令和5年度HTTセミナー開催結果報告【セミナーレポート】

令和5年度HTTセミナー開催結果報告【セミナーレポート】

2023年2月から2024年2月まで、毎月一回のペースで開催してまいりました「HTTセミナー」。電力をへらす(省エネ)・つくる(再エネ)・ためる(蓄エネ)についてはもちろん、今私たちが取り組むべきこと、持続可能な循環型社会の実現・・・


2023年2月から2024年2月まで、毎月一回のペースで開催してまいりました「HTTセミナー」。電力をへらす(省エネ)・つくる(再エネ)・ためる(蓄エネ)についてはもちろん、今私たちが取り組むべきこと、持続可能な循環型社会の実現、GX(グリーントランスフォーメーション)、事業継続・新規事業開拓、HTTをきっかけにした新たなブランディングの創出など、さまざまなテーマのもと各分野の第一線で活躍する講師陣をお招きし、脱炭素化に対する中小企業の皆様の意識向上やアップデートに寄与するセミナーをお届けしてきました。そこで、過去全13回にわたって実施されたセミナーの概要をご紹介します。

たくさんのご参加ありがとうございました!
参加総数と業種の内訳、ご参加に至った理由などを公開します

セミナーの様子

HTTセミナーはこれまで全13回にわたり開催され、のべ800名以上にのぼる皆様がご参加されました。セミナー参加を申し込まれた皆様の所属企業の業種・業態は多岐にわたります。
・サービス業(25.6%)
製造業(18.6%)
学術研究、専門・技術サービス業(11.9%)
情報通信業(7.5%)
卸売業・小売業(7.1%)
建設業(6.0%)
・その他(23.3%)


また、その企業規模も多彩で、企業規模の大小に関わらずこの分野への関心の高さが表されています。
301名以上(34.3%)
101〜300名(12.0%)
51〜100名(8.4%)
・10~29名(7.6%)
1〜4名(19.5%)
・その他(18.2%)


さらに、セミナー参加者の年齢層(アンケート回答者ベース)の内訳を見ると、自社の運営に携わる経営者ならびに、組織のマネジメントを担う管理職の皆様の参加が多いことがうかがえます。
60代以上(40.1%)
50代(40.7%)
40代(7.6%)
30代(10.1%)
20代(1.2%)



興味深い数字として挙げられるのは、リピート割合の推移です。回を追うごとにリピーターが増加し、9月は58.6%と最大値を記録。以降も概ね40%前後の方々がリピーターの方です。つまり、単発の聴講に終わらず、継続して多様なテーマのセミナーに出席され「脱炭素経営に関する知見と取組の幅を広げたい」と志向する方々が多かったということが考えられます。


一方、参加理由も三者三様でしたが、脱炭素化の先に見据える自社のあるべき姿、よりよい企業体制の構築を模索されたいと願う事業者様が多く見られました。

「社会課題として脱炭素経営に取り組むべきだと考えているから」(29.0%)
「自社の成長につながる」(14.0%)
「ブランディングの強化・人材採用や自社製品サービスのアピールにつながる」(10.4%)


これは、「取引先から脱炭素に向けた取り組みを求められている」(7.9%)「地域社会から脱炭素経営、温室効果ガス削減を求められている」(6.3%)「金融機関、株主、投資家から脱炭素経営を求められている」(4.7%)といった他動的なご意見を大きく上回る結果となっています。


もちろん、「コスト削減につながる」(10.6%)「補助金がもらえる」(6.5%)もまた、社会全体で脱炭素化を進める上で欠かせない動機付けとなります。その他、利益の追求とは異なる視点から「従業員のモチベーション向上につながる」(3.9%)といったご意見も寄せられ、参加者の皆様の意識の高さが感じられました。

過去に開催されたセミナー各回を一挙にご紹介します!


月に一回、過去13回にわたって行われてきたセミナーは以下の一覧の通りです。

令和5年セミナーリスト

それでは、各セミナーについてご紹介しましょう。



【2023年2月】
「脱炭素社会に向けた​中小企業の脱炭素経営セミナー​」
講師:株式会社ゼロボード 代表取締役 渡慶次道隆(とけいじ みちたか)氏


初回のセミナーは、企業向けのCO2排出量算定クラウドサービスを提供する株式会社ゼロボードの渡慶次氏をお招きしました。脱炭素経営は企業の社会的責任だけでなく、事業の持続的な成長のために重要な経営課題となっていることや、脱炭素社会に向けた国内外の動向、企業が脱炭素経営に取り組むべき背景や目的、メリットについて、中小企業の視点からご紹介いただきました。大企業のみにとどまらず、中小企業にもその役割が求められていることなどが語られました。

【2023年3月】
「中小企業の脱炭素化に向けた取組と実践事例」
講師:一般社団法人東京都中小企業診断士協会 大東威司(おおひがし たかし)氏


第2回は、中小企業診断士として実際に企業とコミュニケーションを取る機会が多い大東氏が登壇。脱炭素化に向けた国内外の動きに加え、さまざまなご相談に対してアドバイスを行われてきた立場から、中小企業が脱炭素化に取り組むメリットや効果、企業が取るべき具体的なアクション、実践事例などをお話しいただきました。

セミナーレポート「中小企業をますます元気に!利益追求で脱炭素化経営を」

【2023年4月】
「環境」で業績を上げる!事業継承×環境ブランディング
講師:株式会社ハバリーズ 代表取締役社長 矢野玲美(やの れみ)氏


第3回は、日本初となる紙パックのミネラルウォーター事業を成功させた矢野氏を招聘。参加者の皆様と同じ中小企業経営者という立ち位置から、脱炭素化に向けた事業効率化やコスト削減の先にある付加価値の創造について語られました。ハバリーズ社はビジネスの世界でも注目を浴びているサステナブル企業ですが、各種認証の取得やメディア戦略など、さまざまな付加価値を積み重ねていったことで、環境問題に敏感な多くの企業の賛同を得るに至ったそうです。

セミナーレポート付加価値創造とともに、持続可能な社会を目指して

【2023年5月】
中小企業が直面する「環境・エネルギー対策」への第一歩!
講師:株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 ストラテジー&オペレーショングループ シニアマネジャー/上席主任研究員 大森充(おおもり みつる)氏


講師の大森氏は、SDGsの観点から世界的な潮流や国内の政府動向を挙げながら、大企業だけでなく中小企業にも課題解決の役割が求められていると語られました。また、現在実績をあげている大手企業の取組や、大森氏が実際にコンサルティングを手掛けられた中小企業の施策例などを解説され、中小企業経営者が携えておくべき心構え、意識改革の重要性に触れられていました。特に国内中小企業の事例では、世界的に認知度の高い国際認証を所得し、社会的信用や競争力を高め、SDGsに関心を持つ企業への営業アプローチが広がったロールモデルについても語られました。

セミナーレポートもはや脱炭素経営に「待ったなし」積極的参画でピンチをチャンスに

【2023年6月】
カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンにおける動向と具体的な取り組み方
講師:株式会社山本技術経営研究所 代表取締役 山本肇(やまもと はじめ)氏


中小企業振興公社で企業へのアドバイスを行い、自らもコンサルティング業に従事されている山本氏は、CO2排出量について実践的でわかりやすい基本計算式を提示されながら、算出・算定のイロハ、Scope1、2、3についての考え方、排出量算出時のカテゴリごとの分類などをご教示いただきました。サプライチェーン排出量算定において多く寄せられる疑問点についても丁寧に紹介され、より具体性の高い方法論を得られる内容となりました。

セミナーレポートサプライチェーン排出量の算定、中小企業はどう取り組む?

【2023年7月】
経営に活かせる! サプライチェーンにおける脱炭素化に向けた道筋
講師:ピコットエナジー株式会社 代表取締役 ゼロエミッション経営推進相談員 田村健人(たむら たけと)氏


中小企業診断士として数々の企業コンサルティングを手掛けてきた田村氏を講師に招き、エネルギーコストアップの原因や対策、省エネの基本的な考え方など、脱炭素経営への取組に欠かせない多彩なアプローチをお話いただきました。エネルギー管理士であり、東京都排出量取引制度技術責任者であるというバックボーンから豊富なエピソードが語られ、照明器具や空調設備の刷新といった使用電力の合理化だけにとどまらず、労働スタイルを見直して消費電力のピーク値を分散したり、生産効率を上げることでムダを省くなど、「我慢の省エネから、攻めの省エネへ」といったメッセージがありました。

セミナーレポート持続的な経済活動と環境負荷低減のバランス。付加価値を生み出すエネルギー活用へ

【2023年8月】
脱炭素経営の基本、サプライチェーンの可視化からのアクション!
講師:国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 SDGs担当 今田大輔(いまだ だいすけ)氏


8月開催回の講師は、地方自治体による地球温暖化対策の実行計画策定や、企業コンサルティングの分野でSDGsおよびカーボンニュートラル推進アドバイザーとして活躍される今田氏です。課題解決には、まず現状の把握と可視化が不可欠であり、また、ともに取り組む社内スタッフの意識改革も必要だというポイントが紹介されました。利益との両立を示すことで全社的なコンセンサスを取るという考え方、こうした非財務価値が巡り巡って財務的価値に転換していく可能性を秘めているということなど、具体的なアクションやメリットが語られました。

セミナーレポートまずは自社の排出量を明確にすることから。共通価値の創造で、全社一丸となって取り組むことが重要です

【2023年9月】
「中小企業の環境経営の5つの手法」~環境問題解決の主役へ~
講師:慶應義塾大学大学院 理工学研究科 非常勤講師 藤平慶太(ふじひら けいた)氏


第8回は、再生可能エネルギーのベンチャー企業でシニアマネジャーを務め、現在、慶應義塾大学大学院で環境問題をテーマに教鞭を執る藤平氏にご登壇いただき、中小企業の環境経営において注目すべき5つの手法を語っていただきました。環境経営における収益向上の機会、コストやリスクのコントロール、レピュテーション(評判)やブランド価値の向上といった3つの競争優位性を発揮できる場を創出し、優秀な人材の確保やFIP制度を活用した売電収益など、中長期的な視座を持つことの重要性についても語ってくださいました。

セミナーレポート経済と環境は両立する。それが現代の新常識です

【2023年10月】
「脱炭素化支援窓口」に寄せられる声からヒントを探せ!~取組不安の解消から、脱炭素経営の強化支援まで~
講師:公益財団法人東京都中小企業振興公社 ゼロエミッション経営推進支援事業 相談員 山北浩史(やまきた ひろし)氏


東京都中小企業振興公社をはじめとする公的支援機関で、企業経営にまつわる一般相談を担当している山北氏は、日々窓口に寄せられたさまざまな声から、より具体性の高いケーススタディの数々を紹介されました。そのなかで、種蒔きを先延ばしすることが、収穫を遅らせることにつながるというメッセージや、助成金活用を目的化せず、あくまでも課題解決の手段とすることが肝要という話題ものぼり、取組への意義を再認識するきっかけとなる内容となりました。

セミナーレポート無料相談をもっと気軽に活用してほしい。私たちに寄せられる声が、活路を開くヒントに繋がります

【2023年11月】
事業成長のカギを握る、脱炭素化へ向けた社内体制づくり
講師:BSIグループジャパン株式会社 事業開発部部長 吉田太地(よしだ たいち)氏


本セミナーのゲスト講師は、英国発祥の国際規格開発企業であるBSIグループに所属される吉田氏。実際に世界のISO規格を策定し、認証を行う立場から、中小企業の脱炭素化経営について、さまざまなフレームワークをご教示いただきました。また、計画を前進させるには経営者のコミットメントが必要不可欠であることなどのポイントとともに、人を教育し、各々の意識を高め、組織全体をよりよい方向へ導くという社内体制づくりの重要性について語られました。

セミナーレポート東京の中小企業には、 世界に誇れるポテンシャルがあります!

【2023年12月】
成長戦略への脱炭素計画作成と、8業界の企業取組み事例
講師:中小企業アドバイザー 鷹羽毅(たかは たけし)氏


35年にわたるコンサルティング実績を持つ鷹羽氏の広範な知見をベースに、多様な業界の動き、各企業の取組事例、ビジネスチャンスを創出する多彩な手法が語られました。また、脱炭素をテーマにした事業戦略の手順、計画の立て方を具体的な事例とともに紹介されながら、温暖化対策は喫緊の課題であり「自社の成長を見込める拡大市場になりうる」という力強いメッセージをいただきました。

セミナーレポート取組から市場参入へ発想転換。脱炭素でビジネスチャンスをつかむ

【2024年1月】
中小企業の脱炭素化を支える、金融機関の支援とは
講師:一般社団法人バーチュデザイン代表理事 東京大学教養学部 客員教授 吉高まり(よしたか まり)氏


三菱UFJリサーチ&コンサルティングでフェローを勤める傍ら、大学で教鞭も執る吉高氏は、環境分野が注目される以前から環境金融ビジネスの世界に深く携わってきた第一人者。吉高氏は、自身が訪れた国際会議(UAE・ドバイでのCOP28)の模様とともに世界各国の気候変動対策に対する本気度、日本における関連法改正の変遷、現在政府や行政機関が主導する各種取組などを解説されました。また、銀行・金融機関が企業の脱炭素化経営を支援する動きも紹介され、銀行の最新動向がうかがい知れる貴重な機会となりました。

セミナーレポート脱炭素経営の実践でつかみとる 脱炭素コスト減の先にあるチャンス

【2024年2月】
今からでも遅くない! 中小企業が活用できる省エネ診断のポイント
講師:株式会社山本技術経営研究所 代表取締役 山本肇(やまもと はじめ)氏


本回で二度目の登壇となる山本氏は、ご自身の電気の専門知識を活かした技術コンサルティングという側面から「省エネ診断」について解説いただきました。講義では、照明や空調といった設備の「運用改善」、より効率の高い最新の「設備導入」、さらに生産ラインの見直しをはじめとする「プロセス変更」を改善策の三本柱として提示されながら、本旨である省エネ診断に際しては、どのような目的で診断を行うのか、改善したい対象はどこにあるのかなど、専門家の調査を前に充分な準備を行っておくことの大切さが語られました。

セミナーレポート「省エネ診断」は光熱費高騰対策の切り札!専門家の力で効果的にエネルギーコスト削減を

今後も、脱炭素化へ取り組まれる企業の皆様を応援します!

苗木

HTTセミナーは、社会が直面している地球温暖化やエネルギー不足とその対策の必要性、脱炭素化経営に関する様々な情報を提供してまいりました。今後も、当事業は東京都が推進するさまざまな施策についてのご案内とともに、本セミナーへのご参加を通して脱炭素化経営に取り組まれる皆様に役立つ情報をお届けしてまいります。また、当事業では引き続きHTT実践推進ナビゲーターへのご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。