株式会社エイチ・エー・ティー様

株式会社エイチ・エー・ティー様

働く社員のためにはじめた老朽設備の更新が、
さらなる省エネと経営改善にも繋がりそうです。

株式会社エイチ・エー・ティー 代表取締役 吉田隆史様

株式会社エイチ・エー・ティー様

今回ご紹介するのは、航空宇宙産業の部品加工に携わる株式会社エイチ・エー・ティー様。代表取締役社長の吉田さんに、HTTナビゲーターの提案で東京都の支援事業を活用するまでの経緯とともに、脱炭素の取組に対する想いについても伺いました。

製造設備の新規導入と併せて
空調管理の見直しへ

1998年に東京都国立市で創業、今年で25年目を迎える株式会社エイチ・エー・ティーは、放電加工、ウォータージェット、機械加工などの技術を主軸として、航空宇宙関連部品の加工や製造に携わるモノ作りの企業です。本社である国立事業所では航空宇宙、各種産業界の試作品の加工を行い、福島事務所では航空機エンジン部品の量産部品を、そして東京都昭島市の事務所では非破壊検査器機の設計・施工、販売、検査機器の校正を手掛けています。


吉田社長が、東京都の取組であるHTT(電力をへらす・つくる・ためる)について知ったのは初夏のころ。本格的な夏の猛暑に備えて空調設備の更新を検討しているさなか、HTT実践推進ナビゲーター事業のスタッフから電話案内がありました。

吉田社長「国立事業所の工場は、2019年、2023年と、連続して製造に関わる最新設備を導入してきました。その流れの中で、設備の動作保全や職場環境を快適に整えるため『空調を新しくしよう!』と考えました。工場には新たに導入された放電加工やウォーター切断加工、マシニングなどの工作機械がずらりと並んでおり、現状では機械が発する熱と古くて効きの悪い空調により、夏場には温度管理が厳しくなっておりましたので、社員からも喜びの声が上がりました。さっそくメーカーに見積を取り、いざ発注しようというタイミングでHTTの案内電話があったんです。ここ数年はコロナ禍で飛行機も飛ばず、エネルギー高騰のあおりも受けているところでしたので、少しでも費用の助けになるならと考えて、ナビゲーターの山内さんに来ていただくことになりました」

パンデミックを機に、むしろ守りから攻めの経営へ。従来からのものづくり産業に加え、非破壊検査部門を充実させようと考えていた吉田社長にとっては、ナノサイズX線CT撮影装置や、高精度3Dスキャナーなどの最新機器を導入したばかりの出来事でした。空調設備の見直しにあたって多少なりとも役立つ情報が得られるならと、HTT実践推進ナビゲーターからのアプローチを受け入れることになったといいます。

ヒアリング内容をもとに、
ナビゲーターが事業内容や経営状況に応じた支援事業を提案

コロナウイルスのパンデミック下にあった2020年、2021年には、世界的な渡航制限の影響により民間機の生産が大きく落ち込み、航空機産業が大きな打撃を受けたことは多くの人の知るところです。航空機生産におけるサプライチェーンの一員であるエイチ・エー・ティーもまた然り。パンデミックが収束しつつある現在は航空機産業も回復基調にありますが、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格の高騰にも見舞われ、今なお厳しい状況が続いています。吉田社長から会社が置かれた状況を伺ったナビゲーターの山内氏は、このたびの空調設備更新にあたり「原油価格高騰等緊急対策事業」という支援事業の活用を提案しました。

吉田社長「山内さんに教えていただくまでは、そうした支援事業があることも知りませんでした。うちは福島県に工場があり、東日本大震災以来、補助金制度はたびたび活用させてもらっているので機械設備の補助金についてはよく知っていたのですが、空調などのインフラ設備補助金は知りませんでした。アドバイスがなかったら自費で設置する予定でしたので、とても助かりました」

山内氏が提案した「原油価格高騰等緊急対策事業」とは、世界情勢による原油や原材料価格の高騰により、経済的打撃を受けている中小企業に対して、専門家のアドバイスをもとに固定費削減の取組を支援しようというもの。対象は東京都内で製造業を営む中小企業で、直近の売上高が前期、あるいは前々期より減少していることが条件でした。エイチ・エー・ティーは燃料費高騰のあおりを受ける航空機産業で条件に見合っており、一般的な省エネ対策の助成金に比べると助成率が80%と高いことや、緊急対策であるため比較的早い対応が期待できるというメリットも考えられました。

助成支援までの具体的な流れは、最初に所定の申込みフォームにより専門家の派遣を依頼。事務局の内容確認が済むと、派遣された専門家が現地調査を行って支援レポートを作成、レポートの内容にもとづいて助成金の申請を行うという手順です。取材を行った8月末の時点では、助成金申請を済ませて審査待ちという段階。吉田社長の「この夏こそ空調を新しくする!」宣言の実現には間に合わない様子でしたが、「社員にはこの夏も暑さに耐えてもらうことになって申し訳なかったのですが、浮いた経費をボーナスに上乗せできたので、みんな喜んでくれました」と、吉田社長も嬉しそうに語ります。


専門家のアドバイスで見えてきた、
脱炭素の取組と経営改善に繋がる道筋

これまでも幾度か補助金を活用してきた吉田社長ですが、申請手続きはすべて自分一人で行ってきたそう。HTT実践推進ナビゲーター事業からの案内をきっかけに行った今回の場合は、ナビゲーターの山内氏や東京都から派遣された専門家の意見を訊けたことが、思わぬ収穫だったようです。

吉田社長「ご紹介いただいた助成金活用では、ナビゲーターの山内さんや、東京都から派遣されたコンサルタントの方など、無償で専門家のアドバイスが訊けたことがありがたかったですね。派遣されたコンサルタントは大手自動車メーカーの生産部にいた方だったので、製造業の実情に精通されていて、経営面でも役立つアドバイスをいただくことができました。今回の助成金活用では、こうした専門家の方とのご縁ができたことも大きな収穫でした。これまで自己流でやってきましたが、これを機に専門家の助言をもとに会社経営についても見直したいと思っています」

今回の助成金活用では、高効率空調設備へ更新することで従業員の方々が快適に働ける環境が整うのと同時に、省エネについても大きな効果が期待されます。HTTのH(へらす)の取組に繋がり、カーボンニュートラルにおける貢献度も高いといえるでしょう。HTTについてはナビゲーターをきっかけに知った吉田社長ですが、最後に、脱炭素の取組についてどのように考えているのか伺ってみました。

吉田社長「これまでHTTについては何も知りませんでしたが、今回活用させていただいて、とても良い取組だと思いました。ナビゲーターもコンサルタントも東京都から派遣される方なので安心で、無償で役立つアドバイスをいただけるので助かりますね。脱炭素の取組については、照明のLED化などは数年前に済ませていますし現時点ではやれることが限られると思っていましたが、今回お話を伺うなかでエネルギーコストを効率よく下げることで、結果として利益を上げられることもわかりましたし、脱炭素の取組は、有効な経営改善に繋がることも実感できました。行政の支援というと補助金や助成金ばかりに目が行きがちですが、専門家の意見を訊けるよいチャンスでもあるので、中小企業の方は活用してみるとよいと思いました」

パンデミックやロシアのウクライナ侵攻など厳しい世界情勢の荒波を乗り越え、創業から四半世紀という節目を迎えたこの夏。来期の売上はコロナ前を上回るとの予測もあり、脱炭素の取組で結ばれた縁をもとに、エイチ・エー・ティーのさらなる飛躍の年となることを願います。

企業プロフィール

  • 株式会社エイチ・エー・ティー
  • 東京都国立市泉1-6-10

  • 【ものづくり事業】航空宇宙関連、各種試作開発品加工(MC、旋盤、各種放電、ウォータージェットなど)
    【非破壊事業】非破壊検査機器の取り扱い、検査機器校正サービス(光学機器、圧力計)
    【評価計測事業】3D計測リバース計測、X線CT撮影受託サービスなど
  • 32名
  • https://www.h-a-t.co.jp/
  • 2023年8月