ESGとは? SDGsやCSRとなにが違う?

ESGとは? SDGsやCSRとなにが違う?

ここ数年、メディアやビジネスの場面において、「ESG」あるいは「ESG投資」という言葉を目にするようになりました。環境に関わるテーマのようですが、いったいどのようなものなのでしょうか。今回は同じ文脈で語られるSDGs、CSRとの違いや、中小企業との関わりも含めて、注目を集めるESGについて解説いたします。

ESGとはなに?広まった背景は?

ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance:企業統治)の頭文字を合わせた略語で、この3つを考慮した投資活動や経営・事業活動を意味する言葉です。もともとESGは投資活動に関する概念であり、ESGの要素を考慮して行われる投資を「ESG投資」といい、2006年に国連のアナン事務総長が提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)をきっかけに広まりました。PRIは、年金基金や銀行、保険会社などの機関投資家に対して責任ある投資を推進する行動指針で、「投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込む」、「投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求める」など6つの原則※1で成り立っています。


このように国連がESG投資を推進する背景には、健全な社会、経済、環境の持続可能性に対する強い危機感がありました。近年においては、地球温暖化問題、食料不足、格差問題など、さまざまなリスクが経済全体にマイナス影響を与えていることが明らかになっています。このような状況を改善して持続可能な社会を実現するためには、財務情報のみを重視する短期的利益を追求した投資を改めて、ESGに配慮した経営や事業活動など非財務情報を適切に考慮した、中長期的な視点による投資が必要不可欠と考えられたからです。

■PRIの6原則
  1. 1.投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込む
  2. 2.活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESGの課題を組み込む
  3. 3.投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求める
  4. 4.資産運用業界において本原則が受け入れられ実行に移されるように働きかける
  5. 5.本原則を実行する際の効果を高めるために協働する
  6. 6.本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する

PRIの考えに賛同する署名機関は年々増加していて、2015年にはパリ協定やSDGsの採択でESGへの関心が一段と高まったこともあり、現在その数は5361機関(2023年12月現在)※2に上ります。日本においては、2016年に公的年金資金を管理・運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名。これを機に増加して、現在は128の機関 ※2がPRIに署名しています。


※1 PRI 責任投資原則
※2 署名機関数 PRI(Signatory directory)

SDGsやCSRとの違いは?

ESGと同じ文脈で語られる言葉の一つにSDGs(Sustainable Development Goal:持続可能な開発目標)がありますが、これは2015年の国連サミットで採択された国際目標のこと。「地球上の誰一人として取り残さない」持続可能で多様性のある社会実現のため、貧困、飢饉、教育、ジェンダー、気候変動など、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲット(具体目標)で構成されています。SDGsが持続可能な世界を目指す開発目標であるのに対し、ESGはその目標を達成するため機関投資家や企業が取るべき行動指針といえるでしょう。

■SDGs17の目標

SDGsのポスター

引用:国際連合広報センター

また、ESGは1990年代に広まったCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とも関連しています。CSRは、企業が事業活動において従業員や顧客、投資家、地域社会など、すべての利害関係者に配慮した行動や、持続可能な社会の発展に寄与する取組を指す言葉として使われています。ESGとCSRは、どちらも社会や環境に関わる企業活動を表すものですが、ESGは投資活動に関わる行動指針であるのに対して、CSRは企業が果たすべき社会的責任や倫理観を示す概念となっています。

ESG投資とは?

前述の通り、ESG投資とは環境、社会、ガバナンスを考慮した事業活動など、企業の非財務情報を重視した投資を指しますが、具体的にはどのような活動が投資対象になるのでしょうか。


例えばESGの観点でいうと、温暖化など環境問題のリスクに対する管理や研究開発の体制状況(環境:Environment)、その体制を実行するための雇用や人材育成の施策(社会:Social)、それらを戦略的に推進するための経営方針(企業統治:Governance)などが非財務情報にあたります。SDGsへの取組も評価基準となっていますが、CSRに繋がるような社会貢献活動の面ではなく、取組による中長期的な企業価値の向上が重要であり、その結果として投資のリターンが求められるのが特徴です。


海外では一般的に、長期的な成長と持続可能性に着目した投資を総称してサステナブル投資という言葉が使われており、日本におけるESG投資もその一つと捉えることができます。国際基準であるGSIA ※3によると、サステナブル投資の代表的な手法としては、タバコや化石燃料など特定の業種や企業を投資対象としない「ネガティブスクリーニング」、社会問題や環境課題の解決を目的とした「インパクト投資」、財務分析にESG要因を体系的かつ明示的に組み込んだ「ESGインテグレーション」などがありますが、日本では「ESGインテグレーション」の手法が最も多く用いられています ※4 。

■サステナブル投資の手法

手法の分類概要
ネガティブスクリーニング倫理的・社会的・環境的な価値観に基づいて特定の業種や企業を投資先から除外する手法
ポジティブスクリーニング同業他社比でESGの評価が高いセクター・企業・プロジェクトに投資する手法
国際的規範に基づくスクリーニング国際機関(OECD、UNICEF等)の国際規範に基づいて投資する手法
ESGインテグレーション通常の財務分析・運用プロセスにESG要因を体系的かつ明示的に組み込んで投資する手法
サステナビリティ・テーマ型投資サステナビリティに明確な関係があるテーマあるいは資産に投資する手法
インパクト・コミュニティ投資社会や環境の問題を解決する目的に絞って投資する手法
企業エンゲージメント株主として企業と建設的な対話を行う、あるいは株主として提案を行ったり、議決権を行使したりする手法

引用:日本サステナブル投資フォーラム/「2018 GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVEW」


※3 Global Sustainable Investment Alliance「2018 GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVEW」
※4 日本サステナブル投資フォーラム「サステナブル投資残高調査2023結果速報」

中小企業におけるESGの取組

国連がESG投資を推進する対象を機関投資家としていることから、ESGは株式を上場した大企業が行なうべき取組というイメージを持たれがちですが、中小企業の経営にもさまざまな効果が期待されます。そもそもESGの目的とは、環境・社会・ガバナンスに対するリスク認識を強化し、課題解決に向けた取組を実行することで企業の価値や持続性を高めることにあります。ESGに取り組むことで企業価値が向上すれば、顧客や取引先の評価に繋がると同時に、投資家や金融機関からは資金調達の機会を得ることも期待されます。


実際、中小企業の多くがESGの活動に取り組んでいて、商工中金が2022年7月に行った「中小企業のESGへの取組状況に関する調査」によれば、「一つも取り組んでいない」と回答した企業はわずか2.9%に留まりました。「E:環境」「S:社会」「G:企業統治」のなかで最も高い割合で取り組まれているのは、社会に関する「残業時間の削減や有給休暇取得促進などの労務環境対応」の87.5%となっていて、その次に企業統治に関する「月次決算のスムーズな作成などの財務・会計管理体制整備」の83.5%が続きます。



ESG各分野の取組割合

引用:商工中金「中小企業のESGへの取組状況に関する調査(2022年7月)」


相対的にみて環境への取組は遅れているものの、今後最も注力したい分野に取り組む上の課題としては、「次期エネルギーとして期待する水素について、各メーカーの状況等の情報収集が課題」「どの様にCO2排出量を測定、把握するのか判らない」「脱炭素の取組、目標設定など収益性に対してコストが掛かりすぎる」など、脱炭素・エネルギーに関する回答が多く見られます。情報不足や対応コストが高いという課題を感じつつも、多くの中小企業がエネルギー問題に注視していることがわかります。


脱炭素・エネルギー対応の取組状況

引用:商工中金「中小企業のESGへの取組状況に関する調査(2022年7月)」


調査結果に見られるように、中小企業が取り組むESGの活動は多岐にわたっています。「E環境」であれば廃棄物の削減や空調の適切な管理、「S社会」であれば労務環境の改善、「G企業統治」であれば財務・会計管理体制の整備など、まずは手を付けやすいところから始めるのもよいでしょう。



参考・引用:環境省 ESG検討会報告書「ESG投資に関する基礎的な考え方」

GXへの取組を加速!カーボン・クレジット市場が取引を開始 そもそも「カーボン・クレジット」とはなに?

2023年10月11日、東京証券取引所の新しい市場として「カーボン・クレジット市場」が開設されました。脱炭素の取組で削減した温室効果ガスの排出量をクレジットとして市場取引する仕組みで、企業や地方自治体など188の団体が参加。初日は3,689トン(t-CO2)の取引が成立しました。このたびの市場開設によりGX(グリーントランスフォーメーション)の加速が期待されていますが、そもそも「カーボン・クレジット」の仕組みが分かりづらい部分もあり、活用が進んでいないという課題もあります。そこで今回は、「カーボン・クレジット」について日本と世界の動向を交えながら解説していきます。

カーボン・クレジットとは

カーボン・クレジットとはカーボン・オフセット(温室効果ガスの相殺)の手法の一つで、脱炭素対策で排出を削減、あるいは吸収した温室効果ガスを1トンにつき1クレジットの単位で取引する制度です。制度を利用する企業や団体は、省エネ設備や再生可能エネルギーの導入で生じた排出削減量をクレジットとして売却することで、新たな利益を得ることができます。一方、自らの対策では削減目標を達成できない企業や団体は、クレジットの購入で排出削減量の不足分を相殺することができます。



ベースライン&クレジットとキャップ&トレードの考え方の違い



出典:「カーボン・クレジットレポートの概要」14頁

カーボン・クレジットの種類

世界にはさまざまなカーボン・クレジットがあり、国連や政府の主導で運営される制度と民間主導で行われる制度の2種類に大きく分けられ、代表的なカーボン・クレジットとしては以下のようなものがあります。

<国連や政府主導>

CDM

CDM(Clean Development Mechanism/クリーン開発メカニズム)※1は、1997年に採択され2005年に発行された京都議定書の規定に基づき、国連が運営する制度です。先進国が途上国において温室効果ガス削減プロジェクトを行い、その結果生じた排出削減量をクレジットとして発行する仕組みです。先進国は削減量を自国の温室効果ガス削減枠に加えることができ、途上国には先進国からの事業投資や技術移転を受けられるなどのメリットがあります。


JCM

JCM(Joint Crediting Mechanism 二国間クレジット)※2は、日本とパートナー国(途上国)が協力して、二国間で温室効果ガス削減に取り組むための制度です。日本はパートナー国に対して、優れた脱炭素技術や製品、システム、インフラなどの普及対策を行い、その成果である温室効果ガス削減量・吸収量の評価を自国の削減目標達成に活用しています。日本はJCMを積極的に推進していて、2023年10月現在で28カ国とパートナー関係を結んでいます。


J−クレジット

J-クレジット※3は、日本国内における排出削減・吸収量を認証していたオフセット・クレジット(J-VER)制度とその他の国内クレジット制度を統合し、2013年から開始した制度。環境省、経済産業省、農林水産省が運営しており、省エネ、再エネ設備の導入や森林管理等による削減量・吸収量をクレジットとして認証しています。(J−クレジットについては後述)


<民間主導(ボランタリークレジット)>

Gold Standard

Gold Standard※4は、2003年にWWF(World Wide Fund for Nature)などの国際的な環境NGOが設立した制度で、現在は独立した機関であるゴールドスタンダード事務局が運営しています。温室効果ガス削減プロジェクトの実施において、実際に目的が達成されているか否かを、クレジット購入者に保証する認証基準として機能しています。


※1 環境省「クリーン開発メカニズム(CDM)」
※2 環境省「二国間クレジット制度(JCM)」
※3 環境省「J−クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」
※4 環境省「VER認証機関・方法の概要」

J−クレジットとは

J−クレジットは温室効果ガスの吸収量をクレジットとして国が認証する制度で、2013年にスタートしました。中小企業や地方自治体が省エネ・再エネ設備を導入したり、農業者や森林所有者が適切な森林管理や緑地保全などを行ったりした場合、その成果である温室効果ガス削減量・吸収量に対してクレジットが発行されます。クレジットを創出した中小企業などの事業者は、売却益によって投資費用を回収できるうえ、さらなる温暖化対策に活用することも可能です。一方、クレジットの購入者となる大企業などは、国内の地球温暖化対策推進法や省エネ法、あるいは国際的イニシアチブのSBTやCDPなど、さまざまな温暖化対策の報告書にクレジットを活用することができます。また、新潟県と高知県には地方公共団体が運営する地域版J−クレジットがあり、創出されたクレジットは国が認証するJ−クレジットと同様に取り扱われています。



J−クレジット制度の仕組み


出典:J-クレジット制度ホームページ 「J-クレジット制度について」をもとに作成

これまでのJ−クレジットは、創出者と購入者間の直接取引や仲介事業者を介した相対取引、あるいはJ−クレジット事務局が実施する入札販売などで取引が行われていましたが、クレジットの価値評価や価格相場が分かりにくいことから、取引に参加しづらいという問題がありました。こうした中、市場による価格公示で取引の透明性を高めることで、政府認証で信頼度の高いJ−クレジットの活性化を図る取組としてスタートしたのがカーボン・クレジット市場なのです。


ただし、現段階ではJ−クレジットの取扱量そのものが少なく、安定した取引が行われているとは言い難い状況もあり、西村康稔経済産業大臣は「排出削減に先行的・意欲的に取り組む企業にメリットのある仕組みの構築を目指す」と、カーボン・クレジット市場開設に寄せてパブリックコメント※5を発表。今後もJ−クレジットの活用促進に向けた国の支援強化が期待されています。


※5 JPX「カーボン・クレジット市場の開設と売買開始について」

中小企業におけるカーボン・クレジット制度の活用

カーボン・クレジット制度の活用を視野に入れて脱炭素の取組を行えば、省エネ・再エネ設備導入でランニングコストを低減できるほか、クレジット売却益で投資費用の一部を回収、さらなる省エネ・再エネ投資に活用することも可能です。そのほか、温暖化対策に積極的な企業としてアピールできるなど、カーボン・クレジット制度にはさまざまなメリットがありますが、実際、中小企業における活用はどの程度進んでいるのか、気になるところです。


東京証券取引所は2022年9月から2023年1月にかけてカーボン・クレジット市場の実証実験を行っており、その結果によれば、期間中の取引のうち中小企業をはじめとした非上場企業による売買合計の件数は56.7%、数量(t-CO2)では31.2%を占めており、思いのほか注目度が高いことがわかります。



約定件数と数量



出典:日本取引所グループ株式会社 東京証券取引所「カーボン・クレジット市場」の実証結果について

2050年カーボンニュートラルの実現には中小企業の参加が不可欠であるため、国は中小企業によるJ−クレジット制度活用の支援に力を入れています。中小企業がクレジット創出のためプロジェクトの登録やモニタリング(認証)を行う際には、書類作成支援のほか、登録や認証に係る費用を7割から9割補助するなど、さまざまな支援策※6を用意しています。また、小規模な削減活動も取りこぼさないよう、商工会議所などの運営団体が中小企業や個人のプロジェクトを一つにとりまとめて登録、クレジット売却後に利益分配を行うプログラム型プロジェクト※7の運用も行われています。今後は、規模の大小に関わらずカーボン・クレジット制度の活用が広がることが期待されています。


※6 J−クレジット制度 申請手続支援 費用支援の内容は年度によって異なります。
※7 J−クレジット制度について〜プログラム型プロジェクト運用手引き〜

TCFD、CDP、SBT、RE100 カーボンニュートラルのイニシアチブ、どこがどう違う?

森林火災や洪水など、異常気象による自然災害が増えつつある昨今、企業に対して気候変動対策と情報開示を求める動きが加速しています。気候変動対策を進めるにあたっては、活動を評価する国際的なイニシアチブの理解が不可欠ですが、TCFDやCDPなど英文の略語表記ばかりが見られ、その違いや関係性に分かりづらさを感じる人も多いことでしょう。そこで今回は、代表的なイニシアチブであるTCFDとCDP、SBT 、RE100の4つについて解説していきます。

TCFD

TCFDとは、G20の要請により2015年に金融安定理事会(FSB)が設立した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のこと。気候変動が企業活動に与える影響を投資家や金融機関が把握できるよう、情報開示のためのガイドラインの策定が行われ、2017年6月に最終報告書「TCFD提言」を公表しました。「TCFD提言」では、企業に対して気候変動による財務上の影響を把握して開示することを求めていて、情報開示項目として以下の4つを挙げています。


開示項目ガバナンス戦略リスク管理指標と目標
項目の詳細気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス気候関連のリスク及び機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への影響気候関連リスクについて、どのように識別・評価・管理しているかについて気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標
出典:TCFD「最終報告書 気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」(2017年)

TCFDにコミットするには「賛同」と「情報開示」の2つの方法があります。まず「賛同」については、公式ウェブサイトにアクセスして、所定のフォーマットに団体名、業種、地域、担当者の連絡先などを記入するだけで行えます。賛同した企業や団体の名称は公式ウェブサイトに公表され、希望すれば代表者名を入れた声明文を掲載することも可能です。賛同しても情報開示を求められるわけではないのでハードルも低く、2023年10月12日現在、世界では4,872、日本では1,470の企業・機関※1がTCFDに賛同していて、国別で見ると日本が最多となっています。

賛同のうえ「情報開示」を行う場合は、先の4項目についてシナリオ分析を行って財務報告書などを開示する必要があり、少し難易度が上がります。ただし、4項目すべてについて開示する必要はなく、必ずしも完璧な内容が求められているわけではないようです。日本では、東京証券取引所がプライム上場企業に対して気候変動関連情報の開示を義務化しており、TCFDまたはそれと同等のイニシアチブにもとづく開示を求めています。国土交通省が行った調査(2022年9月7日時点)※2によれば、プライム市場上場企業でTCFDに賛同している企業(786社)のうち82%が情報開示も済ませています。国内外の投資家の評価が高まることが期待されるため、今後も情報開示が進むことが予想されます。

※1 経済産業省「TCFD賛同企業・機関の一覧」
※2 国土交通省「TCFD提言と気候関連情報開示」

CDP

CDPは、2000年に英国で設立された国際環境NGO(非政府組織)であり、正式名称を「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」といいます。国家や地域、企業、投資家などが環境リスクに対応するための情報開示システムで、日本では2005年より活動しています。世界においては約18,700の企業がCDPで情報開示を行っており、情報量が多く、企業同士の比較がしやすいことから、多くの投資家が評価材料として活用しています。

情報開示システムの仕組みはというと、CDPが対象となる企業へ環境に関する質問書を送付して回答を要請、企業の回答をもとにAからDまで4段階のスコア付けと分析を行い、その結果を公式ウェブサイト上で公開(非公開も可能)しています。質問書の内容は「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト(森林減少リスク・コモディティ)」と3つの分野があり、このうち「気候変動」の質問書は「TCFD提言」に沿った内容となっています。つまり、CDPの質問書に回答すれば、同時にTCFDの情報開示にも対応できるということです。

質問書の送付は毎年春に行われ、夏に回答を締め切り、秋に分析とスコアリングを行い、冬に結果が公表されます。日本を対象とした気候変動に関する調査は2022年で17回目※3となり、東京証券取引所の情報開示要請を受け、調査対象となった企業数はプライム市場上場企業全体の1,841社にまで拡大しました。このうち、質問書に回答した企業数は1,056社で回答率は57%。前年の500社を対象とした調査に比べると、回答率は14%低下したものの、回答企業数は3倍にまで増えています。ちなみに、気候変動におけるスコアでAリストに認定された日本企業は75社で世界最多となっています。このように、日本においてはCDPの活用が積極的に進められており、今後も日本企業の参加が増えることが予想されます。


Aリスト国・地域別企業数(上位8ヵ国)
Aリスト地域別企業数

※3 「CDP気候変動レポート 2022日本版」

SBT

SBTとは、パリ協定が求める水準※4と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと。正式名称を「Science Based Targets」といい、「科学的根拠に基づいた目標設定」といった意味になります。SBTとともに SBTiという言葉も多く見られますが、SBTiとは「Science Based Targets initiative」の略で、SBTのガイダンスを設定した組織を指します。SBTiは、2015年にCDP、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)により設立された共同イニシアチブで、SBT認定はSBTiのもとで行われます。

SBT認定を受けるには、自社の事業活動による直接排出(Scope1、2)だけではなく、サプライチェーンの上流・下流における間接排出(Scope3)についても目標設定する必要があります。サプライチェーン全体でSBTを達成するには、大企業だけではなく、中小企業も積極的に取り組む必要があることから、SBTiでは中小企業向けSBTのガイドラインも用意しています。実際、中小企業による認定が増え続けていて、SBT認定を受けた日本企業は2023年9月30日現在※5で601社となり、このうち約7割を中小企業が占めています。中小企業向けSBTの場合、目標設定の対象が直接排出(Scope1、2)だけになるなど、通常のSBTと比べて要件が緩やかになっています。通常のSBTと中小企業向けSBTの概要をまとめると以下のようになります。


通常のSBT中小向けSBT
対象特になし従業員500人未満、非子会社、独立系企業
目標年申請時から5年以上先、10年以内の任意年2030年
基準年最新データが得られる年で設定を推奨2018年〜2022年
削減対象範囲原則、Scope1、2、3排出量Scope1、2排出量
目標レベル■Scope1、2
1.5℃目標において最低年4.2%削減
■Scope3
2℃の努力目標において最低年2.5%削減
■Scope1、2
1.5℃目標において最低年4.2%削減
費用USD9,500(外税)※最大2回の目標設定可能
3回目以降USD4,750(外税)
1回 USD1,000(外税)
承認までのプロセス目標提出後、事務局による審査が行われる目標提出後、自動的に承認されSBTi webサイトに掲載
出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」

SBTは、気候科学という共通基準で評価・認定を行う目標であることから、世界中の多くの企業が活用するグローバル・スタンダードの指標となっています。さらにCDPの質問書にもSBTに関する項目があり評価の対象となっていることから、CDPに参加する企業の多くはSBT認定も受けているようです。

※4:パリ協定で盛り込まれた世界共通の長期目標「産業革命以前からの平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求」
※5:環境省/グリーンバリューチェーンプラットフォーム「SBTiの参加日本企業」

参考・引用:環境省「SBT(Science Based Targets)について」

RE100

RE100は、「Renewable Energy 100%」を略した名称で、文字通り、エネルギーの全てを再生可能エネルギーの電力に置き換えることを目標としたイニシアチブです。RE100の運営は、CDPとのパートナーシップのもと英国のNPO団体The Climate Groupが行っていて、2014年から活動をスタートしています。

TCFD、CDP、SBTなど、これまで紹介したイニシアチブとの大きな違いは、温室効果ガスの削減の取組全般というより、再生可能エネルギーの電力への置き換えに特化していること。RE100に参加するには、2050年を期限として再生可能エネルギー100%を達成するための目標設定を行ったうえで、2030年までに60%、2040年までに90%を達成する中間目標も設定し、年に一度、進捗状況を事務局に報告する必要があります。さらに参加する企業には、消費電力量が年間100GWh以上であることや、化石燃料に関連する事業や企業に投資を行っていないなど、さまざまな要件や基準が設けられています。ただし、日本の遅れている再生可能エネルギー環境を鑑みて、日本企業に対しては消費電力量を年間50GWh以上とし、中間目標の設定も必須から推奨にするなどの緩和措置が採られています。

対象企業に求める基準や要件が高いため、中小企業にとってはハードルが高いイニシアチブといえそうですが、要件を満たさない企業に対しては「再エネ100宣言RE Action」が推奨されています。「再エネ100宣言RE Action」とは、RE100の要件を満たさない国内の企業や自治体、教育機関などを対象とした日本独自のイニシアチブで、RE100に比べ参加要件が緩やかになっています。「再エネ100宣言RE Action」に参加することで優遇される補助金制度もあるので、再エネ電力への切り替えを考えている場合は検討の価値があるといえそうです。


参考・引用:環境省「RE100について」 再エネ100宣言RE Action

「サプライチェーン排出量」と「Scope1, Scope2, Scope3」について

カーボンニュートラルに取り組む中では、「サプライチェーン排出量」あるいは「Scope(スコープ)1、2、3」などの言葉を見聞きする機会も多いと思います。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまでの、企業活動の流れ全体をいい、そこから発生する温室効果ガスの排出量が「サプライチェーン排出量」であり、排出量を算定する国際基準が「Scope1、2、3」ということです。製造業だけの話?と思われがちですが、脱炭素経営の取組にあたっては、すべての業種において「サプライチェーン排出量」の把握が不可欠です。今回は、脱炭素経営のカギともいえる「サプライチェーン排出量」と、その算定基準である「Scope(スコープ)1、2、3」について解説します。

サプライチェーン排出量

サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまでの、企業活動の流れ全体をいいます。例えば、コンビニエンスストアのおにぎりを作る食品加工業者の場合、主原料の米や具材、海苔のほか、製品を包むパッケージなど、さまざまな原材料を他の事業者から調達しています。調達した原材料をもとに自社の工場でおにぎりを製造、できあがったおにぎりは輸送業者などを介してコンビニエンスストアの店頭に並び、消費者に販売されます。ここに至るには、米を作る農家や魚介類の加工業者、消費者に届くまでの保管や物流の業者など、さまざまな他の事業者の活動による供給(Supply)の連鎖(Chain)が連なっています。

サプライチェーン排出量とは、この企業活動の流れ全体から発生する温室効果ガスを合計した排出量のこと。つまり、自社における直接的な排出だけではなく、サプライチェーンに関連する他の事業者の間接的な排出も対象になるということです。具体的には、自社内における燃料の燃焼や電気の使用などによる直接的な排出量だけでなく、購入した原材料やサービスの製造・輸送に伴う排出量、さらには販売した製品やサービスの流通、使用、廃棄などに伴う排出量が対象になります。

サプライチェーンにおける段階ごとに排出量を算定・把握することで、排出量削減のポテンシャルが大きい部分を明らかにして、効率的な削減対策の実施に繋げることがその目的といえます。また、サプライチェーン排出量を把握する過程においては、排出量について情報提供を働きかけることにより事業者間で理解が進み、協力して温室効果ガス排出量の削減を進めることも期待されています。

サプライチェーン排出量の算定

<Scope1、Scope2、Scope3>

サプライチェーン排出量を把握するためには、サプライチェーンの各段階における事業者の排出量データを収集し、積み上げていく必要があります。この時、まずは企業活動の中心に自社を据えて、購入した製品やサービスに関する活動を上流、販売した製品やサービスに関する活動を下流に区分して考えます。 環境省・経済産業省の基本ガイドラインでは、GHGプロトコル※1の基準に基づき、自社における燃料の燃焼や工業プロセスによる温室効果ガスの直接排出をScope1、自社以外から供給された電力、熱、蒸気の使用に伴う間接排出をScope2とし、サプライチェーンにおける上流・下流における間接排出(Scope2以外)をScope3と定義しています。

※1 GHGプロトコル
1998年に世界環境経済人協議会(WBCSD)と世界資源研究所(WRI)によって共同設立された組織。GHGプロトコルが発行したScope3基準は温室効果ガス排出量を算定・報告する際の国際的な基準になっています。

図1 サプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2及びScope3のイメージサプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2及びScope3のイメージ

さらにScope3は15のカテゴリに分類されていて、カテゴリごとに具体的な算定対象も示されています。Scope3のカテゴリと算定対象となる活動は以下の表の通りです。サプライチェーン排出量とは、このScope1、Scope2、Scope3の排出量をすべて足したものになります。

図2 Scope3のカテゴリ

カテゴリ 該当する活動(例)
上流 1 購入した製品 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2 資本財 生産設備の増設
3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4 輸送・配送(上流) 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5 輸送・配送(上流) 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5 事業活動から出る廃棄物 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送、処理
6 出張 従業員の出張
7 雇用者の通勤 従業員の通勤
8 リース資産 自社が賃貸しているリース資産の稼働
下流 9 輸送、配送(下流) 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10 販売した製品の加工 事業者による中間製品の加工
11 販売した製品の使用 使用者による製品の使用
12 販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
13 リース資産(下流) 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14 フランチャイズ 自社が主宰するフランチャイズの加盟店Scope1、2に該当する活動
15 投資 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他 従業員や消費者の日常生活

<Scope3排出量の重複算定>

全ての国内企業がサプライチェーン排出量を算定した場合、各社におけるScope1、Scope2排出量を総和すると、その数字は日本企業全体のCO2排出量の総和ということになります。しかし、Scope3を含めたサプライチェーン排出量を総和すると、図3のように企業Aと企業Bのサプライチェーン上の活動が重複している場合、排出量が重複してカウントされることも考えられます。このようにScope3の排出量は重複算定される可能性があるため、日本全体の排出量にならないと違和感を覚える方も多いようですが、目的はそこにありません。サプライチェーン排出量は、自社だけではなく企業活動の上流・下流における他者の削減活動までも評価することで、企業間で連携して排出量削減の取組を実施しやすくなり、より効果的にカーボンニュートラルを推進するための手法といえます。

図3 Scope3排出量の重複算定Scope3排出の重複算定

参考・引用:
環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」
環境省「物語でわかるサプライチェーン排出量算定」
環境省/経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」

「ゼロエミッション」の意味や「カーボン○○」の違いについて解説します!

例えば、よく耳にする「カーボン○○」という言葉。そもそもカーボンとは炭素を意味する言葉なのに、環境関連用語においてはCO2(二酸化炭素)を指して使われています。あるいはCO2の排出を意味するエミッションに関わる言葉なども多くあり、世間には知っているようでよく知らない環境関連用語があふれています。今回は「ゼロエミッション」「カーボン○○」など、基本の環境関連用語を紐解きながら、脱炭素化に向けた世界の潮流と国の政策、東京都や企業の取組についても解説していきます。

ゼロエミッションとネガティブエミッション

「ゼロエミッション」とは、1994年に国連大学によって提唱された環境問題に関する考え方で、“エミッション”は排出の意。産業活動で出される廃棄物を再利用するなどして、“廃棄物の排出”を“ゼロ”にすることを意味します。ここでいう廃棄物には、大気汚染物質、水質汚濁物質、温室効果ガスなど広義の廃棄物質が含まれますが、気候変動対策の観点からは、主にCO2など温室効果ガスの排出量ゼロを目指す言葉として使用されています。

一方「ネガティブエミッション」とは、大気中のCO2を回収あるいは吸収し、貯蓄・固定化することで、CO2を除去する技術を総称した言葉です。具体的には、植林や再生林、土壌炭素貯蓄などによる森林吸収、海藻など海洋植物に取り込むブルーカーボン、大気中から直接回収して貯蓄するDACCS などの技術があります。

東京都では2019年5月に行われたU20東京メイヤーズ・サミットにおいて、世界の大都市の責務として平均気温の上昇を1.5℃に抑えることを追求し、2050年までにCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を宣言しました。ここでいう“実質ゼロ”とは、再生可能エネルギーなどによるCO2排出削減には限りがあるため、大気中に放出されてしまったCO2をネガティブエミッションなどの技術により吸収・除去することで“実質ゼロを目指す”ということです。
TOKYO ZERO EMISSION

出典・引用:
ゼロエミッションフォーラム
経済産業省「ネガティブエミッション技術について」
東京都環境局「ゼロエミッション東京」

カーボンニュートラル

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。“排出を全体としてゼロにする”とは、CO2など温室効果ガスの排出量から、吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにするということ。産業活動を続けるうえで排出せざるを得ない分については、植林や森林管理を進めてCO2の吸収量を増やしたり、ネガティブエミッション技術を活用して回収、貯留するなどして同じ量を差し引き、実質的にゼロを目指す、ということです。

気候変動問題の解決に向けた世界の潮流としては、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分に低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること(2℃目標)」などの合意がなされました。この実現に向けて、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。カーボンニュートラルの宣言は国や地域だけではなく、企業においても目指す動きが進んでおり、宣言した企業のリストには日本企業の名前も多くあります。

引用:経済産業省「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)

カーボンハーフ

「カーボンハーフ」とは、2021年1月27日、世界経済フォーラム主催の「ダボス・アジェンダ」において、東京都知事が「2030年までに温室効果ガスを2000年比50%削減、再エネ電力の利用割合を50%まで高めていく」と表明した目標のこと。これは、2019年に宣言した「ゼロエミッション東京」の実現に向けては、2030年までの10年間の行動が重要との考えで取組を加速させたものです。東京都では、CO2を「ハーフ」にしていくことをめざし、都民・行政・企業などがともに行動を起こす「TIME TO ACT for カーボンハーフスタイル」を呼びかけています。
2030年カーボンハーフ目標と現状

引用:
東京都環境局「2030年までに温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」を知事が表明」
東京都環境局「2030年カーボンハーフに向けた取組の加速」

カーボンプライシング

脱炭素化社会の実現に向けた有効な手段の一つとして、欧州をはじめ世界で導入が広がりつつあるのが「カーボンプライシング」という方法です。企業などが排出したCO2に価格付け(プライシング)する仕組みで、排出量に応じて費用負担を求めるものです。温室効果ガス排出にかかるコストを明らかにすることで、脱炭素社会に向けた行動を促すことを目的としています。カーボンプライシングにはさまざまな手法がありますが、政府主導で行われるものとしては、主に以下の3つがあります。

  • ・企業などが燃料や電気を使用して排出したCO2に対して課税する「炭素税」
  • ・企業ごとに排出量の上限を決め、それを超過する企業と下回る企業の間でCO2の排出量を取引する「排出量取引制度」
  • ・CO2削減を価値と見なして証書化し、売買取引を行う「クレジット取引」

そのほか「石油石炭税」などエネルギーにかけられる諸税や、電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」(FIT賦課金)もカーボンプライシングに含まれます。「再エネ賦課金」は、再生可能エネルギーでつくられた電気を電力会社が買い取る費用の一部に当てられていて、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えています。

「炭素税」については欧州を中心に導入が進んできました。EU諸国のうちフランスや英国、フィンランドなどでは「排出取引制度」に加えて「炭素税」も導入しています。日本では、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指して、政府が法制化を進めている段階です。また、政府主導のしくみ以外にも、企業が独自に自社のCO2排出に価格付けをして投資判断に活用する「インターナル(企業内)カーボンプライシング」などの手法もあります。
カーボンプライシングの分類

引用:
経済産業省 資源エネルギー庁 「脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは?」
環境省「カーボンプライシングの意義」

カーボンリサイクル

CO2を資源としてとらえて分離・回収し、コンクリート、化学品、燃料などさまざまな製品に再利用してCO2の排出を抑制しようという取組で、「2050年カーボンニュートラル」実現の鍵を握るテクノロジーとして期待されています。カーボンリサイクルは、化学、セメント、機械、エンジニアリング、化石燃料、バイオなど様々な事業分野で取組が可能であり、日本においては「カーボンリサイクル産業」と呼べる各種の産業が育ちつつあります。コスト削減や社会実装を進めていけば、新たな産業としてグローバル展開できる可能性もあります。

主な技術としては、CO2を吸収してつくったコンクリート製品や構造物、CO2で培養する藻類からつくるバイオ燃料、太陽エネルギーを使ってCO2と水から有機物(でんぷん)と酸素を生み出す「人工光合成」などがあります。カーボンリサイクルの過程ではCO2の分離回収に関する技術が重要になりますが、日本では発電所から高濃度CO2を分離回収する設備が実証段階に入っています。また、CO2回収プラントの実績では日本企業がトップシェアを誇っており、日本の産学が数多くの特許を取得しています。
CCUS

引用:経済産業省「CO2削減の夢の技術!進む『カーボンリサイクル』の開発・実装」