いまや省エネ対策は業種を問わず継続的に取り組むべき喫緊の社会課題。温暖化対策への貢献だけでなく、エネルギーコスト削減の効果も期待され、事業活動にも多くのメリットがあります。今回は中小企業に多いテナントオフィスにおける省エネ対策について解説。省エネ対策の準備を整えるための前編と、用途別の省エネ対策を考える後編に分けてご紹介します。
前編 省エネ対策の準備を整える
- Step3 照明の省エネ対策
- Step4 空調の省エネ対策
- Step5 OA機器の省エネ対策
【前編】 省エネ対策の準備を整える
Step1 組織体制を整える
<省エネ対策の責任者を配置>
オフィスの省エネ対策にあたっては、何より従業員の協力が欠かせません。まずは組織の代表者が省エネ対策の責任者を配置して、対策の立案、実施に必要な権限を与え、全ての従業員に周知します。一般的な組織における責任者の配置は、エネルギー使用量のデータを把握しやすい管理部門やCSR部門が適しているでしょう。複数の部門がある場合は、さらに事業部門ごとに担当者を配置して、責任者と情報伝達する体制を構築します。
<PDCAサイクルで取組を継続>
省エネ対策は継続して行うことが大切です。責任者が中心となり、PDCAサイクルによる取組の継続・改善を図ります。取組段階で問題が見つかった場合は速やかに改善を図り、優れた取組に対しては社内表彰などのインセンティブを与え、会議や社内報で各部署に情報共有します。
■PDCAサイクルによる取組例

<ビルオーナーと協力し合い対策を推進>
また、ビルオーナーの対策や要請にも積極的に協力することで、より効果的にビル全体で省エネ対策を推進することが可能となります。ビルオーナーが設置する会議にも参加し、取組内容や効果について情報共有するとともに、他のテナントの担当者とも意見交換をして、優れた取組があれば自社の参考にしましょう。
Step2 エネルギーの使用状況を把握する
<エネルギー使用量を把握>
省エネ対策にあたっては、まずは毎月の光熱水費に加えてエネルギー使用量を把握することが大切です。毎月のエネルギー使用量は、電気、都市ガス、水道などの請求書や検針票に記載された数値で知ることができます。それぞれのエネルギー使用量は、毎月記録してグラフ化します。エネルギー使用量を「見える化」することで、季節による変動傾向を把握でき、課題も見つけやすくなるでしょう。データを積み重ねて前年同月と比較することで、省エネ対策の効果を確認することもできます。エネルギー使用量のグラフは社内報等で従業員に周知することも大切。従業員の省エネに対する意識が高まり、協力を得やすくなるでしょう。
<地球温暖化対策報告書の活用>
地球温暖化対策報告書とは都内の中小規模事業所を対象として温室効果ガス排出量および地球温暖化対策の実施状況を報告する制度で、前年度の原油換算エネルギー使用量の合計が年間3,000kL以上となる事業所に提出と公表の義務が課せられています。
中小企業が二酸化炭素排出量を把握し、具体的な省エネ対策を実施することを支援する制度であり、報告書作成ツールを活用すれば、エネルギー使用量等を入力するだけで原油換算やCO2排出量などを簡単に把握することができます。エネルギー使用量の前年度比較や月別推移、事業所別比較等のグラフ作成も容易にできるので、取り組むべき課題も見つけやすくなるでしょう。義務提出の対象とならない事業所も自主的に提出ができるので、省エネ対策をスムーズに進めるためにも活用をおすすめします。

エネルギー管理支援ツールによる分析
※地球温暖化対策報告書制度/東京都環境局
https://www8.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/ondanka/index.html
<分電盤にセンサーを取り付け消費電力を「見える化」>
テナントオフィスでエネルギー会社と直接契約していない場合は、ビルオーナーやビル管理会社の協力を得て、自社専有部のエネルギー使用量を把握するようにしましょう。また、各フロアの分電盤に計測器を取り付けることで、消費電力を空調、照明、コンセントといった用途別、時間別に「見える化」することも可能です。ビルオーナーから、分電盤に計測器を取り付ける許可さえ得られれば、テナントオフィスの場合でも実施できます。
テナントオフィスの電力使用比率
一般的なオフィスにおける用途別の電力使用比率を示したのが次のグラフです。テナントオフィスを対象として用途別電力使用量の平均比率を示したもので、電力使用比率は照明が約4割、空調とコンセント(OA機器等)がそれぞれ約3割。思いのほか照明による電力使用比率が高いことがわかります。

後編では、照明、空調、コンセント(OA機器等)の3項目に分けて省エネ対策をご紹介します。
続きはこちら:後編「用途別の省エネ対策を考える」
参考:「オフィス空間の省エネルギー対策」クール・ネット東京
https://www.tokyo-co2down.jp/assets/company/seminar/type/text/offiice201303.pdf
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