なぜ「CO2の見える化」が必要なのか?

なぜ「CO2の見える化」が必要なのか?

当事業が毎月開催している「HTTセミナー」。その登壇者である各講師の皆さんが口を揃えて語るのは、脱炭素の取組のステップで最初に必要となるのは「CO2の見える化」だということです。自社のCO2排出量を把握することがなぜ必要なのか。そもそもどうやってCO2を測ればいいのか。「CO2の見える化」を実行するメリットや、その準備にあたっての留意点などを解説します。

今一度おさらいしておきたい「CO2の見える化」とは?

例えば、自社内で「省エネ対策の推進」を始めようとする場合、現在使用している毎月の「エネルギー使用量の把握」が最優先事項に挙げられます。電気、ガス、水道などの請求書、検診票に記載された数値をまとめることによって、自社のエネルギー使用量をある程度「見える化」することができます。

仮に、過去に遡って1年間の傾向が掴めれば、季節による消費変動も「見える化」できることでしょう。夏や冬に消費の高まりがあれば冷暖房設備に課題があるとわかりますし、こまめな節電によって一定の効果が得られるのか、設備そのものを最新型の省エネタイプに換装すべきかの判断材料にもなります。また、これらのデータを蓄積して対策前と対策後を比較してみることで、その効果を確認することができ、さらなる省エネを推し進めることが可能となります。

「CO2の見える化」もまた、これとまったく同じこと。 サービス業であれば商材の購入や、オフィス・店舗での電力消費、自社車両の燃料消費などが主なCO2の排出源となります。また、製造業であれば、さらに原材料調達や加工の段階で生じる排出量を見極める必要もあります。そこで、自社が排出しているCO2を把握することが第一歩となります。

具体的には、以下の流れで「CO2の見える化」を進めてみてはいかがでしょう。

1. データ収集の仕組みづくり

正しい排出量の測定作業で最も重要といえるのが「データ収集」です。社内のさまざまな部署からいかにして効率的に情報を集められるかが肝。形式を統一したExcelフォーマットを作成して社内に配布したり、社内システムにデータの入力機能を付加したりするなど、情報を一元的に吸い上げる仕組みづくりが急務です。ある程度の初期投資を要したとしても、最初にしっかりと仕組みを構築しておけば、2年目以降は格段にスムーズに。長い目で見れば大きなメリットが見込めます。

2. データ収集の方法は主に2つ

CO2のデータ収集方法は主に「記録を基にした手動・反手動集計」と「ITツールによる計測と集計」があります。手動は上述した「エネルギー使用量の把握」と同じように、エネルギー関連の請求書(電力、ガス、燃料など)のデータを収集し、集約する方法です。一方、高精度で詳細なデータを取得するなら社内設備やエネルギーの消費源にIoTセンサーを設置し、クラウドシステムで一元管理する方法がポピュラーです。また、個人向けのITツールとしては、食事、住居、移動、消費財などに関する質問に答えるだけで、CO2の排出量を簡易的に計算できるアプリやサービスもあります。自社の規模や業態によって、最適なデータ収集方法を選択してみましょう。

3. 収集したデータに「排出係数」を掛けて算定

取組を進めるにあたっては、パリ協定によって設定されたSBT(Science Based Targets 科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標)を基準に考えます。目標レベルは「Scope1」「Scope2」「Scope3」に分けられ、自社の事業活動による排出は「Scope1」、余所から供給されたエネルギーによる間接排出は「Scope2」となっています。
まずは、自社で使っているエネルギー消費量を把握するために「Scope1」「Scope2」からデータを集め、環境省などで公表されている「排出係数※1」を用いて算定します。

※1 環境省のデータベース
温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度/算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html

「CO2の見える化」を終えたら、いよいよ分析へ
どのように削減していくかを、無理なく計画していきましょう

自社の状況を把握したら、その分析作業が待っています。例えば、照明機器で大きなエネルギー消費があるとわかれば、LED電球への取り換えや、社内の働き方改革を推進して夜間業務をできるだけ抑える(省エネに努める)など、より具体性の高い対応策が見えてきます。また製造業であれば、環境負荷の小さい原材料に切り替えるというのも有効な手段でしょう。これまでの方法をあらゆる観点から見直し、エネルギー使用を最適化していくことが、脱炭素経営の実現に寄与するだけでなく、利益追及・コストカットにも繋がっていきます。

CO2排出量の全体像が浮かび上がり、着手すべき対象範囲を整理したら、次はどのように削減していくか戦略を立てていきます。一般的に優先順位の高いアプローチは「できるだけお金をかけずに始められる取組」から。このことは、これまでHTTセミナーに登壇されてきた多くの講師の方々も指摘されています。

従業員の意識改革

脱炭素経営において重要なものに、働くスタッフ一人ひとりの「意識改革」が挙げられます。オフィスの冷暖房の設定温度を適切に調整しながらこまめな消灯を心がける。待機電力を削減するために使用していないオフィス機器の電源プラグを抜く。小さくとも、こうした意識の共有が、やがては大きな効果をもたらします。全員参加の意識を高めるために、経営陣が具体的な削減目標を掲げたり、報奨制度を取り入れたり。社内研修や社内啓発活動を通して脱炭素経営の必要性を周知することなども有効です。

業務の効率化と働き方の見直し

既存のオペレーションの改善がエネルギー消費を抑えることに繋がります。自社の業務プロセスを見直し、無駄な作業や残業を減らすだけでも電力消費量は下がります。とりわけ製造業の場合は、工場や作業場のエネルギー使用量が全体の排出量の大半を占めるケースが多く、ここを最適化することで大幅な削減(=コストダウン)が期待できます。

DXの推進

デジタル技術を活用して業務の効率化を図るDX(デジタルトランスフォーメーション)もまた、働き方改革と同時に脱炭素経営を推進する大きな手段となります。ペーパーレス化によって資料や帳票類の電子化が進めば、紙の使用量や印刷に伴う電力消費を削減できます。また、テレワークやWeb会議などの活用を積極的に取り入れることで、通勤、出張に伴うCO2排出量(と同時に交通費)を抑制できます。

いみじくも、とあるセミナー講師が「初期投資は極力抑えてできることから始める。そこで得た利潤を活用して、設備投資といった次の段階へと深化を図る。それが脱炭素経営への近道です」と語っていらっしゃいました。中長期的に見れば、社員一人ひとりの日常的な改善が大きな効果をもたらすベースとなります。「CO2の見える化」はまさにその初めの一歩。無理なく実践できる小さな行動の積み重ねから、脱炭素を進めていきませんか?

「CO2の見える化」に迷ったら、専門家の知見を得ることも重要

取組に向けた大まかな手順を理解したとしても、なかなか最初の一歩を踏み出すには勇気が要るものです。また、データ収集の面で既存のITツールやソフトウェアを導入するにしても、事業内容や業態によっては効率のよい可視化の方法論や取りまとめ方が変わってきます、どのようなツールの導入が自社に合っているかがわからず、そこで検討が止まってしまうことも珍しくはありません。

そこで活用したいのが専門家のアシスト。東京都には省エネ設備の導入や運用改善を対象とする各種支援事業(助成制度)があり、クール・ネット東京が実施する中小規模事業者を対象とした無料の「省エネ診断」や、同じく無料の「相談窓口」が設けられています。

企業ごとのお悩みや疑問に寄り添い、最適な支援策をご提案する「HTT実践推進ナビゲーター」もその一つ。
「CO2の見える化」についてのご相談はもとより、HTT(電力をへらす、つくる、ためる)を実践したい都内中小企業の皆さんを無料でサポートしています。

>>支援内容の詳細はこちら
>>お問合せはこちら