株式会社ヨシザワ様

中小企業診断士の伴走支援と補助金の活用で、
赤字体質を脱却し経営改革ができました。

株式会社ヨシザワ
代表取締役 吉澤伸弥様

POINT
  • 補助金や伴走支援制度の積極的活用で、経営改革を実現
  • LED照明への換装や営業車をハイブリッド車へ替えることで、「電力をへらす」を実現
  • 水素ステーションや水素運搬船など、水素関連事業も積極的に手掛けている

今回ご紹介するのは、金属切削加工業の株式会社ヨシザワ様。補助金や伴走支援制度を積極的に活用して経営改革を進めた代表取締役の吉澤さんにお話を伺いながら、脱炭素経営にも役立つ公的支援の活用方法を探ります。

一社依存から抜け出すために、
補助金活用で新たな機械導入をめざす

日本有数の「ものづくりのまち」として知られる大田区で1941年に創業。以来、半世紀を超えて精密機械や生産設備の部品づくりに携わってきた株式会社ヨシザワの三代目として、吉澤伸弥さんが事業を引き継いだのは12年前のことでした。当時、大手メーカー一社に売上を依存していたヨシザワは、リーマンショックの煽りで発注が止まり、倒産寸前の状態だったといいます。

吉澤代表「会社をたたむか、お前が借金ごと引き継ぐか、どっちがいいんだ? そう言われました。子どもの頃から自分が継ぐものだと教え込まれていましたし、迷いはなかったですね。うちの一番の問題は、一つのお客さんに依存していたことなんです。当時は液晶テレビの仕事に寄りかかっていましたが、その仕事がストップした途端に立ちゆかなくなった。私が引き継いだ後も景気のいい半導体関連のお話をいただくこともありましたが、うちの規模だと1点請けるだけで手一杯になっちゃう。営業しなくても仕事がくるので楽なんですけど、液晶テレビと一緒でブームが終われば仕事もおしまいですから。もう一社依存はしない、そう心に決めて全部お断りしていました。うちは腕のいい職人さんもいて技術力には自信があったので、必死になって営業してまわり小さな仕事も引き受けて、少しずつ盛り返していきました」

営業努力の甲斐あって経営の危機は脱したものの、当時のヨシザワは借入金の利息を払うのが精一杯の状態でした。それでも一社依存はせず、少量でも多品種の仕事を請け負う体制づくりを目指すため、吉澤さんは補助金活用による新たな設備の導入を試みます。

吉澤代表「当時は借入金の利息だけを返している状態で投資する余裕がなかったのですが、補助金制度を使えば新しい機械を入れられると知ってチャレンジしてみたんです。提出書類は自分でつくりましたが、出しても、出しても採択されずに落ちるんです。そんなことを4、5回も繰り返していました」

補助金と伴走支援の活用を通じて
5年、10年先を見越した事業計画が可能に

長らく補助金申請に苦戦していた吉澤さんですが、ついには「ものづくり補助金」に採択され、新しい機械設備の導入に成功します。「ものづくり補助金」とは中小企業を対象に設備投資を支援する制度で、申請に際しては事業計画書の提出が求められ、その内容は慎重に審査されます。採択に辿り着く転機となったのは、政策金融公庫から借り入れる際に活用した、6カ月にわたる伴走支援制度でした。事業者に寄り添う中小企業診断士の的確なアドバイスにより、補助金を活用した経営改革の道筋が見えてきたといいます。

吉澤代表「中小企業診断士の先生からは、まずは返済計画を見直して赤字から脱却し、担税力のある会社になることが先決だといわれました。補助金制度もそうですが、その先生に6カ月にわたって指導していただける伴走支援も、税金によってまかなわれているわけです。税金を納める力をつけて、税金でつくられている補助金や支援制度をしっかり活用する、そういう、公的支援制度の根本を教えていただきました。第三者の視点で経営を見直す大切さを知ることで、思い切って借入金を精算することもできて、『ものづくり補助金』にも採択されました。そこがうちにとって本当のリスタートだったと思います」

また、補助金活用で申請書類を書き続けたことで、事業計画を練り直す習慣ができたのも大きな収穫でした。「それまでは2ヶ月先まで仕事が入っていれば満足していたのですが、5年後、10年後を見据えた経営を考えられるようになりました。これも中小企業診断士の先生に教えて頂いたことです。以前は銀行から催促されて事業計画書を作っていましたけど、今は自分から定期的に作り替えて押し売りみたいに配って歩いています」と、吉澤さんは笑いながら話します。

その甲斐あってか、これまでに「ものづくり補助金」に3回、「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」に3回、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」に2回、「事業再構築補助金」、など、数々の補助金申請に採択され、新たな工作機械を次々と導入。立型マシニングセンターだけでも加工サイズの違いで10台、旋盤やワイヤー放電加工機なども揃えて全18台となり、あらゆる要望に応えられる体制を整えました。

吉澤代表「外注に頼ることなく、小さな物から大きな物まで社内で作れるよう、千差万別の機械を揃えようと思いました。例えば、お客様が10点の品物について相見積もりを取った時、7点までは見積もりを返せる会社はいっぱいあると思います。でも、うちは10点全部の見積もりを返せる会社でありたい。他ではできなくても、ヨシザワだったらできる。そういってくださるお客様の期待に応え続けていきたいんです」

水素社会実現の一助となるよう、
熟練の職人と若い技術者の力を尽くす

サーフィン好きで週末になると海へ出かけるという吉澤さんは、海を愛する心から、温暖化や環境問題への意識もお持ちです。仕事では、営業車をハイブリット車に変え、工場の水銀灯照明をLED化するなど、HTTに繋がる活動にも積極的に取り組んできました。また、水素関連企業に勤めるサーファー仲間の縁で、加工の難しい特殊素材の製品製作を手がけ、水素事業に関わる仕事も請け負うようになりました。

吉澤代表「水素環境に耐えうる硬い金属で、それまで外注していた工場ではギブアップして作れなかったそうです。他ができないのになんでできるんだ? って驚かれましたよ。それがなぜ可能かといえば、機械だけじゃない、うちには熟練の職人から若く優秀な技術者までいて、技術がきちんと受け継がれている。つまり、多種多様な機械設備と腕のいい技術者の両方が揃っているからなんです」

これを機に加工技術の高さを見込まれ、水素ステーションや水素運搬船など水素事業関連の受注が増加。水素事業の推進はカーボンニュートラル実現に向けた東京都の重要施策でもあり、今後も売上の拡大が期待されそうです。また、水素関連の仕事に携わるようになって、脱炭素の意識がより高まったという吉澤さん。昨年には節電対策と働く環境の整備を兼ねて、大田区の助成金を活用して工場内の空調設備を更新したといいます。このたびはHTT実践推進ナビゲーターの訪問を機に、HTTや脱炭素化に向けた取組を行う企業として「HTT取組推進宣言企業」にもご登録いただき、脱炭素への意気込みをお示しくださいました。

吉澤代表「HTTの、つくる、ためる、についても、太陽光発電や蓄電池を設置したいと思っているのですが、建物の耐久性やスペースの問題などで今のところは設置できずにいます。ペロブスカイト太陽電池などの開発も進んでいますから、いつかは設置できるだろうと期待しています。 将来的には、営業車として水素自動車と水素トラックを入れたいですね。実現するには資金的な問題もありますが、水素ステーションを増やすなど社会環境の整備が何よりの課題でしょう。少しでも早く水素社会が実現するためにも、ヨシザワでつくった部品がお役に立てたらと願っています」

助成金事業のほか、伴走支援や税制優遇など、東京都には脱炭素経営に取り組む中小企業のための公的支援が多数あります。株式会社ヨシザワ様のように、第三者である専門家の意見が経営改革の道標になるケースも多数あります。まずはHTT実践推進ナビゲーターにご相談ください。

企業プロフィール

  • 株式会社ヨシザワ
  • 東京都大田区中央8-41-8
  • 精密部品機械加工、各種生産設備部品機械加工
  • 28名
  • http://www.4438.co.jp/company/
  • 2024年8月