オフィスで始める省エネ対策。
~後編 用途別の省エネ対策を考える~

オフィスで始める省エネ対策。
~後編 用途別の省エネ対策を考える~

前編では、省エネ対策の準備を整えるための内容をお伝えしました。後編では実際にオフィス内で業務を行ううえでの用途別の省エネ対策についてご紹介します。

前編 省エネ対策の準備を整える

  • Step1 組織体制を整える
  • Step2 エネルギーの使用状況を把握する

【後編】 用途別の省エネ対策を考える

Step3 照明の省エネ対策

<業務に必要な明るさを考える>
一般的に、オフィスにおける電力使用比率が最も高いのが照明。言い換えれば、省エネ効果が最も出やすい用途でもあります。照明の電力使用比率が高い背景には、世界的に見ても非常に明るい日本の照度基準があります。かつての照度基準は書類ベースの作業を前提として作られたため、現在のオフィス業務はパソコン作業が圧倒的に多いことから、周囲が明るすぎて眼精疲労の原因にもなっているのです。

そのため、照明による省エネ対策は「今の明るさは本当に必要なのか?」を考えることから始めます。デスク上の適正照度を知る手立てとしては、JIS(日本工業規格)に定められた作業面の照度基準があります。作業内容によって適正照度は異なりますが、パソコンの使用が中心の一般的な事務作業であれば300lx(ルクス)から500lxが目安。それに対して、机上の照度が1000lxを超える例も多く、まずは照度計を用いて実際の照度を計測してみることをおすすめします。

■事務所の照度基準

<スイッチによる消灯→間引き点灯>
オフィス空間の照度を調整する手段として、最も簡単に取り組めるのがスイッチによる消灯方法。昼休みなど不要な時間にこまめに消灯することはもちろんですが、照度測定の結果を踏まえて、就業中にも消灯可能な範囲がないか検討するのも一つの手です。とはいえ、これまで1000lxあったオフィスの照度を500lxに下げるのにスイッチだけで対応するのは困難ですので、この場合は照明器具から蛍光ランプを外して照明を間引きする方法もあります。

<タスク・アンビエント方式>
明るさの感じ方には個人差や年齢差もあります。照明の間引きなどで照度不足を感じる場合は手元照明を活用する「タスク・アンビエント方式」を実践することをおすすめします。アンビエント(周辺環境)照明を控えめとする代わりに、タスク(作業)照明としてデスク上などを局部的に明るくする照明方式のことで、離席時にタスク照明をこまめに消灯することにより、従業員の省エネ意識を高める効果もあります。

■全般照明とタスク・アンビエント照明

出典:(社)日本照明器具工業会

Step4 空調の省エネ対策

<実際の室温を把握する>
空調の省エネにおいても、まずはオフィス空間の室温を把握・管理することが第一歩であり、夏期および冬期の温度管理が省エネ対策のカギとなります。この時、正しく温度管理をするために着目すべきは、設定温度ではなく実際の室温。空調の設定温度と実際の室温が同じとは限らないので、適切な場所を選び複数箇所に温度計を設置し、実際の室温を把握するようにしましょう。

東京都では「夏28℃」、「冬20℃」に室温維持することを推奨していますので、この室温を維持できるよう設定温度を調整します。冷暖房の設定温度を1℃緩和することで空調の消費電力を約10%削減できますので、夏期および冬期はきめ細かな温度管理を心がけましょう。

出典:(財)省エネルギーセンター

<サーキュレーターで空調負荷を低減>
空調の温度設定を変えるだけでは、オフィス空間全体の室温を均一に維持するのが難しいケースもあります。そのような場合はサーキュレーターなどを活用して空気を循環させることで、温度ムラを解消して省エネ効果を高めることができます。夏期はサーキュレーターを水平に向けて、不快感を与えない程度に風を当てて体感温度を下げ、冬期は天井付近に滞留している暖気を攪拌するため、サーキュレーターを上向きにして気流をつくります。

Step5 OA機器等の省エネ対策

<省エネルギー型機器への更新>

パソコン、ディスプレイ、プリンター、複合機など、オフィスでは多くのOA機器が使用されていて、電力使用比率の3割を占めています。近年ではOA機器の低消費電力化が進んでいることから、リース更新時に最新の機器を導入することで大きな省エネ効果が期待できます。省エネ性能の優れた機器を選択する際の指標としては「国際エネルギースタープログラム」があります。国際的な省エネルギー制度で、米国EPA(環境保護庁)により定められた基準を満たす製品にロゴの使用が認められています。製品パンフレットやホームページなどでロゴマークを確認しましょう。

※国際エネルギースタープログラム
https://www.energystar.go.jp/

<複合機で省エネ化をはかる>
また、コピーやファックス、プリンター、スキャナーなど単体のOA機器を複数台使用するより、複合機に機能を集約した方が消費電力を削減することができます。単機能のOA機器を使用している場合は、更新時に複合機の導入を検討しましょう。ただし複合機は多機能であるがゆえに消費電力が高いため、省エネ性能の優れた機器を選択することがポイント。一定時間不使用状況が続くと自動的に省エネモードに移行する機器など、仕様書の内容を吟味して製品を選びましょう。

<パソコンの省エネ対策>
パソコンの消費電力は照明や空調と比べると小さいですが、プリンターや複合機と違って常時使用されることが多く、従業員数と同等の台数が稼働していることを考えると無視できない存在です。消費電力はメーカーによって異なりますが、一般的にデスクトップ型の消費電力は1日あたり50〜150w程度。ノート型の場合は20〜30w程度で、デスクトップ型に比べると省エネ設計といえます。省エネ対策としては、スリープ状態に移行するまでの時間短縮や、ディスプレイの明るさを調整するなど、省エネモードを有効活用するのがポイント。また、長時間の離席時や終業時などには、コンセントからプラグを引き抜き待機電力のカットに心がけましょう。この時、スイッチつきテーブルタップを使えば楽に電源オフ状態にできます。

前編はこちら「省エネ対策の準備を整える」

参考:「オフィス空間の省エネルギー対策」クール・ネット東京
https://www.tokyo-co2down.jp/assets/company/seminar/type/text/offiice201303.pdf