ナビゲーターインタビュー
浜副博昭さんnavigator

ナビゲーターインタビュー
浜副博昭さん



HTT(電力をへらす・つくる・ためる)の意義と、脱炭素に関するさまざまな支援策をご案内するのがHTT実践推進ナビゲーターの大切な仕事です。今回ナビゲーターインタビューにご登場いただいたのは、長年営業職に就き、お客様とのコミュニケーションを続けてきた浜副博昭さん。かねてから関心の高かった社会問題の解決に携われることの歓びと、相談者様に寄り添う日頃の活動について伺いました。

異業界からHTT実践推進ナビゲーターへ
この仕事に誇りを持って取り組んでいます

HTT実践推進ナビゲーターとして活躍されている浜副さん。もともとは酒類業界の大手メーカーで営業職を務め、商品企画、販促企画、キャンペーンや展示会の企画立案、消費者動向の調査などを手がけてきました。しかし、人生100年時代。新たな分野に挑戦したいと考え、人と関わる仕事、そして前々から強く興味を抱いていたSDGsや社会貢献に資する仕事へのキャリアチェンジへと踏み切りました。

浜副「これまでのモノを中心としたご提案から、企業様のお悩みをすくいあげる仕事への転身です。日々勉強しながらも、以前から携わりたかった社会課題の解決をお手伝いできる点に、魅力とやりがいを感じています」

そもそもナビゲーターというお仕事は、どのような流れで進められるのでしょう。

浜副私たちナビゲーターはHTTの案内役です。HTTにご興味を持ってお問い合わせいただいた企業様や、架電ナビゲーターによる電話案内に関心を持ってくださった企業様へ、HTTの周知や啓発を行い、HTTにまつわるさまざまな支援策をご紹介しています。もちろん課題解決にはそれぞれの分野や東京都の各事業に精通した専門家がいて、そういった方々にお繋ぎする、いわば橋渡し役を担います。どのようなスタンスで各課題に向き合っていくべきかを先導させていただく大事な役割があると考えています」

しかし、浜副さんはあることに気づいたといいます。それは、ナビゲーターの仕事が単なる橋渡し役ではないということです。

浜副「企業様の数だけ課題があると申し上げても過言ではありません。個人事業主から社員数が100名200名を超える規模の会社まで、都内には約44万社の中小企業が存在しています。置かれている環境や考え方も違えば、取組に対する温度差もあり、『包括的にHTTの話を聞きたい』というものから『具体的に施策に取り組みたい』というものまで多岐にわたります。ご相談企業が何に関心を持たれていらっしゃるのか、どのようなご提案が可能かを、事前に確認したうえでご訪問させていただいています」

実際に企業へ伺う際は、業種・業態はもとより、企業規模、事業理念やビジョン、自社ビルなのかテナントか、支店、支社があるか否かなどをチェックし、時にはエネルギーコストの削減や脱炭素化に向けた取組の道筋を、事前に調べあげた情報をもとにシミュレーションすることもあるのだと語ります。

浜副「貴重なお時間を割いていただくわけですから、下調べは入念に行います。とはいえ、情報提供に執心してばかりでは肝心のご相談企業のニーズや思いを汲み取ることはできないでしょう。あくまでも傾聴の姿勢が大切だと思っています。ご相談企業が決して受け身にならないよう、信頼関係を構築させていただく意味での情報収集を心がけています

「何から始めればいいのか?」に、
明確なルートを設け、その先を照らすのが役割

一社でも多くの中小企業の皆様にHTTの意義を知っていただく。その使命を携えながら各企業を訪問する浜副さんが、事業者の皆様に配布されているという一枚の資料を見せてくれました。そこには、ゼロエミッション東京を実現するための5つの重点方針が綴られていました。

  1. 1、再生エネルギーの実装加速化
  2. 2、省エネルギーの最大化
  3. 3、水素エネルギーの社会実装に向けて取組を加速
  4. 4、ZEVの普及促進
  5. 5、持続可能な資源利用と良質な都市環境の実現

浜副「私が重要なことの一つと考えているのは、省エネの最大化です。これを行うには、まず現状の電力使用量や電気代の可視化が不可欠です。ご相談企業の皆様にお会いすると、補助金や助成金の活用だけに目を向ける方々がいらっしゃいます。もちろん東京都が用意した多様な助成金事業などを上手に用いて新型の空調設備を導入したり、断熱窓を設置したりすることは、脱炭素経営に向けた素晴らしい取組の一つに挙げられます。しかし、設備をかえることがゴールではありません。東京都の取組を深くご理解いただいて、ご相談企業それぞれのスタートとゴールを見極めていくためのお手伝いをさせていただいています」



エアコンの設定温度を1℃下げるだけでもいいですし、エレベーターを使わず階段を使うことでも貢献できる。前職の酒類業界において飲食店での食品ロスや廃棄問題を目の当たりにしてきた浜副さんは、モノの再利用や有効活用を心がけることも持続可能な社会の実現への重要な取組だと語ります。

浜副「日本古来からある〝もったいない〟の精神ですね。使わない電気を消す、モノを大切にして長く使い続ける。そういった小さな工夫の積み重ねが、やがて大きな波をうねらせていくきっかけになるのだと思います」

時を経るごとに高まっていく強い意識
この思いを企業の皆様と共有したい

また、ナビゲータを担うようになって浜副さん自身にも嬉しい変化があったといいます。それは、自らの仕事に対する誇りが徐々に増し、社会に貢献しているという充実感です。


浜副「毎朝、新聞を読んでいると『こんな取組が始まっているんだ』、『こうした技術が実用化されているんだ』といった発見があります。一つ一つは小さなトピックスですが、もしかしたらこれから出会うことになるご相談企業に役立つ話題かもしれません。そういった情報の数々を日々スクラップしながら、世の中の動向を注視し、それを仕事としてできていることにも喜びを感じますね」

浜副さんが日頃から広げているアンテナは社会情勢の推移にも敏感です。コロナ禍の収束によって落ち込んでいた経済活動の正常化が進み、これからマイナスをプラスに変えていこうという気運が高まりつつある現在、このままエネルギー価格が高騰した状況が続けば、今後の事業発展の足枷になっていくであろうことは容易にイメージできます。今だからこそ電力削減に取り組んでいくことが必要であり、脱炭素化を早期に始めたという「優位性が得られるチャンス」になるのだと浜副さんはいいます。

浜副「東京都の支援策の中には伴走型のハンズオン支援もあります。ぜひ、こうしたサポートを味方につけて、自社の脱炭素化を少しずつでも前へ進めていただきたい。それに脱炭素経営はボランティアではありません。経済的な利益獲得と社会的意義の両立を目指すCSV (Creating Shared Value)です。決して他人事と捉えずに、事業方針と脱炭素経営の両立を実現していただきたいですね」

また東京都では『HTT取組推進宣言企業』へのご登録を促進しています。これは、都内に本社または事業所を置く企業や団体を対象に、さまざまなHTTの取組を行っていることを表明してもらうというもの。登録企業には特典として登録証が発行される他、都の中小企業制度融資の対象 になり、優良な取組には表彰も予定されています。

浜副「こうした制度を積極的に活用することで、お取引企業をはじめとするステークホルダーの皆様から評価され、SDGsに敏感な若い方からの支持を得ることにつながるでしょう。きっと既存の事業に好影響をもたらし、優秀な人材を獲得することにも繋がります。私たちはこうした東京都の取組もご案内しています」

ナビゲーターという仕事を通して中小企業の皆様をお支えすることが、次世代に残すべき日本の美しい四季や自然、よりよい社会環境を守っていく一助になれば……。浜副さんは、東京都が掲げるHTT、「電力をへらす・つくる・ためる」が皆様の企業価値を高め、企業文化として育まれてゆくことを願っていると語ってくれました。

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