株式会社リーテム様

環境にやさしい資源リサイクルを
業務の脱炭素化によってさらに確かなものに。

株式会社リーテム
総務部部長 兼 マネジメント推進部部長補 森田建治様
事業ユニット長 兼 東京事業部部長 市村貴光様

POINT
  • 空調設備の刷新を機に工場のZEB化、さらにはBELS認証5つ星の取得を実現
  • 太陽光パネルの設置でオフィス照明の完全創エネ化、今後は重機の完全EV化を目指す
  • 工場見学会では資源リサイクルの重要性を訴求し、脱炭素イベントへ積極的に参加

産業廃棄物、とりわけ金属の再生に特化し、収集・運搬から一次処理までを担うのが株式会社リーテム様です。資源リサイクル業は、それそのものが循環型社会の構築に不可欠な存在。同社のエコマネジメント力は、自社工場のZEB化、BELS認証(しかも最高評価の5つ星)の取得といったさまざまな取組によって、ますます拡張と深化を加速させています。

人々の暮らしを支え、持続可能な社会を目指す
廃棄物処理という業態

国の都市再生プロジェクトの一環として、東京都が大田区城南島と江東区海の森に整備したのが「東京スーパーエコタウン」です。この地には、厳格な審査によって選抜された先進的リサイクル事業者の施設が集まり、首都圏における廃棄物問題の解決や環境産業の育成が現在進行形で行われています。

総務部部長として同社の広報活動を担う森田さんは、この事業そのものが社会貢献につながるものだと語ってくださいました。

森田部長「私どもリーテムは、創業100年を超える資源再生事業の老舗企業です。従前から稼働してきた茨城県の水戸工場でも、かねてより脱炭素化には積極的に取り組んできました。一方、2005年に竣工したリーテム東京工場は、ここ『東京スーパーエコタウン』の一翼を担う最新鋭高性能工場として安全で安心な高効率リサイクル処理を行っています。もちろん売上を上げていくという企業としての命題もありますが、そもそも資源リサイクルそのものが持続可能な社会の実現に役立っているという自負がございます。脱炭素化はその目的と責任を果たすための重要なミッションと位置づけていました」

東京工場に集積される廃棄物は、家庭やオフィスから出る小型家電、OA機器、電子・電気機器、情報通信機器が中心。2013年に小型家電リサイクル法が施行されて以来、スマートフォンやパソコン、日用家電といった廃棄物が増えているそうです。

森田部長「こうした廃棄物には再資源化可能な金属が多分に含まれています。私たちはこの廃棄物の山を〝都市鉱山〟と呼んでいるんですよ。自然の鉱山から資源を採取・精製するのではなく、都市から出たごみの山、つまり都市鉱山から金属を取り出して再生・再利用する。それこそ天然の鉱山に匹敵するほどの資源が得られる〝宝の山〟なのです」

昨年、新紙幣が導入されたのは記憶に新しいところ。偽造防止の工夫が随所に凝らされた新紙幣に対応する銀行のATMや新型自動販売機の普及に伴って、古い機材の廃棄も 多いのではないかと語ります。

取り扱う範囲は多岐にわたり、それぞれに適正な処理が求められます。

森田部長「ただ解体すればいいというものではないのです。たいていの小型家電にはリチウムイオン電池などのバッテリーが内蔵され、そのまま破砕してしまうと発火事故や火災の原因になりかねません。バッテリーはしっかりと分離して絶縁を施し、破砕する本体と分けて管理する必要があります。冷媒にフロンガスが使用されている除湿機や冷風扇などの電化製品も同様です。多くの機器に用いられているプラスチック類は、分別して再利用すれば、原料となる化石燃料(原油)の使用削減に貢献できます。人の目で視認して、一つひとつ丁寧に仕分けなければなりません。この仕事は機械化が可能な部分は6割。あとの4割は人の手に委ねられています」

搬入された各種廃棄物は、鉄スクラップ・非鉄金属混合品・プラスチックなどに分別され、それぞれの二次加工を行う素材メーカーへと出荷されます。

きっかけは空調設備の刷新
工場のZEB化、BELS認証までのあくなき挑戦

では、脱炭素化に向けて具体的にどのような施策が採られてきたのでしょうか。水戸工場と東京工場の責任者である市村事業ユニット長が、取組をはじめたきっかけを教えてくれました。

市村ユニット長「もともとは、工場内の空調設備に不具合が発生したことに端を発します。2005年の操業開始から10数年が経過し、機材の入れ替えに迫られていたんですね。また、この工場自体、実は太陽光パネルが設置できるように設計されていて、以前から設置の計画があったのです。私どもが廃棄物処理に使う破砕機は大量の電力を消費します。ゆえに、工場すべての電力は賄えませんが、オフィス部分の電力は創エネによって補えると考えました。空調機器メーカーさんと機材選定などの協議を続けていくうちに『だったら工場そのものをZEB化し、BELS認証取得を目指してはどうか』という話に辿り着いたのです

BELS認証とは、第三者機関が建築物の省エネルギー性能を評価する認証制度。これを取得することで環境に配慮した建築物であることがアピールできます。

市村ユニット長「具体的には、先述した空調設備の刷新による省電力化、太陽光パネルの設置、さらには照明器具のLED化、窓の断熱化、換気設備の更新など、さまざまなアプローチから脱炭素化のプランを練りあげました。工場のZEB化に際しては、それぞれの機器、建材メーカーさんに助力をお願いし、計画のスタートからちょうど2年ほどはかかったでしょうか。2023年には無事に太陽光パネルの設置が叶い、当初の計画が実現に至りました」

LED化された照明
内側に取り付けた二重窓

しかしながら、その道程にはさまざまな苦労もあったと市村ユニット長は語ります。

市村ユニット長「申請にあたって、まずは現状を把握する必要が生じました。そこで東京都の無料省エネ診断を活用させていただき、専門家のアドバイスを仰いだんです。結果的にこの診断が契機となって、太陽光パネル設置以外の方策にも目を向けることができました。わからないことだらけの状況からのスタートです。データ収集には戸惑いもありましたが、社内に専属チームを組織し、それぞれが学びを得ながら地道に準備を進めました。この計画を後押ししてくれた経営陣の英断もさることながら、他部門のスタッフの献身的な協力もあって、スムーズな情報収集と共有が図れたと思います」

また、実際に各種設備を刷新する際にも、社内外で多様な調整作業を要したともいいます。

市村ユニット長「工場内で工事をしていただく場合の段取りや工期については、各メーカーさんと幾度となくご相談を重ね、あらゆる面でサポートしていただきました。この時に痛感したのは事業者選定の重要性です。例えば、この工場の窓は先進的な意匠で設計されていて、できればそのデザインを損ないたくはなかったんですね。そのことをメーカーさんに相談したところ、内側に二重窓を取り付けて断熱化を図るという策を提案してくれました。補助金申請時の書類作成などを含めて、メーカーさんの提案力や、個別の事情を鑑みた実行力に助けていただきました」

そして、何よりも大きかったのは現場スタッフの理解とコミットメント。「きっと私一人ではなしえなかった」と市村ユニット長は振り返ります。

市村ユニット長「本来業務の自由度が制限されてしまうため、昼間は施工ができないエリアも出てきます。そういった場合、工事は夜間に行われるのですが、必要に応じて当社のスタッフが立ち会わなければなりません。時には交代しながら休日に対応したこともあります。」

脱炭素化の先行企業として
中小企業の皆様へ伝えたいこと

こうしたさまざまな取組が実際にどの程度の費用対効果につながったか。この点は脱炭素化経営を指向される中小企業の皆さんにとって大いに気になるところでしょう。しかし、これは製造業をはじめとする多くの事業者にいえることですが、仕事の受注が増えると機械の稼働率は上がり、自ずと使用電力は嵩んでしまいます。BELS認証を取得した同社においてもそれは顕著で、現在も引き続きデータを蓄積しながら消費電力の推移を見守っているのが現状。今後のさらなる施策を模索し続けているといいます。

森田部長「東京工場の省エネは確実には進んでいます。しかし、私たちの仕事を支えているのは高圧電力で動く巨大な破砕機です。つまり業務が忙しくなればなるほど消費電力量が増えてしまうというジレンマがあります。でも、だからといって歩みを止めるつもりはありません。破砕機の電力はすべて再生可能エネルギーに由来する 非化石証書付き電力に置き換え、工場内で使用するフォークリフトの半数はEV化を果たしました。当初、EVの重機はパワーに欠け、重いもので3トンもある機器を運んだり、移動させたりする当社では運用面で課題が残りました。しかし近年は重機メーカーさんの努力もあってパワー不足が改善されつつあります。当面の目標はフォークリフトの完全EV化です。水素エネルギーの積極活用を推進されている東京都の試みにも興味は尽きません

EV化を目指す工場
2021年に開催された際のメダルの金型とリサイクル基盤

また、他にも目に見える成果としては、工場のZEB化やBELS認証取得が社外PRに貢献しているという点が挙げられます。

森田部長「当社では一般の皆様や子どもたちに、資源リサイクルの大切さを訴求するため、工場見学会を行なっています。また、先日は大田区からお声がけをいただき「おおたクールアクション」における脱炭素関連のイベントや講演に参加する機会が増えてまいりました。脱炭素やSDGsに対する関心と理解が深まり、社会そのものが変化しているということです。私たちはこうした時流を味方につけて、今できることに取り組むことが重要だと考えています」

電子基板などから抽出された金・銀・銅といった金属類。それらが2021年に開催された東京オリンピックでは、選手に授与されるメダルづくりに生かされました。社会インフラを縁の下で支え、環境にやさしい未来を次の世代へと残そうとする同社の挑戦は、これからも続きます。

企業プロフィール

  • 株式会社リーテム
  • 東京都大田区城南島3-2-9
  • 資源のリサイクルおよびリユース、製鋼原料および非鉄貴金属原料の売買など
  • 171名
  • URL https://www.re-tem.com/
  • 2025年7月