的確なアドバイスと迅速なレスポンス。
心強い味方を得たような気持ちになりました。
ホテルエミシア東京立川
総支配人 金田勲様、業務部 業務部長 藤倉雄次様、業務部 松浦生男様

今回ご紹介するのは、立川駅近くにある宴会場やレストランを備えた宿泊施設、ホテルエミシア東京立川様。省エネやSDGsに関して以前から取り組んでいたことや、HTT実践推進ナビゲーターとの出会いから始まった支援策活用に至るまでのストーリーを伺いました。
コロナ禍の逆風を経て、
次なる課題はエネルギーコストの削減に
JR立川駅近くにあるホテルエミシア東京立川は、全国に展開するスマイルホテルをはじめ、シティホテルやリゾートホテル、各種レジャー施設を運営するホスピタリティパートナーズグループの一員。以前は「立川グランドホテル」として地域の人々に愛されてきましたが、2020年に改称し、大規模なリブランディングを実施。従来からある本館に加え、地上17階建てのタワー館を増築したことで総客室数は251室となり、多摩地区最大級のシティホテルへと生まれ変わりました。


しかし、2020年。東京オリンピックも控えた中で華々しいリブランドオープンを果たすと同時に、誰もが経験したことのないコロナ禍との戦いが始まりました。総支配人の金田さんは振り返ります。
金田総支配人「ほぼ、休業に等しい状態でした。宿泊や飲食のお客様は激減、収益の要であるご宴会、会議、結婚式が全く無い状態が続き、さらには館内のテナント様も撤退。ほとんどのスタッフが休業となる中、先の見えない不安から一人またひとりと自らホテルを去っていくスタッフとの別れは、非常に辛いものがありました。そんな静まり返る暗い館内の一角で、各部門責任者は何度となく集まり、協議を行いました。皆、大切なスタッフ、ホテルを守るために何でもやっていくと必死でしたね。そうやって考えに考えて作り出した経費節減案や業務改善策の実施に加え、他業種企業への出向やグループ会社への派遣を実施することも決め、さまざまな企業とのマッチングにも奔走しました。一定期間とはいえ、未経験の異業種の仕事に挑戦したスタッフたちの戸惑いや努力は本当に大きなものであったと思いますし、耐え抜いてくれたことに感謝しています」
その後は、医療従事者の隔離を目的とした受け入れや、ワクチン接種会場としてレストランを開放するなど、さまざまな工夫を凝らしながら営業を続けてこられたのだとか。徐々に状況が好転していく中で、環境や空間づくりに携わる業務部部長の藤倉さんは、さらなる経営改善に思考を巡らせたそうです。
藤倉部長「東京都のHTTの取組を知る以前から、環境保全や省エネ対策には着実に取り組んできました。客室のシャワーヘッドや、厨房の食洗機を節水タイプに入れ替えるのもその一つ。節電への取組としては、照明をLED電球に交換しています」
しかし、公共スペースや宴会場の照明機器については、課題が大きかったようです。本館が建てられたのは30年以上も前。宴会場の大型のシャンデリアなど、調光機能を持つ照明機器はLED化に対応しておらず、システムそのものを最新設備に更新する必要がありました。さらに、電気設備も細やかな分電制御が難しい仕様で、新築のタワー館とは異なり省エネ化に相応なコストがかかるため、簡単には手を付けることができない状況であったようです。
藤倉部長「そんな時、お電話をくださったのが東京都HTT実践推進ナビゲーター事業の山内さんでした。日々さまざまな事業者様から営業の電話がありますので、山内さんからのアプローチも、当初は営業活動の一つかなと考えていました。しかし、お話を伺ううちに、ちょうど私たちが直面している課題に合致するお話しばかりであったため、さっそくご訪問をお願いし、省エネ対策につながる助成金や補助金制度について、詳しく教えていただくことにしました」
ナビゲーターの提案で無料の省エネ診断を実施
専門家の助言がさらなる呼び水に
コロナ禍が収束し、ようやく人の往来が元に戻りつつある今、複合的な要因からエネルギー価格が高騰を続けているのは周知の通り。消費者はもちろん、企業にも大きな打撃を与えています。金田総支配人「省電力機器への換装、スタッフの啓蒙活動などあらゆる施策を経てやり尽くした感があり、頭を悩ませていたところで出会えたのが、ナビゲーターの山内さんでした。山内さんは当ホテルが置かれている状況に耳を傾け的確なアドバイスをくださいました。後の相談時もレスポンスは迅速で、心強い味方を得たような気持ちになりました」
その後、ビル管理システムの経験がある業務部の松浦さんを中心に、無料の省エネルギー診断(東京都環境公社)を実施。東京都から派遣されたプロの診断士とともに、まずは照明のLED化による削減効果の算出に取りかかられたそうです。
松浦様「ご協力くださった診断士さんはその道のプロでした。電力使用量を減らす具体的手段についてや、現状を見える化する手段を伺い、事前にイメージしていたこと以上のアドバイスをいただけました」
ナビゲーターの山内氏や省エネ診断士の助言をもとに、同ホテルでは東京都の「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」の助成金を活用する方針に決めました。ただし、申請時に必要な書類を揃えるためにかなりのご苦労があったといいます。
松浦様「例えば、既設の照明設備の仕様(型番・消費電力等)の入力が必須条件のなかで、古い照明器具は型番などの詳細が不明なものも多く、仕様書に記載されている機種が廃番になっていることもありました。それについては、東京都の指示で該当設備を個別に撮影して、写真付きの申請用報告書を作成しなければならなかったのです。時間のかかる作業でしたが、先日なんとか申請用報告書は完遂しました」
結果、ゼロエミッション化に向けた主な取組としては、従前から想定していた宴会場およびパブリックスペースの照明のLED化をはじめ、運用面では空調機のデマンド制御や冷温水発生機の設定温度管理の検討、毎月の電力使用量や料金推移をグラフ化して館内のバックヤードに掲出し、従業員への意識啓蒙を実施。現在はひと通りのチェックと書類作成を終え、申請結果を待っている状況だといいます。


SDGsへの取組で培ったモチベーションを
ゼロエミッション化にも活かしたい
もともと、ホテルエミシア東京立川ではSDGsの取組を積極的に行っており、若手スタッフを中心とした専門チームによる勉強会や定期的なミーティングが実施されていました。その後、コロナ禍という厳しい状況に直面したのを契機に、業務改善が急務となり、一人ひとりがより深く考える機会を得たことで、日々の業務に対する意識を向上させることへも繋がったといいます。
藤倉部長「普段は積極的な発言がほとんどなかった若手スタッフたちが、一生懸命考えたアイデアを持ち寄り、自信を持って発表してくれるようになったのです。これまで私たちは、持続可能な社会の実現を目指して、歯ブラシやヘアーブラシといった客室のアメニティをバイオマス製品に変更するなど多様な取組を行ってまいりましたが、これらも彼ら彼女らの意見がボトムアップで挙がってきた例ですし、お客様が不要になって当館に寄付してくださった傘を「リユース傘」として別のお客様に自由にお持ち帰りいただくという新しいサービスも、実は若手スタッフたちのアイデアによるものでした」
忘れ物や不要物として放置されることの多いビニール傘は、1ヶ月で30本以上にのぼることもあるのだとか。金属やプラスチックなどの異素材で組み立てられている傘は、分解が困難なため、リサイクル処分を行うにもかなりの費用がかかってしまいます。これをスタッフたちが選別し、綺麗な状態で再利用できるようになれば、不意の雨に降られて困っている方々へのベネフィットにも繋がります。ほかにも、こまめな消灯による節電や清掃時の節水、会議資料やPRツールのペーパーレス化、ペットボトルの完全リサイクル、食品ロスの軽減など、環境に配慮した取組の数々が浸透しています。
金田総支配人「設備や環境面の整備を多角的に実施してきましたが、HTTとの出会いから取組を通じ、課題の大きかったゼロエミッション化へ更なる大きな一歩を踏み出せたと実感しています。コロナ禍の厳しい時期を経て、ONEチームとなったスタッフ一人ひとりが、今後も継続的に高い目的意識を持って取り組めば、更なるエネルギーコストの大幅削減、経営改善も不可能ではないと信じています。今後も引き続き、皆の気づきとアイデアを集め、脱炭素社会の実現に繋げていきたいと思います」

コロナ禍でも、スタッフ、お客様、そして持続可能な社会のために前進し続け、今や人手が足りないほどまでに回復したホテルエミシア東京立川。金田総支配人は、脱炭素化への取組について各企業個々に工夫を重ねている中、時に行政の支援に頼ることで課題解決の糸口に繋がる可能性があると語ってくださいました。今回、それらを考えるきっかけを与えてくれたのが、ナビゲーターの山内氏と省エネ診断士の存在だったといいます。
まだ、脱炭素化への具体的な取組や方針を決めかねている中小企業の皆様。まずはHTT実践推進ナビゲーターに相談をしてみませんか?
企業プロフィール
- ホテルエミシア東京立川
- 東京都立川市曙町2-14-16
- 宿泊、婚礼、宴会、会議、レストランを営むフルサービス型ホテル
- 168名
- https://www.hotel-emisia.com/tokyotachikawa/
- 2023年10月
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吉田社長が、東京都の取組であるHTT(電力をへらす・つくる・ためる)について知ったのは初夏のころ。本格的な夏の猛暑に備えて空調設備の更新を検討しているさなか、HTT実践推進ナビゲーター事業のスタッフから電話案内がありました。
コロナウイルスのパンデミック下にあった2020年、2021年には、世界的な渡航制限の影響により民間機の生産が大きく落ち込み、航空機産業が大きな打撃を受けたことは多くの人の知るところです。航空機生産におけるサプライチェーンの一員であるエイチ・エー・ティーもまた然り。パンデミックが収束しつつある現在は航空機産業も回復基調にありますが、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格の高騰にも見舞われ、今なお厳しい状況が続いています。吉田社長から会社が置かれた状況を伺ったナビゲーターの山内氏は、このたびの
助成支援までの具体的な流れは、最初に所定の申込みフォームにより専門家の派遣を依頼。事務局の内容確認が済むと、派遣された専門家が現地調査を行って支援レポートを作成、レポートの内容にもとづいて助成金の申請を行うという手順です。取材を行った8月末の時点では、助成金申請を済ませて審査待ちという段階。吉田社長の「この夏こそ空調を新しくする!」宣言の実現には間に合わない様子でしたが、「社員にはこの夏も暑さに耐えてもらうことになって申し訳なかったのですが、浮いた経費をボーナスに上乗せできたので、みんな喜んでくれました」と、吉田社長も嬉しそうに語ります。
これまでも幾度か補助金を活用してきた吉田社長ですが、申請手続きはすべて自分一人で行ってきたそう。HTT実践推進ナビゲーター事業からの案内をきっかけに行った今回の場合は、ナビゲーターの山内氏や東京都から派遣された専門家の意見を訊けたことが、思わぬ収穫だったようです。
吉田社長「これまでHTTについては何も知りませんでしたが、今回活用させていただいて、とても良い取組だと思いました。ナビゲーターもコンサルタントも東京都から派遣される方なので安心で、無償で役立つアドバイスをいただけるので助かりますね。脱炭素の取組については、照明のLED化などは数年前に済ませていますし現時点ではやれることが限られると思っていましたが、今回お話を伺うなかで
業務部ご担当者様(以下略)「もともと私どもは電子部品を商う会社です。ISO14000シリーズの国際規格認証を取得したほか、SDGsを積極的に推し進めるなど、環境マネジメントに対する意識はそれなりに高かったと考えています。その下地もあって、早い段階から社屋の照明器具をLED電灯に換装するなど、省エネに資する工夫や取組を続けてきました。そんな折、HTT実践推進ナビゲーター事業のスタッフさんから一本の電話がありました。HTTについてのご案内だったんです」
当初からコーデンシTK社が注目していたのが、太陽光発電でした。自社ビルの屋上に太陽光発電モジュールを設置すれば、それまで取り組んできた「へらす」に加え、電力を「つくる」ことも可能です。そこでナビゲーターの齊藤氏は、太陽光発電に関連する東京都の助成金制度をご案内。併せて蓄電池設置による「ためる」プランについてもご提案を行い、まずは現在の電力使用状況の見える化を進言したのだとか。省エネ対策立案のベースとなりうる「省エネルギー診断(東京都環境公社)」を通じて、モヤモヤとしていたものが少しずつ形を成していく感覚を得られたのだそうです。
太陽光発電についても同様です。実現可能な具体案が見つかれば、すぐにでも検討に入る準備は整っていました。しかし、本社社屋ビルのカマボコ型にデザインされた屋上には、建築上、従来型の太陽光パネルの設置が困難であるということが判明します。

「実はその後、太陽光パネルの設置業者さんから、当社の屋上には充分な枚数のパネルを設置することができず十分な発電量を得られないという理由から、残念ながら費用対効果は薄いとの回答をいただきました。助成金を活用しても、設置には相応のコストがかかります。コストを回収できなければ、当然ながら設置は断念せざるを得ません。ただ、私たちにとってはこれも『前進した結果』であり、ポジティブに捉えています。中小企業経営者の皆さんになら共感いただけると思うのですが、小さな会社は本来業務に加えて、細かい経理業務や求人、社内環境の整備など、目の前に山積みされる諸問題に忙殺されがちです。環境負荷低減や脱炭素化に向けた取組は大切であると思いながらも、どうしても二の次になってしまうんですよね。でも、