。
私にとっての「水」は、たまたまそこにあったもの。水源を持ち、水の製造事業を行っていたというファミリールーツがあっただけで、皆さんにとっても、それぞれに「何か」があるはず。事業継承や環境ブランディングをきっかけにして、一社でも多くの企業様がSDGsに取り組んでいただけるような世の中になることを願っています。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
大東 威司(おおひがし たかし)氏
2023/3/23
3月23日に行われたセミナー講演「中小企業の脱炭素化に向けた取組と実践事例」の振り返りとして、脱炭素化の流れや中小企業が脱炭素化に取り組むメリット、具体的なアクション、実践事例などについて・・・
3月23日に行われたセミナー講演「中小企業の脱炭素化に向けた取組と実践事例」の振り返りとして、脱炭素化の流れや中小企業が脱炭素化に取り組むメリット、具体的なアクション、実践事例などについて、講師の中小企業診断士、大東威司さんにお話を伺いました。
2015年のCOP21ではパリ協定(産業革命以前に比べて2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)が採択され、CO2排出量の削減に向けた長期目標に対して、主要排出国を含む多くの国が足並みを揃えたことに大きな意義があると思います。具体的な目標が出揃ってきたところで、今は日本を含めた各国がちゃんと行動できるか否かが試されているのだと思います。
パリ協定では、気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオと整合した、企業が取り組む温室効果ガス排出削減目標としてSBT(Science Based Targets)が設定され、日本では中小企業向けとして2030年に目標を定めた独自のガイドラインが設定されました。SBTでは削減すべき温室効果ガスを、Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)、Scope3(Scope1,2以外の間接排出)の3つのカテゴリーに分類していますが、中小企業向けSBTでは主にScope1と2の排出量を2018年比で30〜50%削減することを目指しています。
東京都は日本の首都であり、人口も企業の経済活動も桁外れに大きく、都市というより国に近い経済規模があります。当然、CO2の排出量も多いわけで、大都市の責務として1.5℃目標を追求し、2019年には「ゼロエミッション東京戦略」を策定、2021年には取組を加速して都内CO2排出量を2030年までに50%削減する「カーボンハーフ」を表明しました。そうした流れのなかで、2021年1月、全国レベルで電力需給がひっ迫する事態や、ウクライナ・ロシア情勢による世界的なエネルギー不足が生じたこともあり、CO2排出削減だけではなく、いまはエネルギーの安定確保が待ったなしの状況なのです。
こうした背景もあって昨年の2022年4月には節電や省エネの取組として「HTT=電力を減らす(H)、創る(T)、蓄める(T)」のキャンペーンがスタートしました。印象深いのは、昨年12月の都議会で太陽光パネル義務化条例が成立したことで、建築物に対する脱炭素化を進める大きな一歩であり、東京都の強い意気込みを感じます。東京には非常に多くの建物がありますしオフィスビルや工場だけでなく住宅からのCO2排出も多いため、建築物の脱炭素化に注目したのはよい観点だと思いました。
日本の太陽光発電の普及は欧米に比べて後れを取っていましたが、東京都の動きをみて川崎市でも義務化を決定するなど、全国的な動きに繋がる大きな流れをつくったといえるでしょう。
脱炭素化を入り口に考え、構えてしまう人も少なくないのですが、そうではなくて、純粋に自社の利益追求の視点で考えていただきたいのです。まずHTTの1番目のH(電気を減らす)についてですが、省エネでCO2を削減するということは光熱費を減らすことであり、製造原価や管理費を節約する分、そのまま利益が上がるということです。たとえば省エネによるコストカットで20万円の利益が生じた場合、同じ利益を営業活動で得ようと思うと、かかる経費を勘案すれば数百万円の売上アップが必要になります。つまり、脱炭素化の取組は、営業活動より効率よく利益を上げられる可能性が高いということです。
次に2番目のT(創る)については、太陽光発電を導入することでクリーンなエネルギーを創り出すと同時に、余ったエネルギーを蓄電しておけば停電などの非常時にも速やかに事業復帰ができるなど、リスク対策にも繋がります。東京は直下型地震などの自然災害や、電力需給のひっ迫など、さまざまなリスクにさらされていますので、非常用電源の確保には大きなメリットがあると思います。
また、脱炭素化経営は環境問題に積極的に取り組む企業としてイメージアップにもなるので、人材確保の上でも有利です。今の若い人は環境問題について義務教育で学んでいるので、環境問題に関心の薄い企業というのは就職先として対象外と考える傾向にあります。
そして何より大事なのは、銀行などの融資条件に環境問題への取組が求められつつあることです。有価証券報告書などに環境問題の取組が明記できないようだと、将来、融資を受けにくくなる可能性もあります。取引先からの評価も同様であり、脱炭素化の取組を条件とする企業が増えているので、対策を怠るとサプライヤーとして選ばれなくなる恐れもあります。
脱炭素化を進める行動指針としては、先に説明したSBT(Science Based Targets)の目標を基準に考えるとよいと思います。まずScope1については、自社で使う熱源エネルギーによる直接排出の削減にあたりますので、ボイラーや暖房などに使っているガスや化石燃料、電気の使用量を減らしましょう、ということです。Scope2は、余所から供給されたエネルギーによる間接排出を削減することですので、いま使っている電力などを太陽光発電など再生エネルギーにスイッチしていくことになります。Scope3は、原材料の仕入れなど事業活動の上流における排出から、製品の使用や廃棄など下流における排出までが含まれ、少し複雑になっています。
取り組む手順としてはScope1、2から、まずは自社で使っているエネルギーの量を把握し、プロセスの改善、設備更新などで電気の使用量をどこまで減らせるかを考えるのが最初のステップになると思います。
東京都には省エネ設備導入や運用改善を対象とした支援事業(助成制度)が数多くあり、クール・ネット東京などを通じて申し込むことが可能です。窓口探しで戸惑うようであれば、まずは東京都中小企業振興公社やHTT実践推進ナビゲーター事業(本事業)に問い合わせるとよいでしょう。
私が携わっている東京都中小企業振興公社の「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業」では、まずは相談窓口を設けて、その場でわかる範囲でアドバイスをお返ししています。そこでは、将来に向けた事業の展望や夢を伺ったうえで、経営戦略の一環として省エネ対策をどう埋め込んでいくかなどをお話ししています。実際に取組を進める場合は、現地調査による準備支援の段階を経た後、ハンズオン支援といって、経営戦略・ロードマップ策定のサポートなどを行いながら、最長2年半にわたって継続的に伴走支援を行うことになります。
セミナーでもお伝えしたパン工場の例ですが、「バリューチェーンの中で選ばれる企業になる」という社長の目標があって、取引先大手企業から要請されたCO2削減の取組を行う期限に先んじて、「ものづくり補助金」を利用して既に急速冷凍技術を獲得されていました。ただし、冷凍したパンを保存するスペースがなかったため、工場を拡張して冷凍貯蔵スペースを造り、その上に太陽光発電を載せてCO2削減を図るという、さらなる脱炭素化による経営戦略をたてることにしました。
また、私の地元である板橋区の金属メッキ工場では、古い電源設備を更新することで、脱炭素化の取組を利益追求に繋げた例もあります。工場では高圧電気を使うため変圧器などを納めたキュービクルという設備を設置していますが、40年ぐらい更新していなかったため、電力変換時にかなりの電気ロスが生じていました。そこでキュービクルを更新することで省エネを図ることにしたのですが、板橋区の補助金を利用するなどして1千万円以上かかる投資費用を数百万円に抑えることができました。さらに、更新した設備が変圧器のトップランナー制度の対象であったため、固定資産税が3年間減免される、税制優遇を受けることもできたのです。
このように、老朽化した製造設備を使っている工場などは更新への投資のチャンスだと思います。補助金を使って少ない投資で設備を更新できますし、税制優遇を受けられる可能性もあります。CO2削減とともに光熱費のコストカットにもなりますし、設備更新するにはいいタイミングになるわけです。あくまで理論値ではありますが、この金属メッキ工場の場合は電気代を約40%削減できる計算なので、投資資金を回収するのに必要な期間もかなり圧縮できると思われます。脱炭素化を視野に入れた経営戦略においては、目先の投資額で判断せずに、中長期的な視野で利益に繋げることを考えることが大切です。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
中小企業をますます元気に!
利益追求で脱炭素化経営を
【セミナーレポート】
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
大東 威司(おおひがし たかし)氏
2023/3/23
3月23日に行われたセミナー講演「中小企業の脱炭素化に向けた取組と実践事例」の振り返りとして、脱炭素化の流れや中小企業が脱炭素化に取り組むメリット、具体的なアクション、実践事例などについて・・・
3月23日に行われたセミナー講演「中小企業の脱炭素化に向けた取組と実践事例」の振り返りとして、脱炭素化の流れや中小企業が脱炭素化に取り組むメリット、具体的なアクション、実践事例などについて、講師の中小企業診断士、大東威司さんにお話を伺いました。
2015年のCOP21ではパリ協定(産業革命以前に比べて2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)が採択され、CO2排出量の削減に向けた長期目標に対して、主要排出国を含む多くの国が足並みを揃えたことに大きな意義があると思います。具体的な目標が出揃ってきたところで、今は日本を含めた各国がちゃんと行動できるか否かが試されているのだと思います。
パリ協定では、気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオと整合した、企業が取り組む温室効果ガス排出削減目標としてSBT(Science Based Targets)が設定され、日本では中小企業向けとして2030年に目標を定めた独自のガイドラインが設定されました。SBTでは削減すべき温室効果ガスを、Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)、Scope3(Scope1,2以外の間接排出)の3つのカテゴリーに分類していますが、中小企業向けSBTでは主にScope1と2の排出量を2018年比で30〜50%削減することを目指しています。
東京都は日本の首都であり、人口も企業の経済活動も桁外れに大きく、都市というより国に近い経済規模があります。当然、CO2の排出量も多いわけで、大都市の責務として1.5℃目標を追求し、2019年には「ゼロエミッション東京戦略」を策定、2021年には取組を加速して都内CO2排出量を2030年までに50%削減する「カーボンハーフ」を表明しました。そうした流れのなかで、2021年1月、全国レベルで電力需給がひっ迫する事態や、ウクライナ・ロシア情勢による世界的なエネルギー不足が生じたこともあり、CO2排出削減だけではなく、いまはエネルギーの安定確保が待ったなしの状況なのです。
こうした背景もあって昨年の2022年4月には節電や省エネの取組として「HTT=電力を減らす(H)、創る(T)、蓄める(T)」のキャンペーンがスタートしました。印象深いのは、昨年12月の都議会で太陽光パネル義務化条例が成立したことで、建築物に対する脱炭素化を進める大きな一歩であり、東京都の強い意気込みを感じます。東京には非常に多くの建物がありますしオフィスビルや工場だけでなく住宅からのCO2排出も多いため、建築物の脱炭素化に注目したのはよい観点だと思いました。
日本の太陽光発電の普及は欧米に比べて後れを取っていましたが、東京都の動きをみて川崎市でも義務化を決定するなど、全国的な動きに繋がる大きな流れをつくったといえるでしょう。
脱炭素化を入り口に考え、構えてしまう人も少なくないのですが、そうではなくて、純粋に自社の利益追求の視点で考えていただきたいのです。まずHTTの1番目のH(電気を減らす)についてですが、省エネでCO2を削減するということは光熱費を減らすことであり、製造原価や管理費を節約する分、そのまま利益が上がるということです。たとえば省エネによるコストカットで20万円の利益が生じた場合、同じ利益を営業活動で得ようと思うと、かかる経費を勘案すれば数百万円の売上アップが必要になります。つまり、脱炭素化の取組は、営業活動より効率よく利益を上げられる可能性が高いということです。
次に2番目のT(創る)については、太陽光発電を導入することでクリーンなエネルギーを創り出すと同時に、余ったエネルギーを蓄電しておけば停電などの非常時にも速やかに事業復帰ができるなど、リスク対策にも繋がります。東京は直下型地震などの自然災害や、電力需給のひっ迫など、さまざまなリスクにさらされていますので、非常用電源の確保には大きなメリットがあると思います。
また、脱炭素化経営は環境問題に積極的に取り組む企業としてイメージアップにもなるので、人材確保の上でも有利です。今の若い人は環境問題について義務教育で学んでいるので、環境問題に関心の薄い企業というのは就職先として対象外と考える傾向にあります。
そして何より大事なのは、銀行などの融資条件に環境問題への取組が求められつつあることです。有価証券報告書などに環境問題の取組が明記できないようだと、将来、融資を受けにくくなる可能性もあります。取引先からの評価も同様であり、脱炭素化の取組を条件とする企業が増えているので、対策を怠るとサプライヤーとして選ばれなくなる恐れもあります。
脱炭素化を進める行動指針としては、先に説明したSBT(Science Based Targets)の目標を基準に考えるとよいと思います。まずScope1については、自社で使う熱源エネルギーによる直接排出の削減にあたりますので、ボイラーや暖房などに使っているガスや化石燃料、電気の使用量を減らしましょう、ということです。Scope2は、余所から供給されたエネルギーによる間接排出を削減することですので、いま使っている電力などを太陽光発電など再生エネルギーにスイッチしていくことになります。Scope3は、原材料の仕入れなど事業活動の上流における排出から、製品の使用や廃棄など下流における排出までが含まれ、少し複雑になっています。
取り組む手順としてはScope1、2から、まずは自社で使っているエネルギーの量を把握し、プロセスの改善、設備更新などで電気の使用量をどこまで減らせるかを考えるのが最初のステップになると思います。
東京都には省エネ設備導入や運用改善を対象とした支援事業(助成制度)が数多くあり、クール・ネット東京などを通じて申し込むことが可能です。窓口探しで戸惑うようであれば、まずは東京都中小企業振興公社やHTT実践推進ナビゲーター事業(本事業)に問い合わせるとよいでしょう。
私が携わっている東京都中小企業振興公社の「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業」では、まずは相談窓口を設けて、その場でわかる範囲でアドバイスをお返ししています。そこでは、将来に向けた事業の展望や夢を伺ったうえで、経営戦略の一環として省エネ対策をどう埋め込んでいくかなどをお話ししています。実際に取組を進める場合は、現地調査による準備支援の段階を経た後、ハンズオン支援といって、経営戦略・ロードマップ策定のサポートなどを行いながら、最長2年半にわたって継続的に伴走支援を行うことになります。
セミナーでもお伝えしたパン工場の例ですが、「バリューチェーンの中で選ばれる企業になる」という社長の目標があって、取引先大手企業から要請されたCO2削減の取組を行う期限に先んじて、「ものづくり補助金」を利用して既に急速冷凍技術を獲得されていました。ただし、冷凍したパンを保存するスペースがなかったため、工場を拡張して冷凍貯蔵スペースを造り、その上に太陽光発電を載せてCO2削減を図るという、さらなる脱炭素化による経営戦略をたてることにしました。
また、私の地元である板橋区の金属メッキ工場では、古い電源設備を更新することで、脱炭素化の取組を利益追求に繋げた例もあります。工場では高圧電気を使うため変圧器などを納めたキュービクルという設備を設置していますが、40年ぐらい更新していなかったため、電力変換時にかなりの電気ロスが生じていました。そこでキュービクルを更新することで省エネを図ることにしたのですが、板橋区の補助金を利用するなどして1千万円以上かかる投資費用を数百万円に抑えることができました。さらに、更新した設備が変圧器のトップランナー制度の対象であったため、固定資産税が3年間減免される、税制優遇を受けることもできたのです。
このように、老朽化した製造設備を使っている工場などは更新への投資のチャンスだと思います。補助金を使って少ない投資で設備を更新できますし、税制優遇を受けられる可能性もあります。CO2削減とともに光熱費のコストカットにもなりますし、設備更新するにはいいタイミングになるわけです。あくまで理論値ではありますが、この金属メッキ工場の場合は電気代を約40%削減できる計算なので、投資資金を回収するのに必要な期間もかなり圧縮できると思われます。脱炭素化を視野に入れた経営戦略においては、目先の投資額で判断せずに、中長期的な視野で利益に繋げることを考えることが大切です。
何からはじめて良いのか、導入するにはどうしたらいいのか、不明な点等がございましたら、まずはHTTのスペシャリストであるナビゲーターにご相談ください。ご相談は無料で、貴社にとっての最適な方法をご提案させていただきます。詳しくはお電話または下記フォームよりお問い合わせください。
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