東京都が推進するHTT(へらす・つくる・ためる)は、気候変動(地球温暖化)や世界的なエネルギー不足への対策として、キーワードとなる取組のことです。しかし、方法や解決策は十人十色。企業によって多彩なアプローチが可能な分、具体的な施策やロードマップの策定にお悩みの経営者様や担当者様も多いことでしょう。その際、強い味方となってくれるのがナビゲーターの存在です。そこで、皆様からのお問い合わせに応える精鋭スタッフをインタビュー。第1回目は、多士済々なナビゲーターを率い、ご自身もナビゲーション活動に邁進する山内さんに、その役割と事業にかける熱い想いを伺いました。
ナビゲーターの存在意義は、それぞれの立場を尊重し、
それぞれのHTT参画をサポートすること
ゼロエミッションの重要性を理解し、省エネによる経費削減・事業改善への取組に興味があっても、「何から始めるべきか」「何ができるのか」がわからず、二の足を踏んでいらっしゃる経営者やプロジェクトリーダーの皆様は多いはずです。そんな時、HTTの案内役となってくれるのがHTT実践推進ナビゲーターです。現在、当事業では複数名のナビゲーターが企業様からのお問い合わせやご相談に対応しています。その中でも、責任者を務める山内貴司さんは、もともと中小企業や町工場における“モノづくりの現場”でコーディネートおよびコンサルティング業務を専門としていたエキスパート。昨今のエネルギーコストの急激な高騰によって、電力使用量を見直したいと考える企業様からの声に耳を傾け、効果的な支援策を提示しています。山内「すでにご案内している企業は1万5,000社にのぼり、コールセンターにお問い合わせを寄せてくださった企業様や、コールセンターのスタッフたちによる電話でのご案内に関心を持ってくださった企業様に対して、HTTの意義や役割、具体的な東京都の支援策など、情報提供を行なっています。私たちナビゲーターの仕事は、HTTの周知・啓蒙・広報活動を主軸に、各企業様によって異なる課題についてのヒアリングはもとより、ご相談内容に応じた支援策のご提案など多岐にわたります。現在、私を含めたナビゲーターが、さまざまな手段や助成金活用に至るまでの道筋を照らし、HTTについてのアドバイスをさせていただいております」
今だからこそ、多くの中小企業様に知ってほしい
東京都が掲げる手厚い助成金制度
コロナ禍の影響が長引く中、国際情勢に伴うエネルギー価格の高騰や円安といった要因で、多くの日本企業は厳しい経営状況を強いられています。省エネは、事業活動を維持、継続させる上でもはや欠かせないもの。また、SDGsやパリ協定など、脱炭素化社会の実現に向けた社会・経済システムの変革は、世界的な潮流として避けては通れない状況となっています。
山内「今、対策を打たなければ、やがては持続的な企業活動を妨げてしまう可能性があります。すでに名だたる大手上場企業は、サプライチェーン全体におけるCO2排出量の可視化や管理に着手しはじめました。しかし、東京都に所在を置く企業のうち98%以上は中小企業。政府が発表した2050年のゼロエミッション達成に向け、東京都は2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する「カーボンハーフ」を表明し、その実現に向けたさまざまな取組を強化・加速させていますが、そのためには中小企業の皆様のご協力が必要不可欠です。企業規模の大小に関わらず、総力戦で取り組まなくてはなりません。都が設けている53(2023年6月時点)にわたる事業者向け支援策もその一環です」
では、どのような取組が考えられ、それに対してどういった補助や助成が受けられるのでしょう。
山内「蛍光灯をLEDに変えたり、空調設備を最新の省エネ機器に変えたり、窓を断熱性の高いものにするだけでも、消費電力がセーブでき、HTTの『へらす』に貢献できます。また、営業車の一部をEV(電気自動車)にするのもいいですね。工場であれば、現在使用している機器の稼働効率を見直すことで節電に大きな効果をもたらします。さらに、太陽光発電などの再エネ設備を設置して『つくる』を実践したり、蓄電池システムの導入によって『ためる』にチャレンジしていただくのはいかがでしょうか? 対象は極めて広範にわたり、それぞれで助成金額や上限、申請期間などが設けられていますが、私たちナビゲーターがご相談に応じて最適な施策と情報をご提供します」
何よりも重要なのは「現状の把握」だと語る山内さん。普段は見えにくい電気の使用量を可視化し、いかにムダが多いかを再認識すれば、社員の皆様の意識改革が促進され、ひとまず何に取り組むべきかが明確になってきます。
山内「東京都では、温室効果ガスの排出量が相当程度多い事業所の皆様を対象に『地球温暖化対策報告書』の提出を義務化しています。その書式に沿って、ご自身の事業所の現状を検証・把握するのが取組への第一歩かもしれません。また、最近では高機能なデマンド監視システムを導入されている企業様も多く、自社の電力使用量の管理を行っていらっしゃいます。対処すべきポイントが見えてくれば、エネルギーコストの削減や有効活用はもとより、業務そのものの改善、生産効率のアップにもつながっていきます」 さらに多彩な取組を実践し、明示できるようになれば、対外的な評価や企業価値が上がり、それだけで営業活動の機会が広がることも。節電・省エネによってムダを取り除いたその先に、新たなビジネスチャンスが待っているかもしれません。
ナビゲーターの願いは、
上手な制度活用でよりよい社会をつくりあげること
山内「最初に1つお伝えしておきたいのは、私たちの業務は営利ではないということです。都が推進するHTTを一社でも多くの中小企業様へご案内するのが旨。よく、助成金の申請代行や工事の仲介によって手数料をいただく営利企業に間違われますが、HTTの重要性と制度に関する理解の深度を深めていただくのが目的なんですね。ですから何らかの設備投資を強要するようなことは絶対にありません。HTTをご存じない企業様に向け、制度の普及を目指し、少しでも各企業様の利益向上に寄与できればという思いでこの業務にあたっています」
曰く「どんな些細なことであっても、不安があれば積極的に質問を投げかけてください」と山内さんが語ります。一本のお電話でのやりとりから、それまでHTTの存在を知らなかった企業様が、都が進める脱炭素化プロジェクトに共鳴し、実際に各種申請にまで至るケースが徐々に増えていると教えてくれました。
山内「省エネを無理強いしたり、行政から改善指示が出ることもありません。少しでも『へらす・つくる・ためる』を意識し、できることから始めていただければ。小さくとも一歩前へ踏み出すことが重要です」
そのために職場を訪問することもしばしばあるのだとか。企業様が置かれている現況の把握をお手伝いし、それにフィットしたアドバイスをさせていただくのがナビゲーターの役割です。
山内「脱炭素化や節電について、雑談感覚で会話を交わすだけでも構いません。相談者様の利潤追求の一環として省エネに取り組んでいただく。あるいは経営戦略策定の一助として環境問題に向き合ってもらう。もうそれだけで私たちは本望です。日々の努力が報われます」
週に一回、チームの責任者としてナビゲーター諸氏とのミーティングを重ね、情報共有や意見交換を欠かさないという山内さん。相談者様の立場や役職、経営状態に合わせて最善のアンサーが導き出せるよう、ナビゲーションそのものの品質向上にも余念がありません。地球温暖化対策と聞くと、まだまだピンとこない部分があるかもしれませんが、まずは少しでも節電・省エネに取り組み、利益率を上げるところから始めてみませんか? そして、そのお手伝いは、山内さんをはじめとするナビゲーターにお任せください。
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